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2009/09/08

大和SMBC、大和の100%子会社に

4日付日経新聞 三井住友と大和、合弁解消へ 大和SMBC、大和の100%子会社にから。

三井住友フィナンシャルグループと大和証券グループ本社が法人向け証券会社、大和証券SMBCの合弁を解消する方向で最終調整に入っていることが3日、明らかになった。三井住友が保有する大和SMBCの株式の持ち分すべてを大和が買い取り、100%子会社化する。銀行・証券を融合した事業を目指す三井住友と、独立した証券会社の立場を守りたい大和の経営戦略の違いから、10年の連携に終止符を打つ。

大和証券60%出資というのは、「餅は餅屋に」という西川当時頭取の決断であったと記憶しています。その結果、大和SBCM(当時)は銀行系証券としての規制(当時)を受けずにフルラインの証券業務ができましたし、大和証券が山一の自主廃業の余波から立ち直る為に連結子会社化できる出資比率が必要でした。きわどいバランスの上に成立したといえます。

発足後、内部の方々とお話しする機会がありましたが、どちらかというと三井住友サイドの方が不満を持っていたやに感じていました。顧客紹介をするばかりで、持分法利益分以上のメリットが帰ってこないと。先日の日興コーディアル取得は、ようやくそれなりの規模の証券子会社を持つという長年の課題を解決した高揚感があったものと思われます。それを表に出して交渉されれば、大和証券とて突っ張りたくもなったのでしょう。そうなれば、妥協の基礎となる信頼関係は崩れますから、経済合理性で話を進めるしかなくなります。信頼関係が崩れた以上は早期に合弁解消というのは当然ですが、その前に信頼関係維持の努力をしていたのかなぁと思ってしまいます。

三井住友から離れた大和証券はどうなるのでしょうか?独立系国内プレイヤーとしてやっていける力があるかと言われると、かなり厳しいといわざるをえません。

一方の、三井住友は投資銀行部門の一部を欠いた日興証券の陣容を整える必要があります。大和SMBCから帰ってくる人たちの中には、M&A助言部隊はいるでしょうが、営業系の方々は余りいない様ですから、これも茨の道に見えます。

外野的にはそうみておりますということで。

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2009/07/16

淡麗金麦

13日付日経新聞 キリンとサントリー、経営統合へ 持ち株会社統合で交渉 から。

食品最大手のキリンホールディングスと2位のサントリーホールディングスが経営統合の交渉を進めていることが明らかになった。両社持ち株会社の統合案を軸に最終調整、年内の合意を目指す。実現すればビールと清涼飲料で国内首位に浮上。世界でも最大級の酒類・飲料メーカーとなる。統合で国内市場の収益基盤を強化、成長が見込まれる海外市場を共同開拓し、世界的な勝ち残りを目指す。

独禁法チェックも大きな問題でしょうが、旧財閥(三菱)系上場企業と同族経営の非公開企業(規模も知名度も東証一部上場企業のトップクラス並ですが)の経営統合という事例になります。まずは、持株会社傘下に既存の事業会社をそのままぶら下げるという時間稼ぎストラクチャーとなりますが、水と油位に違うとも言われる企業文化の違いをどの様にして乗り越えられるかに注目です。

純資産や売上等の規模から考えて、今回の経営統合が東証の不適切な合併等に該当する、即ちサントリーによるキリンの買収と判断される可能性は小さいと思われます。仮に該当したとしても、継続開示(有価証券報告書提出)会社であるサントリーですから、上場に大きな支障はないと考えるのが普通でしょう。

ただし、サントリーホールディングスの株式の約9割を保有している寿不動産という会社があります。同社はサントリーが株式の過半数を保有する子会社で上場企業であるダイナックの、金商法上の親会社等として、親会社等報告書を提出しています(これもEDINETで見ることができます)。それによりますと、寿不動産の存在が今回の統合に影響を及ぼしそうな感じです。

  • 寿不動産とサントリーとの間には取引(不動産賃貸、損害保険代理店契約)があります。合併比率にもよりますが、上場会社となると思われる統合持株会社の株式の26~50%は保有すると思われますので、その様な筆頭株主(というか、東証上場規則上の親会社等)との取引(関連当事者取引)は、有価証券報告書に開示すれば良いと言い切れるものでしょうか?
  • 寿不動産の株主の多くは、サントリーの創業家である鳥井家(今の社長の姓は佐治ですが、その父でありサントリーの元社長である故佐治敬三氏は、サントリーの創業者鳥井信治郎氏の次男ですから、やはり鳥井家です)の方々です。現在の寿不動産株式の評価においては、財産評価基本通達上の純資産価額方式によったとしても、サントリー株式もまた財産評価基本通達で評価した株価で良い訳ですが、仮にキリンとの統合新会社の株式、つまり上場株式になった場合の評価は市場価格です。キリンと同等の時価総額となると、1兆円の9割に当たる9000億円として評価しなければなりません。それが寿不動産株式の純資産価額方式による評価に使われますので、10%弱を保有する個人筆頭株主の方は500億円超に評価され、凡そその半分の相続税を相続人が負担することになります。そんな資金を調達することは可能なのでしょうか?
    仮にそれを避ける為に、寿不動産とサントリーホールディングスを合併させてから、キリンと統合するとした場合でも、当該合併を税制適格にする為には、寿不動産株主の方々には継続保有要件が課されます。さすがに、相続が発生した場合にまで継続保有を求められることはないでしょうが、そうでもない限り上場株式を保有しているのに現金化できないことになります。それで鳥井家の皆さんは満足なのでしょうか?配当金が入りますし、1人1人は恐らく税法上の少数株主でしょうから、その配当に係る所得税は再来年末までは10%、それ以降でも20%の源泉徴収で終わりにできますから、年度ベースのキャッシュフローは改善するかもしれません。サントリーの配当性向はキリンのそれをはるかに下回っていますので、統合後の配当性向が現在のキリンと同じレベルになると結構美味しい話なのかもしれません。それでも、配当は保証されたものではありませんので、統合後の持株会社株式の価格変動リスクと共に、リスクとして背負うことになりますね。

私は、個人的にはキリンの製品もサントリーの製品も余り口にしない人でして、普段愛飲している製品のメーカーさん達が今回の統合をきっかけにドロップアウトしないで頂きたいなぁと願っております。

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2008/08/01

イー・アクセスとアッカ

NikkeiBP 【詳報】イー・アクセスによる子会社化、「わだかまりはない」とアッカ社長:ITpro.から。

ADSL事業者のイー・アクセスは2008年7月31日、同じくADSL事業者のアッカ・ネットワークスを子会社化することで合意した。これにより、ソフトバンクBBに次ぐシェア22%を持つADSL事業者が誕生した。同日16時30分から都内で開催された記者会見では、終始友好ムードを強調。両社がこれまで繰り広げてきた、経営の主導権争いのイメージ払拭に躍起になる姿勢が見え隠れした。

なんか唐突に思えますが、ADSL市場が縮小し続けていることだけは間違いないだけに、業界再編が起きてもおかしくはないとは思います。どこまでメリットがあるのかは判りませんが。

最後にちらっと書いてあるこちらの方が気になります。

なお、アッカの第2位の株主だったNTTコミュニケーションズは、保有するアッカ株式すべてを米ファンドのイグナイト・アソシエイツに譲渡すると発表した。この株式の移動により、イグナイトは約14%のアッカ株を保有することになる。

イーアクセス傘下で企業価値が上昇してから売却しても良いと思うのですが、イーアクセスにわだかまりがあるのは、NTTComだったという解釈もあり得ますよね。これだけを見ると。

事業的な話でも、アッカはNTTコミュニケーションズが運営するOCN向けのホールセールが主力事業だった筈ですから、そことの関係が切れて大丈夫か?、という疑問が出ますよね。これでNTTComはNTT東西のフレッツサービスをプッシュする方向転換だってありってことですよね。

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2008/07/31

すかいらーく(続報)

すかいらーくの件で、31日付日経新聞に詳報が出ていました(nikkei.netでは詳しくないので、リンクは貼りません)。

記事で1つひっかかったのは、「すかいらーくの業績がある時点で一定水準を下回ると、投資会社の持つ株式が銀行団に担保として移る契約」があり、それが野村PIさんを駆り立てているという記述です。ここでの疑問は、第1に、今回躍起になっているのは野村PIさんだけなのか、第2に、担保として移ることで何が問題なのか、ということです。

第1の点ですが、日経新聞の記事は、「野村プリンシパルを駆り立てる」という言葉と「野村などに残された時間はあまりなく」という言葉を微妙に使い分けているようにみえます。本件では、エクィティーを出している投資会社は野村PIだけではなく、CVCという海外のファンドもいます。そちらの姿勢はどうなんでしょうか。記事的には野村と同調しているように見えますが、本音の部分ですね。野村PIさんのような日系のファンドは、「外資ほど短期的な見方はしない」という話が多いと思うのですが、実際の「仕振り」が問われているのではないでしょうか。

第2の点ですが、「保有株式が担保として移る」ってどういうことなのでしょうか。略式質であれば、名義も議決権も銀行団には移りませんから、実質的に株式としての立場は変わらない気がするのですが。そもそも今回資金調達しているのは(新)すかいらーくですが、銀行団が融資先の会社の株式を担保としてとりにいくというのは、債権保全上の意味があることなのでしょうか。担保としてとり、質権を行使して株式を取得しても処分できないと思いますし、経営権を銀行団がとるというのも現実的ではない気がします。担当者の社内での立場が悪くなるのは確かですけど...。

いずれにせよ、来月の臨時株主総会に向けての当事者間の動きに注目ですね。

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2008/06/30

法律事務所の後継者難

28日付日経新聞「青色LED訴訟の升永弁護士、事務所解散 大手に移籍」から。

青色発光ダイオード(LED)訴訟などの巨額裁判を担当したことで知られる升永英俊弁護士(65)が今月末に事務所を解散し、7月1日付で所属弁護士らと大手のTMI総合法律事務所(東京・港)に移籍する。企業法務分野の中小事務所の苦境を象徴する事例といえそうだ。 升永弁護士が率いる東京永和法律事務所(東京・港)は1991年設立。特許や税務の訴訟を得意としている。最近、後継者難に直面し、TMI総合に合流を打診していた。弁護士5人、弁理士4人、スタッフ4人のほぼ全員が移籍する。

私は、10年以上前に升永先生のお話をお伺いする機会がありましたが、ビジネスというものについての先生のお考えは、私等のような若造の銀行員よりも企業経営の実態を見据えておられ、圧倒されたことが記憶に残っております。東京永和法律事務所の先生方にもそのお考えは浸透していたように思い起こされます。

引用した記事には「後継者難」という文字があります。後継者難でM&Aというのは、中堅企業では有力な選択肢として認識されています。法律事務所というのは、一部大手を除くと、所長先生の「個性」で運営されているような印象がありますので、所長先生がご勇退モードに入った段階で、所属の弁護士先生方が、移籍または独立されるのって当たり前かと思っていたのですが、何か勘違いしているのでしょうか?

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2008/05/16

創業家vs経営陣

NIKKEI NET ノーリツ鋼機、社長人事巡り対立・会社側案に創業家は反対 から。

写真出力装置のノーリツ鋼機は15日、佐谷勉社長が退任し、喜田孝幸副社長が社長に就く人事案を固めた。16日に発表するが、同社関係者によると、社長ほか新役員の布陣に5割弱の株式を持つ創業家が反対の意向で、6月27日の株主総会で人事案が否決される可能性もあるようだ。 背景に経営戦略を巡る意見対立があるとみられる。同社はここ数年、主力の写真出力装置などで富士フイルムやセイコーエプソンと相次ぎ提携したが、かつてのライバル企業に急接近する戦略に、創業家から不満が出ていたという。新社長候補の喜田副社長は提携推進の中心的な存在だった。

創業家対経営陣という構図は昨年の株主総会でも見られましたね。パトライトとかテンアローズとか。今回は、創業家で46%程度お持ちのようですから、総会出席率(議決権ベース)が92%を下回ると、創業家側の意向が通るという計算になります。92%というのは、かなり高い数字です。私の聞いた話では、平均的なオーナー企業の場合は、80%台前半ということですので。

ノーリツ鋼機といえば、先代社長(創業者)が亡くなるまで社長の座を退かれず、東証1部上場企業で最高齢の社長として知られていた会社です。ご一族から後継者をお出しにはならなかったようですが、最近の低調な株価に対して、現経営陣と大株主の間で、認識の共有ができなかったのでしょうか。

今年の総会は注目を浴びそうです。

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2007/12/03

M&Aとネットデューデリジェンス

渡辺聡さん M&Aとネットデューデリジェンスから。

テクノロジー基盤については、BSで固定資産としてプラス評価がされて価値算定されてる表面とは異なり、実態としてはマージ出来ないのが本質だったりすることが珍しくなく、実際には引き受け手の視点ではプラスどころかマイナスの資産としてみた方が妥当な場合もある。事業価値のぶれが出るのならまだともかく、買ったはいいがビジネスとして機能しないという展開になれば、いくら安かろうがたいした意味はない。

今後、業態によってはネット系の資産がブランド価値の一部として考慮されるというのが出て来るだろう。その場合、継続性やネットブランド(?)を支えている実態資産が何かというところに踏み込むようなところになれば、またひとつ既存の評価方法では捉えられない価値評価の領域が出て来ることになる。

今や業務の基盤となっているITシステムの存在はM&Aの検討の上では、恐らくですがDCF上の「追加設備投資」に計上すべきものになると思います。経営統合した金融機関のシステム統合でみれば判る通り、基幹業務システムの統合って簡単ではないですから。

今までは買い手側のシステムに統合するのが常道でした。その場合には、営業上も、情報管理上も、被買収先企業のシステムに記録されている重要情報を全て買い手側に吸い上げた上で、廃棄するという作業が必要ですね。

対顧インフラという観点からは「残す」という選択肢も真剣に考える訳ですが、その場合でもグループ内の「内部統制」上のリスクを回避して、という前提を付けなければならないご時世ですから、コストは伴う訳です。

では、そのコストをどのように見積もるかということになると、それができる人がいるのかいないの、いるとした場合でも、その人がM&Aの是非を検討するチームに参加していないのが、過去の事例だと思います。内部統制に注意を払う上場会社は今後はもう少し真剣になると思いますが、非上場会社が買い手の場合だと顧客が迷惑を被るケースって出てくる可能性残りそうですね。

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2007/11/06

Ten Signs of Incompetent Managers

Margaret Heffernan さんという方がFast Companiesに投稿したコラム Ten Signs of Incompetent Managersから。

"But I knew they were incompetent because I’ve hired and fired so many incompetent people myself. Every experienced manager has; you probably remember yours. So what hallmarks of incompetence have I learned to identify?"

この場合のmanagerは、経営者なのか管理職なのかはさておいて、10個を並べてみましょう。

続きを読む "Ten Signs of Incompetent Managers"

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2007/04/26

監査役の権限強化も考えもの

磯崎哲也事務所さん: 「委員会設置会社制度改造論」から。

コーポレートガバナンスの強化が叫ばれる昨今、政治的な圧力としては、「監査役の権限を強化しよう、強化しよう」、という力が働くわけですが、そうすると逆に、そんな強大な権限を適切に運用してくれる人のハードルというのは高くなっていきますし、「北風と太陽」と同じで、逆に監査役には「あたりさわりのない」人を置こう、というインセンティブが強くなってしまいます。

監査役の権限が強化されていくのは、取締役の牽制という観点からは止むを得ないとは思います。しかし、例えばですが、持株比率の低い株主であっても監査役を送り込むことに成功すると、議決権比率以上にその会社の経営を支配できる可能性もあるともいえます。なにせ任期は取締役より長いですし、決算役会で「こんな適法意見の監査報告書が出せない決算書類を作る役員は辞任しろ」等と陰に陽に攻められると、取締役会だってなすがままになってしまうケースだってあると思うのですよね。

本来は、特に非上場会社の場合は、監査役の監査報告書がどうであろうと、株主総会で承認されてしまうと、それが確定決算だとは思うのですが、そんな風に対抗できる社長さんなんてそうはいないと思いますし...。

ましてや、上場会社の場合は、そんな話が公になったら株価が下がって、乗っ取りを狙う人たちが買いやすくなってしまいます。対抗手段を協議しようにも、取締役会でやる訳にもいかないので、微妙な会社経営を迫られてしまいます。
取締役の更迭を図る方々は、即「悪」ではありませんだけに、ややこしい話だなぁと思います。

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2007/03/29

同床異夢

もうかなりの旧聞になってしまいましたが、ビックカメラとエディオンが資本業務提携するというニュース は、エディオンを家電量販店業界のイオンと向きもあったりして、興味をそそられます。これをうけての対応で業界地図も変わるかもしれません。

ビックカメラとエディオンの統合ですが、その後は同床異夢ぶりを懸念する報道が目に付きます。

ビックカメラ側の意図として報じられているのは2つ。これまで郊外型店舗中心だったヤマダ電機が、駅前型店舗を増やしており、直接競合するようになった為、バイイングパワーでヤマダに少なくとも並ばないと価格競争で後れをとってしまう可能性があることが1つ。もう1つは創業者である新井会長が約7割の保有している株式の受け皿が必要なことです。これらを同時に満たすためには、エディオンが新井会長から株式を少なくとも40%は取得してビックカメラを子会社化することがベストシナリオです。子会社化により、エディオンとビックはメーカーから1グループとして認めさせることができますし、相続の心配がない法人の安定株主を得ることができます。また、経営から一歩引いたとされる新井氏にとっても創業者利益を実現することができます。

一方、エディオン側は相次ぐM&Aでヤマダ電機と並べることはもちろんですが、敵対的買収防衛効果を期待していると報道されています。規模を拡大することで防衛することもあるのでしょうが、一部では株式交換でビックカメラを100%子会社化した場合、約3割を保有する筆頭株主としてビックの新井会長が登場であろうことが買収防衛策になると考えているとされています。このシナリオはビックおよび新井氏の思惑とは正反対であります。

このギャップが当初3%ずつの株式相互保有、2年後の経営統合を視野、という形でしか折り合わなかったとした場合、それを埋める努力が実るかどうかが楽しみということになります。

(追記)経営統合交渉が中止されたとのことですが、2点お断りしておきます。第1に、私はインサイダーではなく、両社の交渉について何らの利害関係を有しません。第2に、本記事の公開時期について特に意味はありません。念の為。(2007年4月2日追記)

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2005/06/27

企業がサラリーマンに提供するバリュー

磯崎哲也事務所さんの「サラリーマンのバリュー」から。

サラリーマン受難の時代を嘆くより、ベースを身につけたら早期に独立・起業する方が良いのではないかという問題提起には首肯できます。私自身がそのようなことをするかは別にして、そういう人材が出て来そうな世の中になるのかなと思います。

またその方が磯崎哲也事務所や私(私の場合磯崎さんよりも後のステージの起業家が対象かな)の仕事も増える訳で、大変すばらしいことかなと思います。:-p

サラリーマン時代に獲得した「アセット」 個人情報保護法や情報セキュリティの強化で、ちゃんとした会社ほど、退職時に会社で培ったモノを「持ち出す」ことが困難になってきているんじゃないかと想像します。 一方で、自分で商売していれば、仕事上出会った人との関係や仕事上で得たノウハウは、インタンジブルな資産として年を経るごとに積み上がっていくわけです。

この点を逆に考えると、企業側が個人を引き留める為には、個人が仕事をしやすいプラットフォームを提供する必要があるといえます。そのプラットフォームは個人が用意するにはコストがかかるけれど、企業が多数の社員のために用意する分には十分採算がとれるものでなければなりません。以前は情報インフラがその典型でしたが、昨今ではそうともいえなくなりつつあります。それでも、公表データをデータベース化して分析したものや、過去の案件の資料が常に利用可能な状況になっているというのは、それなりの企業なればこそのプラットフォームであるといえましょう。

加えて、ブランドというものもあると思います。金融の世界では4大(もうすぐ3大になりますが)メガバンクのブランド力にはまだまだ強いものがあります。個人の資格や設立したての会社の名刺では会えない場合にも、銀行からの紹介があれば会えることも多いですし、そもそも銀行員になれば担当者として定期的に会うことは自然であります。それだけの影響力を持つに至ったのは過去の蓄積があるわけでしょうし、銀行が大嫌いと公言する方もあるようですから、銀行なりに大変なのでしょうが、ゼロからの営業を余儀無くされるよりは遥かに良いと思います。

独立するにしても、それなりの規模の会社の経営者を目指すのであれば、必要な視点ではないでしょうか。

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2005/06/06

敵対的買収防衛策のガイドライン

経済産業省と法務省が敵対的買収防衛策のガイドラインを発表しました。これまでの株主平等原則や主要目的ルールに替わる敵的買収防衛策の是非の判断基準が整備されたことになります。官僚が設定したことに違和感を感じる向きもあるようですが、私は素直に評価したいと思います。この指針に法的拘束力がないことを認識しておけば良いだけのことですから。

同時に発表された企業価値報告書においては、むしろ制度についての切り込みが足りないのではないかと感じました。

ポイズンピル(ライツプラン)発動時に新株予約券証券を取得した株主に税負担が生じる可能性があることを指摘している訳ですが、その点は対抗策としての有効性に大きく影響する部分ではないでしょうか。株主に税負担があるプランを発動した場合、経営者はそれを正当化できるのでしょうか。私は堂々と税制改正要求をするべきだったと思います。

来年の商法改正で取得条件付き新株予約券が可能になり、対価として議決権付株株式をわたすことで強制的に行使させる仕組みが可能な訳ですが、そこの課税を繰り延べにするだけでもポイズンピルの実効性は増し、不意打ちの敵対的買収提案で一般株主が損害を被るリスクが減るのではないでしょうか。

もう1点の制度改正要望は、今の普通株を新株予約券付証株式に転換した場合でも上場を維持できる上場規則です。ニレコのポイズンピルが否定されたのは基準日(3月31日)以降の株主に新株予約権がなかったことが大きいですが、それを回避することができます。国会審議中の会社法が成立すれば、株主総会の議決が必要な定款変更により可能な行為のはずです。東証等の取引所に対して要望しておくべきだったのではないでしょうか。

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2005/03/07

プライベートバンキングは証券業務か

4日付日経新聞「三菱東京と米メリル、合弁証券」から。

三菱東京フィナンシャル・グループと米メリルリンチは3日、2005年度中にも合弁で日本に証券会社を設立する方向で最終調整に入った。メリルの持つ高度な商品開発力と三菱東京の厚い顧客基盤を融合させ、国内では例のない個人富裕層に的を絞った証券会社を立ち上げて、プライベートバンキング業務を本格展開する。新会社には日本法人であるメリルリンチ日本証券が抱える1兆円規模の金融資産を移管。両グループから総勢で150人が移り、個人富裕層の資産囲い込みを目指す。

MTFGの発想として、プライベートバンキング業務を「証券業」としているようです。MTFGはもともと東京三菱ウェルスマネジメント証券を持っています。同社はスイスに設立した証券会社の日本法人という位置付けです。東京三菱銀行の中に持つのではなく、わざわざ別法人、それも証券会社にしているのは、富裕層のニーズに応えるのに銀行では対応できないからだというのが当初の説明だったかと記憶しています。そして、今回のメリルリンチと合弁で証券会社を立ち上げて、そこに既存の業務を移管する方式です。

富裕層向けのサービスというと、まずは資産運用業務があります。運用対象に有価証券を組み込むには証券会社が一番といえば一番です。投資一任勘定も可能です。しかし、資産管理という側面で考えると、信託という器が良いのではないでしょうか。銀行が販売できない有価証券も指定金銭信託経由で投資できるはずですし、既存の信託銀行は直接不動産仲介ができますので、扱える資産の範囲が証券会社よりは広いのではないでしょうか。更に、遺言信託を受ければ、資産の全容を把握して、当該顧客を囲い込むこともできます。三菱信託銀行(将来はUFJ信託と統合されるので更に協力)という有数の信託銀行があるMTFGの選択肢として、わざわざ証券会社を選択するのは不思議に思えます。

この観点からは、FG傘下に有力信託銀行を持たないSMFGはプライベートバンキング業務という点では厳しくみえます。自前で信託業務を手がける方針でやっているようですから、それでどこまでできるものなのか興味深いです。

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2005/02/25

祝、MTUFG

nikkei.netに「三井住友FG、UFJへの統合提案取り下げを決定」と出ました。25日付夕刊と26日付朝刊に掲載されるものと思われます。

三井住友フィナンシャルグループは25日、UFJホールディングスへの統合提案を取り下げたと発表した。三井住友FGは同日に開いた取締役会で取り下げを決定、UFJに通知した。

SMFGは今期の赤字決算、更には繰延税金資産否認のリスクがいわれています。どうなるにせよ、銀行のバランスシート健全化は最終工程に入ったということなのでしょう。大和証券グループと統合して金融コングロマリット法案を先取りするから堪忍して、というのがSMFGの唯一のシナリオなのでしょうか。

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2005/02/23

経営者の姿勢

ニッポン放送をめぐるライブドアとフジテレビのせめぎ合いについては、本日新展開があったようです。「これはこれでTOB期間中にこんなことしてええのか?」(証券取引法27条の5の「趣旨」はどうなっているのか)と思う訳で、ここまでなんでもありなのかなというのが感想です。

第二十七条の五  公開買付者等は、公開買付期間(公開買付開始公告を行つた日から公開買付けによる買付け等の期間の末日までをいい、当該期間を延長した場合には、延長した期間を含む。以下この節において同じ。)中においては、公開買付けによらないで当該公開買付けに係る株券等の発行者の株券等の買付け等を行つてはならない。ただし、次に掲げる場合は、この限りでない。
一  当該株券等の発行者の株券等の買付け等を公開買付けによらないで行う旨の契約を公開買付開始公告を行う前に締結している場合で公開買付届出書において当該契約があること及びその内容を明らかにしているとき。
二  第二十七条の二第七項第一号に掲げる者(同項第二号に掲げる者に該当するものを除く。)が、内閣府令で定めるところにより、同項第二号に掲げる者に該当しない旨の申出を内閣総理大臣に行つた場合
三  その他政令で定める場合

そもそも今回のフジテレビサイドの方々の発言には疑問を感じます。感情的にはわからない訳ではないですが、ライブドアがニッポン放送やフジテレビの企業価値を高める提案をしようといっているのに、「まずTOBに応じるのが筋だ」とか、「3分の1超の取得に自信」とか発言されると、ニッポン放送やフジテレビの企業価値を高める意識がなくて、自身の保身しか考えていないのか、と思ってしまいます。せめて、「具体的な提案があれば、詳細に検討する」くらいは言ってほしいものです。UFJもSMFGの提案を「無視する」と言ったことは一回もありません。

会社法現代化こういう意識で経営をされる取締役会にポイズンピルを許容するのは、違和感を覚えます。ここは、委員会等設置会社で社外取締役が過半数からなる委員会でポイズンピル履行や償却を決定する旨定款で定めている会社か、商法特例法上の大会社でポイズンピル履行や償却を監査役会で決定する旨定款で定めている会社をのみ許容するような規定を希望したいと思います。

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2005/02/15

失敗するM&A

米国 University of Pennsylvania のビジネススクールである Wharton School のWEBサイトである Knowlege@Whartonの「The Latest Mergers: Why Some Will Fly, And Others Won't」から。

M&Aがうまくいかない理由をいくつか挙げています。概念論ではわかりにくいですから、架空の買収例(LD社によるCX社の親会社の非友好的買収)を例に考えてみましょう。あくまでわかりやすくする為の「例」ですから、実在の企業や人物とは一切関係ありませんから、お願いします。

Martin Sikora(editor of Mergers & Acquisitions: The Dealmaker's Journal)のコメントが主に登場します。彼の最初のコメントは

According to Sikora, the kinds of problems companies face with mergers range from poor strategic moves, such as overpayment, to unanticipated events, such as a particular technology becoming obsolete. "You would hope these companies have done their due diligence, although that isn't always the case," he says.

高すぎる金額と特定の技術が時代遅れになるような予想されていなかったイベント、だそうです。LD社としては、CX社の親会社株式取得に支払った金額が妥当かどうか(本当に投資回収できるの?)、それからLD社のもつネット技術が本当にCX社の放送事業と融合して働くようなものか、をよく事前に調査することが求められる訳です。これらが鍵でありながら、外部からは預かり知らない部分なのが、一般投資家には残念なことであります。CX社の持つコンテンツをネットで有料配信するにしても、ビジネスとして成立するかは未知数ですね。

Wharton management professor Harbir Singh, who has done extensive research on mergers, says that the crucial distinguishing factor between success and failure in a merger is a sense of objectivity on the part of executives -- a "realistic outlook" that needs to be maintained from the initial transaction through the entire integration process. The danger, it seems, is when executives "fall in love" with the idea of the acquisition, wanting it to work no matter what the cost.

Singh教授によると、成功と失敗の差は、経営陣が現実的な考えができるかだそうです。経営陣がM&Aそのものに熱狂してしまい、どんなコストをかけても実現する、と考えてしまうのは危険だということです。LD社の社長H氏が「経営マシーン」に徹することができれば「問題ない」でしょう。

"Look, company A buying company B is really buying people," he says. "You need to realize that and be aware that certain issues exist." Negative outcomes -- such as employee layoffs for the target company -- are "invariable" and "must be handled humanely." For example, companies can help these individuals to find other jobs and provide acceptable severance. Sikora also advocates immediate and clear communication on the part of management with regard to any problematic issues. "You need to create a good impression," he says. "Good employees will quit if they feel their fellow workers are treated poorly."

これは再び Sikora 氏の言葉です。M&Aで買うのは人だということです。今回H氏は敵対的買収をしかけている格好ですので、「良い従業員は、自分の同僚が酷く扱われていると感じると、辞めていく」という部分はよく考えておくべきでしょう。いわば占領軍であるLD社関係者の言動次第で、CX社の従業員がぼろぼろと辞めていってしまうリスクがあるということです。「経営陣の総入れ替え」を示唆するような発言は、某公共放送の例でも分かる通り、極めて内向きな組織である放送事業者に長年勤務する従業員には、余り快いものには響かないリスクがあります。放送事業にノウハウのないLD社が、CX社の幹部社員の代替要員を確保することは困難であり、ここが最大のリスクではないでしょうか。

According to Sikora, the customer should perhaps be viewed as the biggest stakeholder and treated as such. "If the customer is a large one, I'd say they should hold hands with top executives through the transition," he says. "At the end of the day, that's the cash." As an example, he sites a merger between two tech firms in Silicon Valley, both of whom had IBM as a leading customer. When the merger was announced, they both lost IBM's business. "IBM wanted to know why they were not told of the change," he says. He suggests using sales forces to keep customers informed and having communications ready for all customers, with a key message that answers the question, "What is this merger going to do for you?"

Sikora氏は、「顧客は恐らく最大の利害関係者としてみるべきだ」と述べています。放送事業者であるCX社の顧客は2つ考え方がありますね。1つは広告主で、もう1つは視聴者です。CX社の放送番組の制作費は広告主からの広告料で賄われます。従って、LD社傘下のCX社を広告主が嫌って、広告を減らしたりすると、視聴者に好まれる番組が制作できずピンチです。また、視聴者がCX社の番組を見なくなると、広告主から広告効果が減少しているとして広告費を減らされる可能性がありますから、やはりピンチです。LD社は、自社のポータルサイにおいて広告収入を得ていますから、広告主との関係構築には自信があるのでしょう。LD社のサイト+CXの番組トータルでの広告宣伝効果を広告主にアピールするのかもしれません。

加えていえば、放送事業は免許業種ですから、所管官庁である総務省も重要な利害関係者です。流石に免許を取り消すような荒業はしてこないでしょうが、LD社からの独立性を免許維持の要件にするなどの嫌がらせは考えられます。

LD社はM&Aを繰り返して事業の種類と規模を拡大してきたとはいえ、敵対的M&Aをクローズしたことはありません(某球団についてはクローズできずですし、某金融機関については株式取得後経営陣との関係が悪化したので撤退)。公開の場で進行中の敵対的M&Aをしかけた側の最高責任者として、どのようなメッセージを利害関係者に送るのか。H社長のコミュニケーション能力が問われているといえるでしょう。

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2005/02/08

走れ!レッドアロー号

村上ファンドの西武鉄道買収提案は、色々なBlogでも取り上げられているようで、拙文にもトラックバックを頂いております。ファイナンス関連で実績のあるまたは興味のある方がblogをお始めになられるケースが増えたことを反映しており、勉強になるばかりです。

村上ファンドの提案に対する分析は、以下のBLOGをご覧頂ければ、尽くされていると思います。

 grandeさん「西武鉄道の完全買収案の意味を考えてみる」
 小林雅さん「西武とコクド」西武鉄道とコクド(続)
 diwaseさん「鉄道会社買収の皮算用」
 47thさん「西武鉄道株TOB提案の謎」「西武鉄道株TOB次の一手~本当の狙いは?」
 はぐれバンカーさん「勝算なきTOB?」

西武鉄道グループの再編はみずほコーポレート銀行主導で進められていくのでしょうが、西武鉄道グループを悪くする方向にいかないことを願うのみです。

もう1点だけ付け加えるとすると、西武鉄道株式を保有する個人株主の税務というマイナーな論点があります。個人の証券税制は磯崎哲也さんいわく「ディープ」な世界であり、また今回の西武鉄道グループの再編に関連しては余りにマイナーなのですが、一応ということで。

現在、西武鉄道株式は非上場株式です。従って、村上ファンドが仮にコクドと取引銀行を説得して公開買付をすることになったとした場合、応じる西武鉄道株主(個人)には非上場株式の譲渡損益が生じます。

譲渡益が生じる場合は、税率20%の申告分離課税です。上場株式であれば10%(平成19年12月末までの時限措置)ですから、仮に新生西武鉄道が上場して、村上ファンドが提案する株価(1000円/株)以上で取引されると思えば、上場まで待つ方が得です。

譲渡損が生じる場合、上場株式の場合は譲渡損の繰越制度がありますが、非上場株式にはありません。つまり、今年の非上場株式の譲渡損は、今年の株式譲渡益と通算できるだけですが、今年の上場株式の譲渡損は来年以降3年間は繰り越して、各年度の株式譲渡益と通算できます。そうであれば、上場まで待つ方が得であります。

実際には、こういうことを考えている西武鉄道株主(個人)って...いないんでしょうねぇ(汗)

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2005/02/04

西武鉄道は誰のものか

4日付日経新聞「村上ファンド、西武鉄道買収を提案・1株1000円でTOB」から。

投資ファンドのM&Aコンサルティング(東京・港)がコクドなどの西武グループに対し、西武鉄道の完全買収を提案していることが3日、明らかになった。西武グループ企業の了解を条件に、M&A社が欧州の大手金融機関クレディ・スイス・グループと共同で一株1000円で株式公開買い付け(TOB)を実施し、発行済み株式の100%を4300億円で買い取る。

村上氏の言動については毀誉褒貶があるようですが、私の印象として、多くの場合は「正論」を語っておられる気がします。この場合の「正論」とは、株式会社の経営者は株主の利益を最優先に行動するべきだ、という観点を指します。村上氏はファンドマネージャーですから、投資家の意向がトッププライオリティで、短期的な利益を主張されて、中長期ベースの投資家の賛同を得られない株主提案をしてしまったことも止むを得ない訳ですが、東京スタイルでもニッポン放送でも、その主張は傾聴に値するものでした。

前にも書きましたが、銀行による債権者の論理での再建計画が結局は株主の利益を損なってしまうことはあるものです。銀行借り入れによる財務レバレッジがあるからこそ、事業がうまくいっている間は、株主は投下資本以上のリターンが期待できるのも事実であり、常に利害が反する訳ではありません。銀行は貸し手としての利益を最優先しますから、事業がうまくいかなかった場合には株主とは利害が反することを忘れないようにするしかないでしょう。

西武グループの事業再編はメーンバンク主導で進んでいるが、株主の立場から対抗案を出す。提案では西武鉄道を鉄道専業部門、ホテル・レジャー部門、不採算部門の三つに分割。鉄道部門は2年内に株式上場させ、ホテル・レジャー部門は長期保有する。買い取り価格1000円は昨年12月の上場廃止日の終値485円の倍以上。買収資金のうち3000億円超をクレディ・スイスなどが融資する。M&A社は西武株を500万株超(1.4%程度)保有。昨年末に西武鉄道、コクド、プリンスホテルの首脳に買収案を提示。年明け以降も西武グループ経営改革委員会などに買収を働きかけている。

中間報告にあるような西武グループ再編案では、現在の西武鉄道の株主が割をくうのは明らかですから、このような「声」が登場して、より確かな再建計画が策定されるようになればと思います。

ベンチャーキャピタリストの小林雅さんは「村上ファンド、西武鉄道買収を提案・1株1000円でTOB」で以下のように述べておられます。

所有者は株主であり、西武鉄道の場合はコクド、そしてコクドは堤氏である。 堤氏の判断で決めるべきだろうと思う。

組織再編は株主総会の特別決議がなければできないですから、株主総会で堤氏が株主として議決権を行使するのにあたっての判断材料が提供されるべきだというご主張かと思います。しかし、コクドもプリンスホテルも西武鉄道もみずほコーポレート銀行を中心とする銀行団からの借り入れに企業の存続が拘束されているのも事実です(堤義明氏があまり自身の保身に拘ると債権者側も民事再生法の申し立てという手段を持っています)から、堤氏サイドと銀行側で西武鉄道にとって最善の再建策を練り上げるべきだ、というのが私の考えです。

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2005/02/01

コングロマリット解体

1日付日経新聞「米シティ、生保・年金部門を1兆1900億円で売却」から。

世界最大の金融コングロマリットであるシティグループは31日、傘下の生命保険・年金部門トラベラーズ・ライフ&アニュイティを米生保大手のメットライフに115億ドル(約1兆1900億円)で売却すると発表した。競争力のある事業に経営資源を集中投入するのが狙い。国際的な金融再編をリードしたシティが主要部門の売却に動いたことで、世界的に広がる「メガ金融」志向に影響を与える可能性がある。

金融庁がこんなもの(pdfファイルです)を発表して「金融コングロマリット法(仮称)を整備」とかいっている一方で、お手本にした米国ではコングロマリットが解体の方向で動いている、という構図です。滑稽ですね。

金融商品のワンストップショップというのは極めて判りやすくて魅力的な話です。縦割り行政で業種横断的な商品がなかなか出てこないのも問題です。しかし、金融コングロマリットが登場することで、本当に利用者の利便性を考えた商品体系になるのかどうかは疑問です。企業としてみれば共倒れリスクだってありえます。

シティグループは1998年に保険と証券を中核とするトラベラーズ・グループと米最大の銀行であるシティバンクを傘下に保有するシティコープが合併して誕生した。今回、売却する保険部門はトラベラーズの母体となった部門。保険部門を手放すことで、シティグループは証券と銀行を中心とした金融グループに再編される。シティはこれまでの積極的な企業の合併・買収(M&A)による拡大路線の修正に動いており、損保部門を米損保大手セント・ポールに売却したほか、リース部門なども手放したばかり。

日本で一番コングロマリット化が進んでいるのは三菱東京FGだと思いますが、生保部門売却後のシティグループの構成とMTFGの構成はよく似ている気がします。ここらへんがちょうど良いのかもしれませんね。

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2005/01/26

山一證券

Nikkei.Net「山一証券が最後の債権者集会」から。

2600億円を超す簿外債務が原因で1997年に経営破たんし、99年6月に東京地裁から破産宣告を受けた山一証券は、26日午前、同地裁で最後の債権者集会を開いた。破産管財人が収支計算を報告したのち、同地裁が破産手続きの終結を決定した。

昨年末からちらほら見かけていた話題ですが、破産手続の終結決定というのは1つの区切りですね。97年後半は怒涛の年でした。三洋証券、北海道拓殖銀行、山一証券、その後は長銀、日債銀が国有化されるところまで続きました。大手銀行の経営統合の契機にもなりました。

特に、大手証券の一角であった山一の経営破たんの影響は大きく、優秀な人材が大量に人材市場に流入し、金融業界の人材の流動性が高まったのでした。銀行窓口で投資信託を販売しているのが、元証券会社の方という事態も耳にしますし、金融業界から事業会社へ移った方の話も聞きます。

現在の金融は、色々な不満はありますが、「護送船団」時代よりは活性化されている思いますが、その契機となったのが、1997年後半の金融危機だったといえるでしょう。もちろん、職を失うことになった方々の中には、辛酸をなめた方もいらっしゃったとは思いますので、できればこういうことは起こらない方が良いなとは思います。

日銀による山一向け特別融資の回収不能額は約1111億円で、国民負担額が確定した。

山一の経営陣(場合によっては、過去の金融行政当局も含まれるのかもしれませんが)の経営判断ミスの累積が、このようなばかにならない金額になった訳です。監督される側にも監督する側にもそれぞれ言い分はあるでしょうが、大手金融機関は一般的な私企業とは違って、立法や行政によるなんらかのチェックが必要だと改めて痛感しました。

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2004/12/21

証券代行業も規模か

21日付日経新聞「中央三井信託、東京証券代行を買収」から。

中央三井信託銀行は20日、証券代行専業の東京証券代行(東京・千代田)を買収すると発表した。日立製作所が保有していた全株式(発行済み株式の73%)を今年度中に取得、子会社化する。取得金額は公表していないが、市場推計で100億円を超える見込み。

東京証券代行が日立製作所の子会社だった初めて知りました。1962年に別会社化したんですから、40年を超える歴史を持っているんですね。

証券代行は株券の名義書き換えや株主名簿の管理などの事務を請け負う業務。2009年に予定される株券のペーパーレス化などをにらみ、信託銀行のシェア争いが激化している。中央三井信託と東京証券代行はシステム投資の共通化などを通じ競争力強化を目指す。
中央三井信託は証券代行業務では業界2位だが、東京証券代行を合算したシェア(管理株主数ベース)は約29%と3ポイント上昇し、UFJ信託銀行(約27%)を上回ってトップとなる。

UFJと三菱の統合も影響しているのでしょうね。3%程度のシェアでは先行き不安なので、日立としてもなんとかしたかったのでしょう。中央三井といえば、旧中央信託時代から、商事法務関係の情報提供に定評がある会社という認識です。商業銀行側の都合で住友信託との統合などといったことも噂されていますが、代行業務の規模を追うのであれば、今回の東京証券代行の買収を契機に、そこだけでも統合する手はあるのかもしれませんね。あくまで憶測の世界ですが。

証券代行専業といえば、日本証券代行もありますが、こちらは独立路線でいくのでしょうね。

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2004/12/15

安田社長の責任のとり方

nikkei.netドン・キホーテ社長、辞任を表明から。

「ドン・キホーテの安田隆夫社長は14日夜、さいたま市内の2店舗の連続放火事件で3人が死亡したことについて日本経済新聞に対し「責任は私にある。(引責)辞任することは決めている」と述べ、社長辞任を表明した。さらに、店内に高く商品を積み上げる「圧縮陳列」を見直す可能性も示した。創業社長の強い指導力と独特のビジネスモデルが成長の源泉だっただけに、同社は経営面で大きな節目を迎える。」

出店政策にしても、品揃えにしても、店舗レイアウトにしても、既存のルールに挑戦して、それに打ち勝つことを成長の源泉にしてきた会社がドン・キホーテだったと思います。

その勢いの前に、店舗の安全対策等がおろそかになった可能性はあろうかと思います。今回の火災をきっかけに、ドン・キホーテにどの程度のロスが生じるのかはわかりませんが、経営トップとして、結果として死者を出すような店舗構成および運営になっていたことの責任をとるというのは、自然な発想かと思います。自分が経営トップにいる限り、これまでのやり方を変えられないのであれば、辞任も選択肢であります。

通常は、会社を自分の分身(もしくは財布代わり)としてそこから身を引くことは考えない創業のオーナー経営者に、そこまでの発言をさせるだけの事態ではあったわけです。

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2004/12/14

日本IBMのPC事業部もLenovoへ転籍

PCWatch「日本IBMのPC事業部もLenovoへ転籍」にIBMとLenovoのPC事業統合のスキームが紹介されています。これでは Lenovo の情報開示とちょっと違う気がします。

「PC事業のLenovoへの売却は、2005年第2四半期をめどに行なわれる。IBMは、6億5千万ドルの現金と、6億ドル相当のLenovoの株式を受け取る。この株式は3年間のロックアップ期間が設けられており、期間中は保有し続ける義務がある。また、PC事業を精査した結果、確認された5億ドルの負債についてもLenovoが引き継ぐ。
Lenovoは、PC事業を行なう新会社(以下、新Lenovoと略称)を設立する。新LenovoはLenovoホールディングスの100%子会社であり、IBMの資本は入らない。
新Lenovoの本社はニューヨークに、拠点はLenovoがある北京と、IBMのPC事業の拠点であるノースカロライナ州ラーレイに置かれる。研究開発拠点は、中国、米国、日本に置かれる。
新Lenovoには、IBM PC事業の経営、製造、研究開発、営業、マーケティングなどがすべて移管される。向井理事によれば「一部の切り売りではなく、PCに関するすべてのファンクションを異動する」と解説された。

まず整理しなければいけないのが、Lenovoのグループ構成です。LenovoのWEBによると、Lenovo Group という香港市場に上場している会社がPC事業を行っています。Lenovo Group の筆頭の株主で、IBMのPC事業買収前に過半数をコントロールしていたのが、Lenovo Holdings です。非上場の中国本土の会社のようです。

Lenovoの情報開示では、IBMは Lenovo Group にPC事業を売却し、キャッシュ(と同社株式を受け取ることになっています。また、IBMと各種提携契約を締結するのも、Lenovo Group となっていたはずです。これはこれで資本業務提携ということですから、納得感があります。

Lenovo Holdings の100%子会社として新 Lenovo が設立されるという開示は今までなかったと思います。仮に、PCWatchの報道が正しいストラクチャーだとすると、IBMのPC事業を移管する会社に、IBMは出資しないで、その兄弟会社である Lenovo Group の株式を保有し、提携関係を有することになります。このようなストラクチャーを選択した理由は何なのでしょうか。

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2004/12/06

日本版毒薬

6日付日経新聞スクープ欄「敵対的買収 水面下の防衛戦」から。

「100%子会社などに株式を発行できる新株予約権を与え、その権利の管理を信託銀行に委託する手法。信託契約には「持ち株比率2割超の株主が新たに登場したら買収者を除く株主に大量の株式を付与する」といった内容を盛り込む。こうした方式にすれば、新株付与が機動的にできるという。」

子会社を利用するのは、UFJホールディングの子会社であるUFJ銀行に種類株を発行させたケースと同じ発想ですね。問題はUFJのように経営統合で基本合意している相手がいない会社は誰に引き受けさせるかでした。日経新聞で紹介されている信託を使用するというのは1つの方法ですが、経営陣の自己保身ではないか、という懸念の解消にはならないのではないでしょうか。

「防衛策の推進論者は、「毒薬は企業の価値を守り、買収されるにしてもより高い値段で買ってもらえるから株主の利益になる」と主張している。」

公開買付という方法で攻めてこられると、時間的な問題もあり、取締役会が「株主の利益」を十分に検討することができないのではないか、という懸念は理解できます。毒薬条項により取締役会にまず最初のアプローチがあるように仕向ける効果が期待できる訳です。

しかし、経営者の判断に寛容な日本の市場風土(並びに司法判断)や発祥の地である米国でも廃止するケースが出ていることを考慮すると、日本でポイズンピルをやるのはどうかな、というのが正直な感想であります。

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顔を変えると

箭内昇氏のNikkei Net Biz Plus連載コラム「店舗は銀行の顔」(から。

「もっとも、この営業店改革にも残された課題は多い。機械化は画期的に進んだが、それでも各種変更届などはまだ多く、ペーパーレスは実現していない。大口の現金顧客に対するキャッシュレス化も未完成だ。商品の整理や事務手続きの見直しも不十分で、このままではいずれ現場は混乱するおそれがある。
行員の労働問題もある。行員は立ち時間が増えるので、交代制度や人間工学を活用したオフィス設計などの対策が必要だ。
だが、それ以上の課題はこの営業店改革に時間がかかりすぎたことだ。花王チームの提言直後から銀行全体が全力で取り組んでいれば、千住・竹ノ塚支店プロジェクトはもっと早く実現したはずだ。」

どんな企業においても、「このままではいずれ現場は混乱するおそれがある」と予想される改革を実施することは並大抵のことではできません。官僚主義がいきわたった組織の場合、混乱を避ける傾向があります。特に、事実はともなく「ミスが皆無に近い」ことを金科玉条にしてきた銀行の事務管理担当部署は、窓口の混乱を嫌うようです。「走りながら直していく」という慣習がないようです。そこに一理あることも確かです。窓口の混乱が、結果として顧客に迷惑をかけ、顧客満足度を損なってしまう可能性があるからです。

製造業でラインに手を加えた結果、一時的に効率が落ちても、納期に支障がなければ顧客に迷惑はかかりません。銀行で納期に近いものというと、振り込み時限でしょうか。営業日の14時30分頃に、受付や窓口の混乱で当日付の振込客の前に長蛇の列ができてしまい、銀行間接続システムの接続時限までに振込事務できない事態です。それが起きないようにする備えが必要でしょう。

箭内氏が指摘される社内の抵抗勢力がつけこむのも、このような事態です。改革の意義を常にトップが説かない限り、改革の機運や現場の意欲が挫けてしまいます。銀行による証券仲介業が12月1日に開始されていますが、窓口に多少の混乱があったようなことも聞いています。それでも対応できているのは、銀行全体が「やらなければならない」という義務感のようなものを持っているからだと思います。

新生銀行は銀行業界に一石を投じました。りそなもそうなる可能性があると思います。りそなグループの業務改革チームと経営陣(箭内氏の属する取締役会も含めてです)には、改革意識の醸成にも奔走していただきたいと思います。

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2004/12/02

オーナー一族の会社を連結子会社に

2日付日経新聞「シダックス、シダックスC&Vを連結子会社に」から。

「シダックスは1日、病院や企業の売店などを受託運営するシダックスシーアンドブイ(東京、志太正次郎社長)の株式を7億9500万円で22%取得し、連結子会社にすると発表した。役員も派遣する。シーアンドブイはシダックスの創業者一族が株式を保有し、経営していたが、これまでシダックスの連結対象会社ではなかった。シーアンドブイの2004年3月期は売上高が123億円、経常損益は700万円の赤字。」

プレスリリースはこちら(pdfファイルです)です。それによると、過去に株式交換によりシダックスが100%子会社化する予定であったのですが、取りやめとなった経緯があるようです。

ここで注目なのは、シダックスC&Vはシダックスの株式を保有している(0.3%)こと、同社の主要株主(24.0%)にシダックスの主要株主(13.4%)でもあるエスアンドエイ株式会社が登場していることです。シダックスはジャスダック銘柄ですから、エスアンドエイはシダックスの親会社等には該当していないかもしれません。

ただし、東証上場時には、親会社等に該当すると判断される可能性があります。平成15年6月以降は、親会社等に該当する場合、財産保全会社であっても、財務内容や重要事実の開示が求められています。財産保全会社の特例は、会計監査が上場直前期1期のみで良いことであり、開示義務は免れません(東証『新規上場の手引き(第1部・第2部編)』P100参照)。

ジャスダックも取引所化する訳ですし、西武鉄道グループ・コクドや日本テレビ・読売新聞の件もあり、ルールが厳格化する可能性はあります。それらのルールへの対応とみるのは、シダックスの100%子会社とする訳ではないこともあり、うがちすぎだと思いますが、こういう動きがオーナー企業と呼ばれる上場会社に起きてくるのかもしれません。

ちなみにですが、なんでシダックスの100%子会社にしないのでしょうね?それが一番すっきりすると思うのですが。

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