Audit (USA)

2005/01/28

経営者による不正

Accounting Web「AICPA Addresses Fraud in Audit Committee Guidance」から。

経営者は Sarbanes Oxley 法によりきちんと働く内部統制システムを作らなければなりません。しかし、内部統制システムを作りこんでも、当の経営者がそれを破ってしまったから意味がありません。エンロン事件にしても、元経営者が被告として裁かれていますから、経営者側にも不正を働く可能性を考えなければなりません。Sarbanes Oxley 法では宣誓書を義務付けていますが、それだけで十分とはいえません。

記事ではAICPAが監査委員会メンバーが経営者による不正を発見するべきかに対するガイドラインを策定したことを伝えています。記事によればポイントは6つです。

1. Maintaining skepticism.(懐疑的な姿勢を堅持する)
2. Strengthening committee understanding of the business.(メンバーが会社のビジネスへの理解を深める)
3. Brainstorming to identify fraud risks. (どこにリスクがあるかについてブレーンストーミングをする)

この3つは会計監査人による監査でも必要とされている一般的な事項です。

4. Using the code of conduct to assess financial reporting culture. The audit committee can use the code of conduct as a benchmark to assess whether the “tone at the top” and management’s actions will preserve the highest levels of integrity even when there is the pressure and opportunity to commit fraud.

財務諸表作成に関する行為規範のようなものを監査委員会メンバーが作成して、どのような行為が注視されるのかを明確にする。行為規範は社内規則ですから、外部の人間である会計監査人ではなく、会社の一員である監査委員会が作成することになります。当然、両者は協力することになるでしょうが。

5. Ensuring the entity cultivates a vigorous whistleblower program. The audit committee can help create strong antifraud controls by encouraging a culture in which employees view whistleblowing as valuable contribution to both the workplace and their own futures. Successful whistleblowing procedures require strong leadership not only from the audit committee, but also the board of directors and management.

"whistleblower"は「内部告発者」という日本語が当てられているようです。内部告発を会社に貢献する行為であるとして奨励するような制度があれば、不正防止制度としては有効です。その為には、監査委員会だけではなく、取締役会・経営陣のリーダーシップが必要だとされています。一昨年の Time 誌の man/woman of the year はエンロン事件発覚のきっかけとなった内部告発者だったと記憶しています。

6. Developing a broad information and feedback network. The audit committee should cultivate a network that extends beyond senior management. Such a network may include internal auditors, independent auditors, the compensation committee and key employees. The audit committee may consider meeting periodically with representatives from each of these groups to discuss matters affecting the financial reporting process. Inconsistencies in information obtained from these sources may indicate management override of internal controls.

監査委員会メンバーが情報源、それも幹部社員以外の情報源を持っていないといけないようです。それは社内にも社外(会計監査人を含む)にも求めないといけないと。監査委員会メンバーは社外取締役ですから、広い視野から会社で何が起こっているかを把握しておくべきなのでしょう。

社内を把握している経営陣を有効に監督するのは、社外取締役中心の監査委員会や取締役会にはなかなか難しい仕事です。上述の6つのポイントができれば苦労はない訳ですが、その仕事に就任した以上は、職責を全うしなければなりません。そうでないと、株主代表訴訟の対象になってしまいます。取締役になるのは大変なことです。

日本の会社には、監査委員会がある会社と監査役がある会社があります。監査委員会の仕事は監査役が担う筈ですので、監査役にも参考になる文章です。日本監査役協会なる組織があるようですから、こちらで日本語訳をするのでしょうか。

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