Tax (Japan)

2012/01/18

平成23年度税制改正の結末

平成24年度税制改正のセミナーが花盛りで、聴講させて頂いた際に、平成23年度税制改正についてのご説明があったので、そういえば、ということで、備忘メモです。

当初政府案は6月に2分割され、所謂期限切れ事項対応を中心にした第一次改正が6月末に成立しました。そこに含まれた主なものは、

  • 証券税制の2年延長(配当所得に係る小口株主の基準の引下げ(5%→3%))
    未だに「今回が本当に最後」といい続ける神経には感服しますが、いい加減に恒久化してはいかがかと思います。
  • 公益法人税制(特定寄附金の税額控除(所得税)の創設、認定NPO法人制度の見直し)
    認定NPO法人制度の見直しは面白いかもしれません。

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2011/12/14

平成24年度税制改正大綱

平成24年度税制改正大綱が10日未明に閣議決定されました。ようやく読み終わりましたので、簡単に感想を。

23年度税制改正法案が難儀したあげくに、「積み残し」項目まで作ってしまった経緯を踏まえて、自民・公明両党の理解の得られやすい項目に絞った内容です(政府税調の議事録をおいかけていくと、そういう旨の発言もあるようです)。

結果として、相続税・贈与税の見直し等を含めて平成25年度税制改正以降に先送りされました。財務省的には目玉である消費税率引上げ、民主党が俄かに持ち出した自動車減税(一部は24年度に盛り込まれました)も先送りです。

しかし、今回もしっかりとネタは仕込まれています。分野としては、国際課税ということになります。

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2010/12/21

平成23年度税制改正

平成23年度税制改正大綱が12月16日に閣議決定の上で発表されました。しかし、来年1月の通常国会で成立する見通しは立っておらず(与党が下手を打つと廃案も?)、私が知る限りで一番成立見込みの低い法案が1月の通常国会に上程されることになります。それでも一応ざっと目を通すと、「こんなんだったら何もしなければよいのに」という思いが...。

  1. 上場株式等の譲渡及び配当に係る優遇税率は2年延長も、配当に係る大口株主の定義が「5%以上」から「3%以上」に引き下げ。
    上場企業の創業者一族を狙い撃ちです。
  2. 相続税の基礎控除の大幅引き下げ。
    バブル期に引き上げたのをそれ以前に戻したいという徴税側の論理。都内に不動産を持つ層に不動産を売らせて、不動産会社を助けたいということ?
    その一方で相続時精算課税制度による贈与に係る控除(25百万円)は据え置いていますので、相続時の精算額は想定以上に増えることになります。現行控除は現行基礎控除を前提に設定されたので、引き下げなければ整合性が取れない筈なのに手をつけないのはこれいかに?
  3. 相続税・贈与税の最高税率を50%から55%に引上げ。
    なんで相続時に半分以上持っていかれなければならないのか。そこまで私的所有権を否定する国民的合意はない。
  4. 会社役員に係る給与所得控除を従業員のそれの半分に(段階をおって)引き下げ。
    役員報酬を正当なレベルにもっていかせないインセンティブを与える意味はどこにある?
  5. 在任期間4年以内の退職所得については、退職所得の特例の対象外。
    唯一正しい方向性にある。でも本当は所得税率が高すぎ。

私が個人的に望むのは、所得税・法人税・相続税・消費税を全部税率20%にする位の施策(低所得層や障害者・援助が必要な高齢者への配慮は当然必要)とそれを裏付けるビジョンなんですが...。

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2010/08/12

非上場親会社等が絡んだ再編事例

いつか落ち着いて考えようと思っている内に、3か月近く経過してしまいましたが、黒川木徳フィナンシャンルホールディングス(以下KKFG)から組織再編に係るリリースが5月20日付けで出ています。大まかにいうと、同社の70%超を保有する非上場のクレゾー社と合併した後に、同社が60%超を保有する黒川木徳証券(以下KKSEC)を完全子会社化する株式交換を実施するというものです。しかし、関係者はこれだけではなく、理解する為には、KKFGの沿革を紐解く必要があります。

同社は複数の商品先物取引取扱会社が経営統合して出来上がった大洸フューチャーズ社がKKSECを傘下に納めた独立系企業でしたが、平成19年にアエリアという携帯コンテンツ会社がファイナンス事業に参入するとして、同社の株式を取得し、先物取引取扱い事業から撤退する過程で社名もKKFGと改められています。平成20年8月段階では、KKFG株式の60%超を保有する親会社であります。

しかし、KKFGの業績は余りアエリアに貢献せず、平成20年8月にはアエリアはKKFG株を同社の100%子会社であるクレゾー社に譲渡することを含む、ファイナンス事業の再編計画を発表します。ちなみに、この株式譲渡に伴い、単体で1.3億円の株式譲渡損を計上したそうです。クレゾー社は株式購入資金をアエリアからの借入金により調達しています。金額的に減損するまでの損失額ではないということで、連結では変化なしとしています。

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2010/07/07

年金保険に関する最高裁判決

昨日の最高裁判決はWEBで判決文が公開されています。それを読まれた立教大学の浅妻先生(@asatsuma)がtwitterで「国の全面敗訴ではなく、5割程度は国が勝っている」と分析されています。早速読んでみました。

なお、本ブログは読者の方に法務・税務・会計・財務等に関するアドバイスを提供することを意図したものではありません。内容の無謬性について一切責任を負うものでもありません。法務・税務・会計・財務等に係る事項は、常に読者の方がご自身のアドバイザーとご相談の上で、ご自身の責任においてご判断下さい。

要約すると、相続税法24条により評価され、相続財産に含まれた金額までは所得税は非課税とするべき、という判示ですね。相続財産に含まれた金額については、所得税を課さないというのは、(現在の税理論上は色々とあるのでしょうが)合理的に聞こえます。新聞紙上で言われている通り、預金の経過利子等を相続財産に含めている実務も理論上は否定していますので、厳しい判決であることは間違いありません。

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2010/07/06

保険金年金の二重課税認定=処分取り消し命令―国の逆転敗訴確定・最高裁

取り急ぎ: 保険金年金の二重課税認定=処分取り消し命令―国の逆転敗訴確定・最高裁(時事通信) - Yahoo!ニュース. から。

夫の死亡で支払われた生命保険の特約年金に、所得税を課すのは二重課税に当たるとして、長崎市の無職女性(49)が国に課税取り消しを求めた訴訟の上告審判決で、最高裁第3小法廷(那須弘平裁判長)は6日、二重課税を禁じた所得税法に違反するとして、国が勝訴した二審判決を破棄し、課税処分の取り消しを命じた。国の敗訴が確定した。

今年の税制改正で手当てする項目として、主税局の皆様の頭にインプットされたことでしょう。民主党政権との蜜月が続けば、無理筋な法改正も全然スルーだし(昨年の小規模宅地特例の後退が良い例)。

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2010/07/02

財産評価基本通達変更

6月19日付「財産評価基本通達の一部改正について(法令解釈通達)」(課評2-18 課資2-8 課審6-11)により、財産評価基本通達が変更されています。趣旨は「所得税法等の一部を改正する法律の施行等に伴い、所要の整備を行うものである。」とされています。課税時期に市場価格がない上場株式の評価に使用する株価に関する細かい変更や、相続税法24条抜本見直しに係る変更に加えて、純資産価額方式による非上場株式の評価に際して使用する法人税等相当額が変更されています。

具体的には、これまで長く評価益の42%であった控除額が、評価益の45%に引き上げられています。どうやら、清算所得の課税が通常方式に変更になった影響と読めます。たかが3%、されど3%です。変更は平成22年10月1日以降の相続・贈与ですから、小会社や中会社に該当する非上場株式の贈与は10月1日以降にした方が良いかもしれませんね。

しかし、国税庁はここまで律儀に変更かけてくるんですね。というか、誰かが強行にねじ込んだんでしょうかねぇ。

(変更前)185((純資産価額))の「評価差額に対する法人税額等に相当する金額」は、次の⑴ の金額から⑵ の金額を控除した残額がある場合におけるその残額に42%( 清算所得に対する法人税、事業税、道府県民税及び市町村民税の税率の合計に相当する割
合) を乗じて計算した金額とする。

(変更後)185((純資産価額))の「評価差額に対する法人税額等に相当する金額」は、次の⑴ の金額から⑵ の金額を控除した残額がある場合におけるその残額に45%( 法人税、事業税、道府県民税及び市町村民税の税率の合計に相当する割合) を乗じて計算した金額とする。

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2010/05/12

資産管理会社と事業会社の合併事例

ゴールデンウィーク明けに興味深い開示がありました(会社のプレスリリースはこちらから)。枕のメーカーであり、ジャスダック市場上場会社であるモリシタさんが同社オーナーである森本一族の資産管理会社と思われる森茂興産と合併する旨の開示です。

自ら認めておられます様に、4月24日付取締役会決議で決議しているのに、5月6日になって「失念しておりました」という開示ができる会社であります。同日付の取締役会では、定款変更を株主総会に諮る旨の決議をしていたようで、これもまた開示していない上に、決欲取り消すというどたばたぶりです(この件に関するリリースはこちら)。上場廃止予定(決算短信にその旨記載があります)であるとはいえ、今はまだ上場会社ですからしっかりして頂きたいものです。

さて、被合併会社である森茂興産です。リリースによりますと、モリシタの森下会長、森下社長ご一族で発行済株式の100%を保有し、かつ同社はモリシタの発行済株式の19%を保有しているとのことですから、森下家の資産管理会社であると考えられます。事業内容は不動産業ですが、これもオーナー一族の資産管理会社にはよくある話です。設立は昭和62年ですから、モリシタの店頭登録(平成4年)前ということになります。普通このような会社は保有上場株式について含み益があり、当該非上場株式を財産評価基本通達にある純資産価額方式で評価する際の所謂「42%控除」が使える筈ですが、リリースの「算定の根拠」には「純資産707,034千円より不動産減損280,346千円および有価証券減損81,312千円を差し引いて、改定純資産345,375千円となり」との記載がありますので、あらまあということであります。

以下について、念の為ご注意です。筆者は法務・税務・財務会計上の、あるいは投資に関するアドバイスを意図して本ブログを書いておらず、またその様な立場にはありません。内容については出来る限り正確にと思っていはいますが、それを保証するものではありません。読者の方が本ブログの記載にもとづいて行った行為の結果については、ご自身が自己の責任(あるいはご自身のアドバイザーのアドバイスに基づき)行うものであり、筆者は一切責任を負いません。また、以下は一定の仮定

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2010/01/29

平成22年度税制改正まとめ

今更ですが。

私が興味を持った変更を列挙します。総じていうと、財務省主税局が主張した、つまり誰も要望していない項目はほぼ認められたが、その他は殆ど先送りという印象です。やはり民主党政権は財務省が牛耳っているということなのでしょうか。そうではないことを願います。

  • 定期金評価の見直し
    せめて現行契約(平成21年12月で区切っても良いかと)については、贈与時期を限定せずにおくべきだったと思います。
  • 小規模宅地の特例の見直し
    意図があって認めていた特例を政権交代を機に廃止にもっていった財務省勝ちですね。相続対策の見直しを迫られる方には同情申し上げます。
  • 特定の公社債を譲渡所得総合課税に分類
    上場ETFに社債があるようで、それを狙い撃ちしたものとのことです。公社債とあって、公社債等ではないので公社債投信は入らないと説明している証券会社がある様ですが、政令・通達まで油断はできないでしょう。
  • タックスヘイブン税制の見直し
    トリガー税率引き下げの代償として、資本性云々という益金項目については、現地法人の事業性に関係なく、問答無用で合算課税になります。なにがなんだか。
  • グループ法人税制の導入
    法人税としては宜しいのかもしれませんが、非上場株式の評価への影響が考慮されていないやに解説する先生がいらっしゃいます。確かに、グループ法人間で含み益のある資産を譲渡した場合、譲渡法人の類似業種比準価額を算定する際の純資産額(資本金等と利益積立金の合算額)はどうなるのか、譲渡先法人の純資産価額算定上の簿価はどうなるのか、等が考えられます。
  • 資本等取引に係る税制の見直し
    「自己株式として取得されることが予定された」とはどういう意味なのでしょうか。定義が通達まで落とされそうですが、それでも徴税当局の裁量が余りに大きすぎに感じます。大体、みなし配当なんていう考え方が謎なんですが。
  • 特殊同族法人の役員給与の一部損金不算入規定の撤廃
    税理士会のプッシュで廃止されましたが、来年度改正で財務省の逆襲がありそうな大綱の書き振りです。
  • 事業承継税制対象法人の明確化
    前に記事にしました。

平成23年度以降に持ち越しされたもので、要注意と思われるものは、

  • 納税者番号制度
    本気みたいですね。公務員のモラルが低下しているといわれるだけに、情報漏洩が心配です。社会保険庁職員が盛大にやっていましたが、納税資料となると更に取扱いに注意が必要かと。
  • 相続税課税方式の見直し
    遺産課税方式という英米系の方式が検討課題になるものと思われます。それを機に、基礎控除の圧縮が想定されています。
  • 金融商品税制(申告分離所得の範囲の拡大)
    利子所得を申告分離選択可能にして、譲渡損との通算可能にする代わりに、公社債の譲渡損益も申告分離の対象とする方向に見えます。ここでも公社債か公社債投信かで、某社は息を潜めているものと思われます。

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2010/01/20

事業承継税制の見直し

平成22年度税制改正大綱においては、事業承継税制の見直しも紛れ込んでいます。

  • 一定の法人等の株式を保有する会社に関する認定要件の明確化および納税猶予額の計算方法の見直しを行うこと
  • 信託利用時の適用については引き続き検討課題とすること

の2点です。2つ目は昨年も検討課題ですし、そもそも誰がそんな面倒くさい仕組みを使うのかが判らないので、検討課題で問題ないと思います。民主党の主張である遺産税方式になった場合の対応で見直せば良いかと。

1点目については、先週のT&Aマスターに海外子会社が問題になっている為の改正という記事がありました。国内の雇用の為の制度なのに、海外法人の雇用を守ってどうする、というものです。度量が狭いといわざるを得ません。

私は、この制度は使いにくいけれども、自動車部品メーカーなら立派な対象だと思っています。彼らは当然海外に子会社を持っていますが、それによって何を守っているかといえば、国内の雇用も守っているのです。その様な会社が海外に出ていなければ、部品は現地調達です。トヨタやホンダといえでも、現地部品メーカーとのやり取りは大変でしょうが仕方ありません。その結果、現地部品メーカーの方が強くなって、逆上陸して国内メーカーが窮地に陥ることだってあります。また、海外生産をしていても、国内には本社機能や研究開発機能が残っています。ここの雇用も海外子会社の利益が支えているのです。

簡単に見直しをすることには違和感を覚えます。通達等を見ていかなければなりません。

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