Business Law (Japan)

2009/08/14

伊右衛門生茶

夏休みに入って、キリンとサントリーの経営統合に関するいくつかの記事を読む機会がありました。ビジネス面でのメリットや同業他社へのインパクトに加えて、サントリーのオーナーファミリーの資産管理会社であり、筆頭株主でもある寿不動産の存在も取り上げられています。ただし、経営統合後に株式を売却すれば莫大な売却益が入るという話にとどまっています。前の記事には売却益の話を入れていませんでしたので、補足も含めて再論。

今回の経営統合の、最も単純なスキームは、サントリーホールディングスとキリンホールディングスの合併です。各種の記事ではこれが税制適格合併になるかを検討しています。上場企業同士であれば、「共同事業要件」さえ充足すればよく、同業同士の合併の場合はまず問題になりません。今回、サントリーが非上場会社ですので、もう1つの要件である「株式の継続保有要件」にも目を配る必要がありますが、サントリーそのものは50名超の株主がいますので、この要件の適用はありません。合併の結果、現サントリーの大株主である寿不動産は、合併会社の株式(上場株式)を取得しますが、税法上の継続保有要件が求められないので、売却可能ということです。

しかしながら、寿不動産のサントリー株式の取得価額と合併後の上場株式の株価には大きな差があります。「鳥井家に売却益が転がり込む」といわれる所以です。しかし、売却するのは寿不動産という法人です。法人の場合、売却益は全て益金ですから、実効税率40%の法人税の計算上の課税所得になります。総合課税ですから、損益をトータルして税金がかかるとはいえ、何十億円単位になると、カバーできる損金を計上することは困難です。そして、鳥井ファミリー個人にお金を戻すには、配当金という形になります。そうすると、配当控除を勘案しても最高税率44%弱という総合課税です。話を簡単にすると、10億円売ってほぼ同額の売却益があったとしても、法人税4億差し引き後の6億円しか配当できず、6億円の配当所得があっても、手取りは3億円強、つまり売却益の約3分の1、という話になります。他に方法はないの?となりますね、普通。

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2009/05/26

大量保有報告と信託

上場オーナー企業の関係者の方から、お子様の名前を出さずに株式を贈与する方法はないか、というご相談を受けることがよくあります。いわく、大量保有報告書の記載事項が詳細過ぎるので、そこにお子様の名前を出したくない、ということなんですね。

大量保有報告書はEDINETで誰でも過去5年間分は見ることができますので、見ていただきたいのですが、共同保有者(*)ということになると、氏名・住所・生年月日・保有株数・保有割合・担保等の重要な契約・取得資金といった項目を記載しなければなりません。株式市場というインフラを利用する上場企業の大株主という存在ではありますが、普通これだけの情報をネットで「晒す」人っていませんよね?

(*)未成年であれば、金商法27条の3第3項第2号に該当しますので、共同保有者として個別開示ではなく、親権者が自己の保有分に加えて「未成年者の親権者として●●株保有」とすれば良いことになります。それでも未成年のお子様がいらっしゃることとその保有株数は判りますので嫌といえば嫌と思われるようです。

成人したお子様は議決権等独自に行使するので共同保有者ではないと主張される方もいらっしゃいます。本当に親から独立しているのであれば宜しいのですが、親ごさんが議決権行使書面をまとめている実態があれば、共同保有者に該当するとせざるを得ません。罰則のある法令ですから、上場企業のオーナー経営者としては意図的に違反する訳にはいきません。

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2009/04/23

上場会社の社名変更

磯崎哲也先生からの宿題「今週の島耕作(上場会社の決定事実と適時開示)」です(^^)。

問1.この決定プロセスにおいて会社法上考えられる問題点について、あなたの考えを200字以内で書きなさい。

社名変更は定款変更という株主総会決議事項であり、当該会議をもって正式決定とは考えられない。また、取締役が株主総会召集を決定したと考えても、議題以外の総会召集に伴う事項が決定された形跡はなく、問題が残る。当該会議を、取締役会議題に「社名変更」を加える旨の指示とした場合、内部管理体制としてビデオ会議の扱いが明確かが問題となろう。

問2.初芝五洋ホールディングスはなぜ5月に株主総会を行うのでしょうか。会社法、金融商品取引法、法人税法等の観点から、考えられる可能性を述べなさい。

最も自然な解釈は、初芝五洋ホールディングスが所謂2月決算の会社だとするものであろう。当該会社のような上場企業の場合、決算期末から3か月目の最終週前後に株主総会を実施することが実務上最も多いとされている。

決算期末が9月末等であり、かつ社名変更に緊急性がある場合には、5月に臨時株主総会を招集する可能性も考えられる。

(所謂3月決算の上場会社が5月に定時総会を開催する場合の問題や、5月に臨時総会、6月に定時総会とする場合の問題は詰め切れませんでした。)

問3.下線部(a)では日本側スタッフが「このことは5月の株主総会まではマル秘だからな!」と言い、島社長も「正式にマスコミに公表するのは5月の株主総会」と述べています。

商号又は名称の変更を上場会社の業務執行を決定する機関が決定したことは、東証規程による適時開示事項である。従って、当該会社の業務執行を決定する機関が決定した時点で適時開示が必要であり、総会当日まで公表しない場合、最悪株式の上場を取り消される懸念がある。上場会社の社名変更の例としてパナソニックに沿えば、取締役会で決定した時点で適時開示、定款変更を議題とする総会召集通知を決定した時点で開示、および6月の株主総会で定款変更が議決された旨の開示を行うべきである。

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2009/03/26

時価以上売買

26日付日経新聞 平田財務副大臣、保有株を信託せず売却 大臣規範に抵触 から。.

自民党衆院議員、平田耕一財務副大臣(60)=比例東海ブロック=が今月、証券市場を通さない市場外取引で、ジャスダック上場の石こうボードメーカー「チヨダウーテ」(三重県四日市市)の大量の株を市場の倍近い価格で売却していたことが、25日分かった。売却額は6億円を超える。在任中の株式売買自粛や保有株式の信託を求めた「大臣規範」に抵触する。

譲渡先であるゼロシステム社について、新聞記事では、平田副大臣が90%出資し、親族が役員に名を連ねる会社となっています。となると、自分から自分が支配している会社への譲渡ですから、必ずしも「大臣規範」に抵触しないといえないでしょうか。言葉は悪いですが、「右の財布から左の財布」へ移したようなものですから、実質的には移動していないのではないかと。もちろん、「大臣規範」が広く「売買」を禁じている場合には、文理上は違反していることにはなるのでしょうが。

ただし、「右の財布から左の財布」へ時価以上で売却したとなると、いくつか論点があります。

  • EDINETで大量保有報告書を拝見しましたが、平田副大臣とゼロシステム社は別個に報告書を提出しておられます(平田副大臣は保有比率の減、ゼロシステム社は新規の大量保有報告)。しかし、ゼロシステム社を実質的に副大臣が支配しているとなると、共同保有者として取扱うべきではないでしょうか。その場合、今回の異動は「共同保有者の増」という理由で、平田副大臣が変更報告書を提出するのが、金融商品取引法の趣旨に沿うのではないでしょうか。
  • ゼロシステム社は、時価以上の価額で株式を購入していますが、税務上問題はないのでしょうか。仮に、平田副大臣がゼロシステム社の「みなし役員」に該当すると、時価を超える部分は役員賞与になる可能性はないでしょうか。「みなし役員」に該当しないとしても、特定の株主への利益の供与ですから、「贈与」となる可能性も考えなくてはなりません。その点はどうなのでしょうか。
  • 信託大好きおばちゃんさんもご指摘の通り、たとえ上場株式であっても、相対取引の場合の譲渡所得に係る所得税率は20%です。証券会社を経由すれば10%ですから、わざわざ税率で損をしています。また、みなし取得価額も使えません。過去にいわゆる「クロス取引」を行っており、その価格が取引価格を上回っていれば、譲渡所得は発生しませんので、今回は恐らくそのような事例だったのでしょう。

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2009/02/10

公益法人の経営

磯崎哲也事務所さん 「漢検」で思った、公益法人の利益についての素朴な疑問から。

公益法人を取り巻く環境がいつも安定してたり、資金に困ったときは必ず寄付が集まるというなら問題ないですが、そんなはずあるわけないわけで、「ゴーイングコンサーン」として活動し、活動規模を大きくしていくためには、それなりの資金を保持し、拡大していく必要があるはずです。

詳しい事情は私も判りませんが、今回の漢字検定の場合は、公益事業そのもので利益が盛大に積み上がったのが問題なんだと思っていました。つまり、検定料収入>>費用という状態を、理事会が放置したのだと。だったら、営利法人がやる途もあるだろうと。

確かに、非営利法人が活動を続けていく為の基盤の充実は大事だとは思います。しかし、それは公益事業から生じた剰余金ではなく、基金や基本財産あるいは運用財産およびその運用体制を充実させることでなされるべきではないかなと思います。

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2008/12/22

MBOと利益相反行為

シャルレのMBOは、結局創業家出身の取締役2名が年内に、その他の社外取締役の方々も株主総会で後任が決まり次第退任されることで決着したようですね。

本件については、内部通報制度が機能したことや、設置された第三者委員会の調査報告書が、かなり突っ込んで当事者間のやり取りを再現していることもあり、将来にわたって何度も参照される事例となるかと思います。

MBOに参加する経営陣と売却を強いられる少数株主の間に利益相反が働くのはもちろんでありますし、それを避ける為には、利益相反の渦中にいる経営陣は当然、それを避ける役割が期待される社外取締役も、注意深い行動が求められることに、異論はありません。

今回の社外取締役の方々は、買付者側に対して「もう一声」という交渉は行っています。その過程で、買付者側のアドバイスを受けたり、買付側の価格に近づけるような経営計画の下方修正を容認する等の疑念を生じる行動はありますが、この会社の経営に直接携わっている訳ではない方々としては、止むを得ない部分もあるのではないでしょうか。

経営計画というのは、実現に向けて経営陣以下がコミットできなければならない訳ですから、その策定から経営陣を排除する訳にはいかない筈ですし、前提条件1つダウンサイドに違っただけですべての数字ががらっと変わることだってある筈です。そこのところを裁量を大きく歪めず、かつ少数株主の利益を守るには、関係者はどのように対応するべきなのか、という大きな課題が残った事例という気が致します。

同時に、今後当社を担われる役職員の方々のご健闘を祈念致します。

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2008/11/05

株主の買取請求権

2日付日経新聞にTCIがJパワーに株式を譲渡することになった、という旨の記事がありました。それによると、7月にJパワーは吸収分割(100%子会社の事業の1部を親会社であるJパワーが吸収する)を略式再編の手続に則って公告し、それに対してJパワーが反対の意思表示を行い、当事者間の価格の協議が成立したとのことです。Jパワーから買取請求者名を伏せたプレスリリースが出ています。

思えば、TBSも来年4月に再編を予定していますので、楽天が3月に買取請求する可能性がある訳ですが、その場合、譲渡損失が計上されることが予想されるだけに、楽天がどう出るかが注目されておりました。税務会計上だけの損だったら、即決なんでしょうがね。

でも、今回の件は、なんか違和感を感じますね。

買取請求は、会社法の少数株主保護規定である訳なのですが、今回のように、100%子会社から事業の1部を吸収分割する場合に、果たして、吸収する側であるJパワーの株主を保護する必要はあるのかは疑問です。子会社側に少数株主がいた場合には、親会社・子会社の株主の双方に意見を聞く必要はあるのだと思いますが、100%子会社で、連結財務諸表上、再編前と後で全く変化はない訳ですからねぇ。

むしろ、この制度を使った結果、反対の意思表示をしたTCIだけから、合法的に株式を取得できたという点でも、割り切れません。意図的に行った再編であることは、Jパワーさんは否定されているとの報道ですので、談合的なものではなかったとしなければなりませんが。再編の反対株主の買取請求の場合は、財源規制がありませんので、今回は関係ないでしょうが、金庫株との差が際立ちます。

この件をきっかけに、再編に際して、反対株主の買取請求権を行使する株主が増えてしまうかもしれません。これは上場・非上場問いませんから、株主が分散している会社の取締役さんはお気をつけ下さい。個人株主は、みなし配当が生じると思われますので、されないとは思いますけど、法人株主にとってはインセンティブありありですからね。

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2008/10/06

信託を使った事業承継

これの続きなんですが、単なる思い付きであって、税務アドバイスを更正するものでもありませんし、筆者が何の責任を負うものでもないことを明記しておきます。

創業者Aは、上場会社Bの株式を30%保有するオーナー社長です。会社経営は、B社の専務である長男Cを後継者に考えています。一方で、故郷である北海道への恩返しとして、奨学金財団(公益法人)を運営しています。

Aは、保有するB社株式全てを信託します。受託者は一族の資産管理会社D(代表取締役は配偶者E)で、配当の受益者は財団法人で、議決権の受益者はCです。税務上の取扱いはどうなるでしょうか。

税法上の受益者は、財団法人だけですから、ここではAに対してみなし譲渡所得の問題が発生します。租税特別措置法40条の適用を申請するのか、はたまた20%の所得税を支払うのかは、信託設定時の株式の時価により判断します。

問題は、信託終了時の取扱でしょう。再度同じ内容の信託を設定することにできればよいのでしょうが、それもどうかと思いますし...

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2008/07/31

すかいらーく(続報)

すかいらーくの件で、31日付日経新聞に詳報が出ていました(nikkei.netでは詳しくないので、リンクは貼りません)。

記事で1つひっかかったのは、「すかいらーくの業績がある時点で一定水準を下回ると、投資会社の持つ株式が銀行団に担保として移る契約」があり、それが野村PIさんを駆り立てているという記述です。ここでの疑問は、第1に、今回躍起になっているのは野村PIさんだけなのか、第2に、担保として移ることで何が問題なのか、ということです。

第1の点ですが、日経新聞の記事は、「野村プリンシパルを駆り立てる」という言葉と「野村などに残された時間はあまりなく」という言葉を微妙に使い分けているようにみえます。本件では、エクィティーを出している投資会社は野村PIだけではなく、CVCという海外のファンドもいます。そちらの姿勢はどうなんでしょうか。記事的には野村と同調しているように見えますが、本音の部分ですね。野村PIさんのような日系のファンドは、「外資ほど短期的な見方はしない」という話が多いと思うのですが、実際の「仕振り」が問われているのではないでしょうか。

第2の点ですが、「保有株式が担保として移る」ってどういうことなのでしょうか。略式質であれば、名義も議決権も銀行団には移りませんから、実質的に株式としての立場は変わらない気がするのですが。そもそも今回資金調達しているのは(新)すかいらーくですが、銀行団が融資先の会社の株式を担保としてとりにいくというのは、債権保全上の意味があることなのでしょうか。担保としてとり、質権を行使して株式を取得しても処分できないと思いますし、経営権を銀行団がとるというのも現実的ではない気がします。担当者の社内での立場が悪くなるのは確かですけど...。

いずれにせよ、来月の臨時株主総会に向けての当事者間の動きに注目ですね。

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2008/07/30

中小企業経営承継円滑化法施行規則案

経済産業省が「中小企業における経営のh総計の円滑化に関する法律」の施行規則案をパブリックコメントに付しています。ざっと目を通す時間ができましたので、備忘録です。

  1. 1条10項(「特別子会社」)
    「会社並びにその代表者及び当該代表者に係る同族関係者が他の会社の総株主等議決権の100分の五十を超える議決権を有する場合における当該他の会社をいう」とありますので、資産管理会社Aが事業会社Bについて直接保有する議決権が過半数を切っていても、その代表者一族でB社の議決権の過半数を保有していれば、B社はA社の特別子会社ということになります。
  2. 6条1項7号ロ(「資産保有型会社」)、ハ(「資産運用型会社」)
    ここでは、中小企業であっても、この承継円滑化法による認定の対象外となる「資産保有型会社」および「資産運用型会社」が定義されています。その定義の為に必要な、「特定資産」と「特別特定資産」も定義されています。
    「特定資産」とは、金融商品取引法2条1項に規定する有価証券及び持分および「特別特定資産」の指します。有価証券及び持分から、特別子会社の分は除かれますが、特別子会社が資産保有型会社もしくは資産運用型会社である場合は除くことは出来ません。つまり、製造業や卸売業等の事業をしている特別子会社の株式は特定資産にはならないということですね。
    「特別特定資産」とは、自ら使用していない不動産、事業用ではないゴルフ会員権や絵画等、および現預金です。現預金には、代表者およびその同族関係者あての貸付金及び未収金が含まれます。
    「資産保有型会社」は直近の事業年度末における資産の価額の総額に占める特定資産の価額の合計額の割合が百分の七十以上である会社、「資産運用型会社」は直近の事業年度における総収入金額に占める特定資産の運用収入の合計額の割合が百分の七十五以上である会社のことです。つまり、不動産賃貸業を営む会社は承継円滑化法の認定対象外と思われます。
  3. 6条1項7号へ(特別子会社に関する例外)
    特別子会社が、上場会社等、大法人等又は風俗営業会社に該当しないこと、とされていますので、上場企業のオーナー一族の資産管理会社は、本法の適用対象外となります。
  4. 6条2項(資産保有型会社および資産運用型会社の特例)
    6条1項7号に該当しても、資産保有型会社あるいは資産運用型会社にあたらない条件が規定されています。商品販売、(不動産や金銭以外の)賃貸、サービス提供、広告代理店等の事業を3年以上継続し、店舗等の固定施設を保有するか賃借し、従業員が5名以上いる場合となります。6条1項7号の機械的な判定基準から、どのような会社を救済しようとしているのかはよく判りません。製造業を営む特別子会社を持つ会社(資産は特別子会社株式、不動産および機械)が、その特別子会社に不動産に加えて、一部取引について販売代理店となっている場合は、認定の可能性があるということなのでしょうか?
  5. 9条(認定の取消)
    後継者が形式的にも実質的にも後継者とはいえなくなった場合はいたしかたないと思いますが、2項17号に「当該特別認定中小企業者が会社法台47条第1項又は626条第1項の規定により資本金の額を減少したこと(同法台309条第2項第9号イ及びロに該当する場合を除く。)。」とありますので、欠損の填補以外での減資ができないことになります。何故この条文が入ったのでしょうね。
  6. 10条(合併があった場合の認定の承継)
    一部実務家が気にしていたことですが、認定を受けた企業が吸収合併等により消滅した場合について規定されています。実質的に認定企業が存続企業として認められるような合併でなければ、認定は承継できないようです。譲渡したのと同じなのに、認定が承継するのはおかしいということなのでしょう。それと存続企業が、大法人等や6条1項7号の基準での資産保有型会社または資産運用型会社である場合も承継は不可とされています。ここにおいては、6条2項の例外は認められない点も、仮に合併する場合には要注意でしょうね。
  7. 11条(株式交換などがあった場合の認定の承継)
    株式交換等により、別企業の完全子会社になった場合の規定です。これもざっくりといえば、株式交換等のあとに現行の企業結合会計に従って連結計算書類を作成すると仮定した場合に、認定企業が連結親会社となるような株式交換等でなければ、認定は承継されないということになります。10条と同じく、完全親法人についての縛りがありますので、仮に株式交換などを計画する場合は注意が必要でしょう。どちらも、趣旨は認定を受けたら株式を死ぬまで譲渡できない規定の潜脱行為を防止することを意図しているとは思います。しかし、このご時勢に、余りに縛りすぎではないかと思ったりもします。悪意の脱税だって10年で時効なのですが。

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2008/07/23

書評『新時代の相続税対策の徹底検証』

奥村眞悟著『新時代の相続税対策の徹底検証 改訂新版―あなたの相続税対策には危険がいっぱい!?』読了。

新信託法とその税務についての精力的に著作を発表されている奥村税理士の、相続対策一般に関する書籍です。信託に係っていらっしゃるからか、不動産関連の税制や相続対策には一家言お持ちでいらっしゃいますし、養子縁組のリスクについてのご説明も含めて、極めて適格に問題点が指摘されています。

一方で、非上場株式の相続税ベースの評価の実務については、若干誤解を招くような記述が見受けられたのが残念であります。

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2008/07/16

事業承継の決意

16日付日経新聞「オーナー経営者引退、「親族外継承」広がる」から。

中小企業に親族外への事業承継が広がっている。戦後から高度成長期に起業したオーナー経営者が引退の時期を迎えているが、少子化や厳しい経営環境で親族の後継ぎが少なくなっているのが背景だ。中小の合併・買収(M&A)を仲介する業者も増え会社譲渡への抵抗感も薄れている。廃業が増える一方で、中小経営が「家業」から脱皮する時期にきているともいえそうだ。

しばらく前のNHKの朝ドラ「ファイト」で、緒方直人さん演じる主人公の父親は、2代目として従業員10名未満の精密ねじ加工会社を経営しておられました。トラブルで営業を休止する羽目になりましたが、酒井のりピー演じる妻が旅館の住み込みの仲居さんとして働く等して、廃業までには至らず、義母の廃業の勧めにもめげず、色々な経緯を経て、事業を再開(元従業員も再雇用!)されていました。ここまでの覚悟と思い入れがないと、事業は承継できないというシナリオがどうやって可能になったかは存じませんが、要点をついていると思います。

そう考えると親族外承継が広がるのは、当然といえば当然です。私が接している起業家の方々のお子様の教育に対する姿勢として、お子様達もしくは配偶者の方の言うがままになっているケースがまま見受けられます。その場合、お子様が事業の承継を希望されるケースは、少ない印象です。思うに、父子の会話が少ない為、自分の事業への思い入れや経営理念を創業者の方がお子様方に語っておられず、お子様方が事業承継の準備をする機会がなかったのではないでしょうか。子供は、小さい頃から親の事業に直接・間接的に関与し、親の経営哲学に触れ続けているからこそ、それ引き継ぐ後継者としての覚悟ができるのではないでしょうか。

親族外に承継するケースとして、従業員への承継が記事にもあるようですが、通常従業員は資金的にしんどいですから、株の承継という問題が生じます。事業承継法と税制は、親族間の承継しか手当てしていませんから、先代の養子にでもならない限りは対象外です。そうすると、経営に興味のない創業家株主という存在が誕生してしまいます。経営陣と株主の関係は良好であるにこしたことはありませんので、創業者が健在な間にきちんと話し合い、明文化(配当性向とか、取締役にするのかとか)しておくことが、これからの時代は望ましいでしょう。経営者がやりづらくてはいけませんし、かといって経営者が暴走してもいけません。そこらへんはきちんとするべきでしょうね。もちろん、会社の金を使って創業家に株を持たせない選択肢(金庫株、大掛かりな仕掛けが必要な会社の場合はMBO)もありますので、その会社の状況次第で使い分けることになるかと思います。

過去の事業承継は、相続税対策のみでしたが、税対策は成功しても、企業経営がうまくいかなかったケース(某大手スーパーとか)もありますので、真正面から事業承継の問題をとらえる必要があるのだと、最近強く思います。

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2008/06/30

タッチの差?

28日付日経新聞 「日本ハウズ、買収防衛策不発動の株主提案を否決」から。

日本ハウズイングは27日、株主総会を開き、原弘産が株主提案していた日本ハウズに対する買収防衛策の不発動を否決した。原弘産に対する賛同票は45.18%で、可決に必要な過半数に届かなかった。原弘産は創業家やマンション管理業のランドマーク(広島市)など大口株主の支持を得たが、個人株主や金融機関の賛同を集められなかったもようだ。原弘産は7月上旬に予定していたTOB(株式公開買い付け)を断念する方針だ。  原弘産が同時に株主提案していた同社の原将昭社長ら社外取締役2人の選任議案も否決された。 ただ日本ハウズが会社提案していた防衛策の規定を新設する定款変更案は原弘産など大口株主が反対し、3分の2以上の賛同を集められず、否決された。

総議決権ベースで41%程度を抑えていた筈ですから、行使された議決権が90%を超えたということになりますね。東証2部クラスで、(本当の意味での)流動性の低い銘柄の場合、そういうことってあるんですね。原弘産の原社長さんの思いも恐らく同じだったと思います。裁判所の選んだ監査役を入れての票読みですから、これ以上の抵抗はあり得ないということでしょう。

業種的に、今は厳しい経営環境にある訳ですが、どちらの会社も「茨の道」を歩んで行くんでしょうね。だからといって、悲観してばかりでは企業経営はできませんので、両社経営陣の健闘を祈ります。

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2008/04/21

信託で財産継承

前回取り上げたファミリーウェルス:三代でつぶさないファミリー経営学 改訂版―ファミリーの財産を守るために (g.n.n.叢書)ですが、「保有しないで管理する(そしてIRSも手出しできない)」箱として、信託が取り上げられています。日本においては、括弧がきの部分が平成19年度税制改正で完全無欠なまでに否定されていますので、成年後見の代替手段になりうるといったお考えをお持ちの方もいらっしゃいますが、資産税(相続税・贈与税のことです)の分野では余りご関心が高くないのかなぁと思っています。

で、つらつら考えたのですが、以下のような信託は税務上どうなるんだろうなぁと。こうなると、特定の方向けの質問になってしまいますが(^^;、まだ私の駄文に目を通して頂いているかなぁ(笑)。

なお、念の為ですが、本ブログ記載事項は、筆者の単なる思い付きであり、その正確性について一切保証するものではありませんし、法務・税務・財務上のアドバイスを意図したものではありません。筆者は読者の方に法務・税務・財務についてアドバイスを提供する立場にはありません。法務・税務・財務に係るアドバイスは、それぞれの分野における専門家にご自身の責任でご依頼下さい。

信託:甲の推定相続人は、配偶者乙と孫丙(4才)とします。甲が設定した信託は、現金5億円で設定された後に、一定の割合で各種の金融資産に投資されます。その収益から、乙の生存中は月100万円を、丙は満27才に達するまでの23年間月50万円を分配されます(乙の死亡により、丙への分配額は増加しないこととします)。丙の満23才もしくは、設定来35年のどちらか短い期限で信託は終了し、残余財産は国・地方公共団体もしくはそれと同等と認められる公益法人に寄付することとします。

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2008/03/18

実質的な相対取引による自己株式取得

アッカコネットワークスが行ったジャスダックの時間外取引制度を利用した自社株式取得に、同社の筆頭株主兼同業者であるイーアクセスが噛み付いている件について、Arakawaさんが JAPAN LAW EXPRESS: イーアクセス、アッカが行った自己株式取得に対して質問状を提出.で会社法の観点から論点をまとめておられます。グレーだけど、実務上広く行われているし、形式上会社法違反とまではいえないだろうということですね。

私が当初の報道で思ったのは、なんでジャスダック証取はイーアクセスの買い注文を受け付けなかったのだろう、ということです。他の報道では、注文の受託をしなかった証券会社もあったように記憶しています。東京証券取引所のTOSTNET3制度は、まさに買い手は発行体だけという制度として注意深く設計されていますが、ジャスダックの時間外取引はそのような制度ではなかったかと思いますので、制度設計上は買い注文を受け付けることは可能だったと思いますが、どうなのでしょうか。

また、売り手が主要株主で、かつ保有全株式の売却であることもどうかと思います。お互いの呼吸で、エイヤッ、と出来る訳ですから、その他の株主に対してフェアではないという印象が出るのは当然ではないでしょうか。このような場合の自己株式取得の方法としては、もう1つ公開買付という方法があります。どちらかといえば、公開買付をした方が、フェアな印象を持ちます。

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2008/02/18

中小企業の事業承継、銀行がファンドで支援

nikkei.net「中小企業の事業承継、銀行がファンドで支援」から。

中小企業のオーナー経営者から後継者への事業承継を円滑に進めるため、銀行が相次いで専門の投資ファンドを設立し始めた。後継者に十分な資金がなくてオーナーから株式を買い取れなかったり、オーナーが引退を希望しても後継者が見つからなかったりする場合に、ファンドが一時的に株式を買い取る。後継者問題を解決することで中小企業の育成を後押しし、将来の取引拡大につなげる。

ファンドを使うとなると思いつくポイントは2つでしょうか。

第1に、ファンドを利用した後継者達は、ファンドの出口戦略という問題に直面することになります。投資ファンドの保有期間って、どんなに長くても10年位が限度ではないかな、というのが個人的な印象なのですが、これらのファンドはどうなのでしょうか。資金力がない後継者は、10年経過しても資金力はそれほどないでしょうし、ましてや10年間で企業価値が増大してれば承継時よりも総要資はかなり増えているでしょう。金庫株で少しずつという方法もありますが、会社とその他株主がキャッシュアウトに耐えられるのか、という問題は残ります。

ファンドは、同業者を買いまくって、規模の拡大を図り、上場or売却するという出口戦略を常に留保している訳なので、(資金の出してが邦銀の場合無茶はしないとは思いますが)後継者側にはプレッシャーをかけてくる可能性は残るのだと思います。それが常に悪ではない訳ですが、きちんと説明しないといけないのではないかなと思います。

第2に、ファンド側に経営者を連れてくることができるのか、ということです。会社の事情で新しい経営者が必要になった場合、巨大企業である邦銀の支店長・部長OBがその受け皿になることは、個人的にはあり得ないと思っています。それがうまくいかないと、邦銀のファンドが入ったが為に、企業を殺してしまう事態だってあり得るのではないかと。

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2008/01/29

虚偽大量保有報告書

NIKKEI NET「金融庁、株保有報告で初の訂正命令・川崎市の会社を虚偽認定」から。

金融庁は27日、トヨタ自動車やNTTなど6社の株式の大量保有報告書を提出していた川崎市の企業、テラメントに対して訂正命令を出した。実際には株を取得していない虚偽報告と認定した。25日の報告書提出から2日後という異例の早さで行政処分を発動。週明けの取引混乱懸念を払拭(ふっしょく)する。ただ誰でも閲覧できる電子開示システムに簡単に虚偽情報を掲載できる問題は未解決のまま。金融庁は今後改善策を検討する。

(少なくとも日本のビジネスマンなら)ありえない内容の報告書ですから、少なくとも報告書を提出した企業の有価証券の取引に影響を与えることを意図してはいないかと思われます。愉快犯なのか、操作ミスなのか、あるいは開示間隔を短くした規制を報告書の事前チェック制度導入により逆行させることを狙った確信犯なのか。色々考えても無駄ですし、ここまで立派な開示制度を逆行させることには違和感がありますので、課徴金で対応するのが無難かなと思います。

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2008/01/28

政府からの劣後ローン

NIKKEI NET「中小支援へ政府が4月に新融資・増資扱いの劣後ローン」から、

政府は中小企業の支援を狙った新しい融資制度を4月に設ける。借り入れ分を自己資本に組み入れたとみなせる「劣後ローン」を使った融資サービスを、政府系の中小企業金融公庫が始める。中小企業が自己資本を強化すれば、民間金融機関からの融資を受けやすくなる利点がある。

趣旨は判ります。感想を2つほど。

1.民間金融機関の内部格付が「有意」に上がる条件(金額、金利、期間、返済条件)で劣後ローンが供給できるようにしなければなりませんが、そこらへんの連携は済んでいるのでしょうか。

2.中小企業育成では株式取得をしている訳ですが、そちらを拡充することも検討した上での施策になっているのでしょうか。

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2008/01/22

少数株主は強し

nikkei.net「CFS、アインの統合否決・イオン、42.8%反対票集める」から。

ドラッグストア大手のCFSコーポレーションが22日、静岡県沼津市で開いた臨時株主総会で、調剤薬局大手のアインファーマシーズとの経営統合案が否決された。CFSの筆頭株主で、統合に反対し委任状争奪戦を仕掛けたイオンが議案否決に必要な議決権の3分の1以上の42.8%の反対票を集めた。

42.8%の分母ってなんですかね。総議決権数なのか、出席した株主の総議決権数なのか。多分、後者だと思いますが、主要株主が反対に回った場合の(1月23日minoriさんのコメントを受けて追記)特別決議のバーの高さを改めて感じますね。

(1月23日追記)日経新聞の報道では、当日行使された議決権は、総議決権数の約91%だそうで、これは高い方ですので、以下の記述も一部変更します。

とはいえ、逆にイオンが経営陣の首を挿げ替えるだけの議決権(過半数)を確保できなかったことも証明された訳です。統合比率が不利とのイオンの主張には賛成するが、イオンとの提携強化にも賛成したくない株主は、議決権を行使しなかったのではないかと推定されますので、イオンがここまで巧妙かつ積極的にやっても過半数の反対票を得られなかった訳ですから、イオンとの業務提携の強化という目はないと思います。CFSの株価が下がれば、追加取得して経営陣を追い出すこともできる目はあるでしょうが、それはまた別の話でしょう。イオンとしては、陣営の引き締めはできる訳ですから、それで当面は目標達成だと思います。

統合後の新経営陣の主導権を確保する為に統合比率に拘ったのでしょうが、それが完全に裏目に出た事例といえるかと思います。主要株主の追い出しには周到な準備をしましょうという当たり前のことを示しただけに終わりました。

続きを読む "少数株主は強し"

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2007/07/24

対抗TOBルール

nikkei.netテーオーシーへの敵対的TOB不成立・ダヴィンチが発表.

から。

不動産ファンド運営のダヴィンチ・アドバイザーズは24日、ビル賃貸のテーオーシーにかけたTOB(株式公開買い付け)が成立しなかったと発表した。経営陣が反対する敵対的TOBの初の成功事例になる可能性があるとして注目されたが、株主の賛同を得られなかった。

ダビンチがTOCの親会社として適切かどうかは、判断材料がないのでさておきます。今回の経緯において、大谷家(7月4日付日経産業新聞によれば、大谷会長と大谷社長はいとこで、創業者の孫)の対応は問題なしとはできないのではないでしょうか。

彼らはまずMBOをしかけています。そこで、自らが妥当と判断した公開買付価格800円を提示しています。しかし、それはダヴィンチが価格に異を唱えて対抗TOBの可能性に言及したことで、MBOは成立しませんした。そして、ダヴィンチが公開買付手続に入ると、今度は自分たちの公開買付価格よりも高値である市場価格でTOC株式を取得しています。

大谷家に公開買付により株式を買い付ける法的義務はありません。しかし、今回の市場での買付は、ダヴィンチを排除する大谷家サイドの都合のみで行われた様にも見えます。一度は公開買付をかけた側ですから、本来であれば、価格設定をやり直して対抗TOBをかけるべきではないのでしょうか。それをしなかった理由の説明がなければ、株主の絵利益より自分たちの利益を優先したという疑念が晴れることはないのではないでしょうか。

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2007/06/28

すごい総会

ビジネス法務の部屋「これはすごい株主総会かも(^^;;」から。

今朝の新聞では各誌、テン・アローズの解任劇と一緒に伝えているようです。とりわけ日経近畿版ではかなり大きく報道されています。昨夜掲載させていただいた株主の方のブログもそうですし、新聞のインタビュー記事もそうですが、一般株主にとって、修正動議の可決は(事前に招集通知にも何も記載されていないために)「何がなんだかわからない状態」だと思います。とくに、ブログを拝見して思いましたのは、「これから肝心な決議が行われるかもしれない」にもかかわらず、総会の途中で一般株主が退席してしまうような事態というのは、ひとつ間違えますと株主に対する説明義務を尽くしたかどうか・・・といった法的な問題にも発展しかねないかもしれません。テン・アローズ社のように、総会前から報道などによって、一般株主にも動向が判断できるのであればいいとしても、おそらくパトライト社の場合には、本当に解任劇が想定されていなかった可能性がありそうです。そう考えますと、他人事(ひとごと)ながら、議長不信任動議によって急遽議長となられた社外監査役の方は、きわめて難しい立場に立たされたでしょうし、もし法律家が社外監査役に就任した場合には、(独立した公正中立的立場が期待されているわけですから)議事進行の適法性維持や、包括委任状の有効性判断などとともに、会場に出席されている一般株主の方々への説明責任を果たすことにも十分配慮しなければならないと思われます。かなり怖いなぁ・・・というのが実感です。

これは大変な総会でしたね。動議を出す側は準備万端だったようですから、恐らく発言されたのは、創業家の方(元取締役のようですね)ではなく、どこぞの有資格者の方だったのではないでしょうか。当該有資格者の方が個人として株主でなかったとすると、株主総会に入場はできません。パトライトの株主構成をみると創業家の資産管理会社とおぼしき会社が大株主として出ていますので、資産管理会社の関係者として入場されたのでしょうか。

些細なことですが、動議により解任された前社長さんと前常務さんに退職金は払われるのでしょうか。総会の第5号議案が退職金ですが、こちらでカバーされるものなのでしょうか。議案で氏名や人数が限定されているとどうなるんでしょうか。

とにかく、株主総会の最大のテーマである取締役の選任について、当初出席していた株主の多くが退場した状態で決めてしまった訳ですから、山口先生ご指摘の通り一般投資家への説明という観点からは問題があったと思います。前社長を解任した株主と新社長は、早急に経営戦略を策定し、投資家や利害関係者に説明する義務を負った訳です。

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2007/05/25

事業承継型経営統合

4月6日付け株式会社平和から、「株式会社平和による
株式交換を通じた株式会社 オリンピアの完全子会社化に
関する基本合意のお知らせ」
と題するプレスリリースが出ています。
このプレスリリースはユニークです。スキームを選択
した本音が書いてあります。意訳すると「中島家から
石原家に経営権を譲渡したいけど、普通にやると平和
が上場廃止になるので工夫しました」ということにな
ります。

こういう面白いスキームについて、それを選択した方
々の思考を自分なりになぞるのは面白いものです。念
のためですが、私は本件の関係者でもなければ、当ブ
ログは税務・法務・会計等に関するアドバイス等を意
図したものではありません。

平和の経営権を移動する方法としてまず考えられるの
は、オリンピアもしくは同社石原社長がTOBをかけ
る方法です。この場合、オリンピアサイドは多額の資
金が必要ですし、平和は上場廃止となります。昨今の
ファンド事情を考えると、オリンピアにファイナンシ
ャルスポンサーはつく可能性はあったと思いますし、
当面の上場維持にそう大きなインセンティブはないよ
うにも思えるのですが、当事者はそうは考えなかった
ようです。

資金を使わないで経営統合する方法としては、平和と
オリンピアが合併・株式交換・共同株式移転等を行う
ことが考えられます。現行の上場ルールや会計基準で
は、実態としてどちらかがどちらか「取得」していな
いかを判断しますので、その点では各手法に差はあり
ません。株式移転は純粋持株会社という新たな経営体
制を作る必要がありますし、合併は2つの会社を1つ
にしますのでこれも新たな経営体制を作る作業です。
残るのは、両社の組織をそのままにできる株式交換と
いうことになります。

株式交換となると、まずは税制適格かどうかですが、
今回は共同事業要件がクリアできるものと仮定してよ
さそうです。また、上場維持という観点と、すでに平
和がオリンピア株式の20%を保有しているという点
から、平和がオリンピアを完全子会社にするという形
式をとったものと思われます。

さて、株式交換した場合ですが、プレスリリースにも
ある通り、現状のままで株式交換をかると中島家も石
原家も3分の1を超える議決権比率を持ちますので、
経営権の移動がはっきりしません。更に、少数特定者
持株比率が上場廃止基準に抵触する可能性が高い為、
平和の上場が廃止になってしまいかねません。

ということで、以下の複数の取引を走らせることにな
る訳です。

1.平和による自己株式公開買付に中島家の資産管理会
社と中島家が設立した財団法人が応じる。この目的
は、中島家サイドの議決権比率を下げることと思わ
れます。加えて、オリンピアとの株式交換の際に取
得した自己株式を使うことで、既存株主の価値希薄
化を避けるという点を強調可能です。また、応募し
ているのは法人株主ですから、市場売却よりは手取
りが多いことが期待できます。自己株式取得ですか
ら、平和の資金負担で行っていることもポイントで
す。
2.石原家資産管理会社による平和株式の公開買付に中
島家資産管理会社が応募します。これは株式交換後
の石原家の議決権比率を上げることが目的でしょう。 中島家の資産管理会社に益金が発生する可能性があ
りますが、どうなのでしょうか。
3.オリンピアが石原家の資産管理会社から自己株式を
取得します。これは恐らくですが、石原家の資産管
理会社が平和株式を取得する資金をファイナンする
ことが目的ではないでしょうか。資産管理会社より
は事業会社の方が資金調達は容易だと思われます。
仮に、オリンピアの有利子負債が増えている場合、
平和グループの負債ということにはなります。
もう1つの効果は、株式交換後の石原家資産管理会
社の議決権比率を下げることです。ただし、それで
あれば石原家の資産管理会社が平和株式の公開買い
付けをしなければ良いとも思うのですが、そこのと
ころの経緯まではプレスリリースからは読みとれま
せん。
4.平和がオリンピアを株式交換により完全子会社化し
ます。これにより平和の支配権は石原家に移動し、
平和とオリンピアは統合されます。

ここまで整理できると疑問点が3つあります。

1.平和の経営権が石原家に移動すると言うことは、形
を変えてみるとオリンピアによる平和の買収ともい
えます。非上場会社が上場会社を買収したにも係わ
らず、形式上上場会社を上場会社として維持するこ
とは、「不適切な合併等」として即監理ポスト入り
で最長2年間上場審査の対象となります。しかし、
東証は今回そのような措置は執りませんでした。私
はどのような理由でそのようになったかについて東
証には説明義務があると思います。
2.経営統合後の平和の主要株主は石原家の資産管理会
社です。このような場合、新規上場であればその資
産管理会社は「親会社等」として上場企業並の開示
と最低1期の会計監査がが求められます。ところが
平和は既上場会社ですので親会社等に該当しても会
計監査まで求められることはありません。もちろん、 決算内容等の開示は義務づけられますが、会計監査
のあるなしは大きいと思います。
3.経営統合後の平和の連結財務諸表はどうなるのでし
ょうか。プレスリリースにもあります通り、オリン
ピアによる平和の買収として会計処理がされ、逆の
れんが発生する可能性があります。というか、実態
から考えるに、オリンピアが親になると思います。
そこで逆暖簾が発生するとのことですが、平和のP
BRが1倍を切っているからでしょうが、株式交換
比率に由来する部分があった場合には、平和株主の
負担でオリンピアを買収している訳ですので、公開
買付価格を低くしたことと矛盾があるような気がし
ます。

来年の有報でどこまで疑問を解消できるでしょうか。

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2007/05/18

自己株式を公開買付に応募

ベネッセの プレスリリース. から。

株式会社ベネッセコーポレーションは、平成19年5月18日開催の取締役会において、下記のとおり株式会社東京個別指導学院(コード番号4745 東証第1部)の普通株式を公開買付けにより取得することを決議いたしましたので、お知らせいたします。

このプレスリリースによると、ベネッセによる東京個別指導学院株式の公開買付に、同社が保有する自己株式についても応募するとあります。

自己株式の処分は、株式募集と同様の手続をとることになります。つまり、新株発行と同様ということです。一方で、株式の公開買付というのは既に発行されている株式の保有者に対して、買付条件を示すことにより、売却を促す行為です。3分の1ルールにより、市場時間外に有価証券報告書提出会社の議決権の3分の1超を取得する場合には、公開買付によらなければならないのは、最近の事例で広く知られているところであります。

いわゆる第三者割当増資により有価証券報告書提出会社の議決権の3分の1超を取得する場合は、公開買付によるかといえば、そうではないと私は理解しています。そして、自己株式の処分というのは、新株発行と同等の行為とも理解していますので、何か違和感があるのですが、自己株式の処分は、証券取引法上は譲渡と同等の行為という規程がどこぞにあるのでしょうか。

勉強課題ということでメモです。

(5月30日追記)やはり勉強不足でした。直近の公開買付規制強化を忘れるとはおおぼけですね。今回の一連の株式取得等は、証取法27条の2第1項第4号に該当しますので、すべてを公開買付により行わなければならないことになります。

証取法第27条の2第1項第4号
六月を超えない範囲内において政令で定める期間内に政令で定める割合を超える株券等の取得を株券等の買付け等又は新規発行取得(株券等の発行者が新たに発行する株券等の取得をいう。以下この号において同じ。)により行う場合(株券等の買付け等により行う場合にあつては、政令で定める割合を超える株券等の買付け等を特定売買等による株券等の買付け等又は取引所有価証券市場外における株券等の買付け等(公開買付けによるものを除く。)により行うときに限る。)であつて、当該買付け等又は新規発行取得の後におけるその者の所有に係る株券等の株券等所有割合が三分の一を超えるときにおける当該株券等の買付け等(前三号に掲げるものを除く。)

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2007/04/26

監査役の権限強化も考えもの

磯崎哲也事務所さん: 「委員会設置会社制度改造論」から。

コーポレートガバナンスの強化が叫ばれる昨今、政治的な圧力としては、「監査役の権限を強化しよう、強化しよう」、という力が働くわけですが、そうすると逆に、そんな強大な権限を適切に運用してくれる人のハードルというのは高くなっていきますし、「北風と太陽」と同じで、逆に監査役には「あたりさわりのない」人を置こう、というインセンティブが強くなってしまいます。

監査役の権限が強化されていくのは、取締役の牽制という観点からは止むを得ないとは思います。しかし、例えばですが、持株比率の低い株主であっても監査役を送り込むことに成功すると、議決権比率以上にその会社の経営を支配できる可能性もあるともいえます。なにせ任期は取締役より長いですし、決算役会で「こんな適法意見の監査報告書が出せない決算書類を作る役員は辞任しろ」等と陰に陽に攻められると、取締役会だってなすがままになってしまうケースだってあると思うのですよね。

本来は、特に非上場会社の場合は、監査役の監査報告書がどうであろうと、株主総会で承認されてしまうと、それが確定決算だとは思うのですが、そんな風に対抗できる社長さんなんてそうはいないと思いますし...。

ましてや、上場会社の場合は、そんな話が公になったら株価が下がって、乗っ取りを狙う人たちが買いやすくなってしまいます。対抗手段を協議しようにも、取締役会でやる訳にもいかないので、微妙な会社経営を迫られてしまいます。
取締役の更迭を図る方々は、即「悪」ではありませんだけに、ややこしい話だなぁと思います。

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2007/01/26

全部取得条項

会社法下では、全部取得条項を利用すると少数株主を
排除できるのは判りましたが、素朴な疑問がいくつか。

(1)会社が全部取得条項を行使した場合、それは自
己株式の取得であります。18年度税制改正により、
対価が同価値の別の種類の株式であれば課税は原則繰
り延べされますが、それ以外の資産(現金とか)を受
け取った株主は、譲渡益とみなし配当所得について納
税義務が生じます
定款変更について反対株主の買取請求権を行使した株主についてはみなし配当所得について課税されます。個人株主の場合、税率に差があり
ますので、譲渡益のみとなる現金株式交換の方がいい
かもしれません。加えて、全部取得条項を行使する時
点では、保有株式は非上場株式ですから、持ち株比率
5%未満の個人株主であっても、税率や申告不要特例
は適用されません。そこのところを無視して、会社側
の都合だけでスキームを選択して本当に良いのでしょ
うか。反対株主の買い取り請求も税法上は自己株式の
取得ですから、手取りの違いについては関係ありませ
ん。

(2)少数株主の中には現金を渡す方法が判らない者
がいる可能性があります。これは過去の配当金につい
ても同様だったでしょうから、何らかの方法があるの
でしょう。会社側としては一律20%の源泉徴収で済
むので上場廃止のメリットはあるのかもしれません。

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2007/01/18

Going Private における minorty squeeze out 手法

上場会社のMBO(上場廃止を伴うので本ポストのタ
イトルにある通り、ゴーイングプライベートとも呼ぶ
ことができます)においては、SPCによる公開買い
付けに応じなかった少数株主の排除を行います。理由
としてはいくつかあるのですが、そこはそれとして、
これまでにその為に広く使われていたのは、産活法を
利用した現金対価の株式交換でした。
ところが、平成18年度税制改正において株式交換に
も適格要件が定められ、平成18年10月1日以降に
おいては、完全親会社株式以外を交付する現金株式交
換は税制非適格株式交換とされました。税制非適格株
式交換となると、株式交換により完全子会社となる会
社の主要な固定資産について、税務上時価評価し、評
価益が生じた場合、法人税の課税所得を増やさなけれ
ばなりません。ゴーイングプライベートの場合、対象
企業の資産に含み益があったり、のれんの認識が必要
な場合には、税金の支払いというキャッシュフローシ
ミュレーション上大きな問題を抱えることになります。
この問題を回避するスキームはいくつか言われており
ましたが、新株式交換税制においてのゴーイングプラ
イベート第1号といわれるキューサイが少数株主排除
(minority squeeze out)の方法を確定させた模様で
す。
同社のプレスリリースによりますと、当初は少数株
主に交付される株式数が1株未満となるような株式交
換が予定されていたようですが、それを断念し、以下
の方法になったとのことです。

1)定款変更により、種類株式を発行可能にする。
2)同じく定款変更により普通株式に全部取得条項を
付与する。
3)全部取得条項を行使して、普通株株主から株式を
取得し、対価として種類株式を交付する。その際に、
少数株主には1株未満しか交付されないようにして、
結果的に金銭を交付する。

これは会社法で新たに可能になった手法で、総株主の
同意なしに強制的に100%減資する仕組みとしてこちらの本
紹介されている手法の変形といえるでしょう。

当初の株式交換案が採用されなかったのは、おそらく
SPCと事業会社の株式交換は税制適格にならない可
能性が高く、その場合の完全子会社であるキューサイ
が負担する法人税額を無視できなかったからでしょう。賢明な判断だったと思います。もちろん、この方法に
もリスクはありまして、プレスリリースにもあります
が、少数株主が反対株主の買取請求権を行使し、買取
価格を裁判所に算定するように申し立てた場合、手続
が面倒になってしまいます。しかし、公開買付に応じ
なかった株主がそのような手続きを踏む可能性は低い
と思います。

私は株式併合でけりが付かないかと思っていましたが、単元未満株主の株主権について制限できないものがあ
りますので、その意味では今後もこの手法が使われる
のでしょう。

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2005/12/02

会社法関係の法務省令案がパブコメに

法務省のWEBサイトで見ることができます。非常に大部なのですべてに目を通すことはできませんが、いくつか。


1.親会社の定義



会社法施行規則3条、4条で、財務諸表等規則8条4項の内容とほぼ同一の内容を規定しています。これはほぼ予想通りで、子会社による親会社株保有禁止の対象が広がることになります。


2.相互保有株主の範囲



株主総会等に関する法務省令案第6条で、範囲を株式会社以外の会社、組合などにまで拡大すると同時に、保有要件を(子会社を含めて)4分の1以上と規定しています。財務諸表規則の関連会社の規定を使わなかったことは以外でした。個人株主をかませれば回避できます(回避しようと思えばですが)から、予想よりも影響は小さいのではないでしょうか。


3.合同会社の資本金の額



持分会社に関する法務省令5条で、設立時は設立時の社員になろうとするものが、増資時は持分会社が、資本金の額に計上する額と資本剰余金に計上する額を自由に決められるように規定しているように読めます。そうなると、社員一人の合同会社に10億円追加出資しても、増加資本金は1円で済むことになってしまいますが、それで良いのでしょうか?

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2005/09/09

産業再生法は面倒か

9月3日付日経新聞ワールド、MBO成立発表・発行済み株式の95%弱が応募から。

ワールドは2日、経営陣による企業買収(MBO)に伴うTOB(株式公開買い付け)で3389の株主から自社株を除きストックオプション実施を加味した発行済み株式の94.99%(44159907株)の応募があり、成立の条件としていた66.67%を上回ったと発表した。TOB成立を受け、11月に大阪、東京両証券取引所で上場廃止になる。

ワールドの事例が発表されてから、改めて産業再生法関連資料を眺めています。経済産業省のこちらのページには、法律、政令、施行規則をはじめ、過去認定された全計画が掲示されています。ワールドのスキームも結構詳細にわたって判ります。

これを見て思うのは、産業再生法はいちいち面倒だなということです。例えば、ワールドは株式交換の予定日が当初と変更になっただけで変更申請をし、経済産業省は変更の都法令に則っているか審査・認定するというプロセスが必要なようです。

また、ワールドはこれから現金対価の株式交換を行う(少数株主の強制排除をする)訳ですが、施行規則によれば、改めてその可否を申請しなければなりません。つまり申請者であるワールドからみると、当初認定段階では現金対価の株式交換ができるかどうかは判らない仕組みになっています。

これは直接聞いた話ではないのですが、少数株主排除目的の現金対価の株式交換は、公開買い付けで90%以上取得できてないと認定が困難らしいです。事前に90%以上取得できる見込みがあれば良いのでしょうが、そうでない場合は完全子会社化の手法が未定のようなアナウンスになるということなのでしょう。

加えて、認定された計画の実行状況の報告義務もあります。現金対価の株式交換はメリットが大きい訳ですが、それが必ず使えないとなるとSPCの増資時の登録免許税の軽減ですから、そんなにメリットはないのかなと。

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2005/09/05

エース証券はどこへいく

1日付日経新聞プリヴェチューリッヒ、エース証券を買収へから。

プリヴェチューリッヒ企業再生グループは31日、SBIホールディングスからエース証券(大阪市)の発行済み株式の30.3%を譲り受けると発表した。金額は49億円。プリヴェは他の株主から株式を譲り受け9月中にも過半数を取得して経営権を握る見通し。SBIは昨年夏にエース証券を買収したばかりだが、傘下のSBI証券に対面営業の経営資源を集中させる方針に転換した。

エース証券ってなんだっけと思いWEBサイトを見ると、「本日の新聞報道について」というお知らせがありました。曰くうちはSBIの子会社ではなくて30.3%しか持たれていない関連会社ですから、みたいな冷たい内容です。

SBIのWEBで過去のリリースをくってみると、確かに2004年8月に公開買付を実施して子会社化しています。その時は議決権の過半数を保有しています。その後のエース証券の資本政策で議決権比率が下がったことになります。

公開買付をされるということは有価証券報告書提出会社だろうと思ってEDINETで探して見ると、8月5日付で有価証券届出署が提出されています。それによると、富士ソフトABC等に31百万株の第3者割当増資をし、その結果SBIの出資比率が30.3%に下がっています。この第3者割当増資に応じた株主の持株比率が約45%という既存株主の議決権の大幅な希薄化を伴う増資です。

これを受けてSBIがしたことが、プリヴェへの持株の譲渡です。ここで注意が必要なのは、エース証券の第3者割当増資の結果SBIの持株比率が3分の1以下に下がっていた為に、プリヴェは相対取引で株式を取得できたことです(証券取引法27条の2第1項4号)。そうでなければプリヴェは公開買付手続が必要でした。話が簡単に済んだ訳です。

この経緯を見るに、やはりSBIは損失を最小限で抑えたなと感じます。エース証券を傘下の証券に合併させて関西の地盤を取り込むという初期の目的は達していませんが、それなりの価格で株式を処分できた訳ですから。一方、エース証券の経営陣と先の第3者割当で新たに同社の主要株主になった3社にとっては、エース証券の経営権取得を目指すプリヴェと場合によっては委任状獲得合戦をしなければならない事態ですから、まだまだ波乱含みで気が抜けません。プリヴェですが、念願の証券会社をグループ入りさせるチャンスですが、発表通り議決権の過半数を取得できるかどうかは、今年8月の第3者割当増資組の議決権の保有比率を考えると微妙に思えます。

非上場会社ですから日々状況が見える訳ではありませんが、注目の会社かもしれません。

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2005/07/14

松下型防衛策の有効性を試験

12日付日経新聞夢真HD、日本技術開発にTOBを発表から。

建設現場施工管理の夢真ホールディングスは11日、建設コンサルティングの日本技術開発に対し、TOB(株式公開買い付け)を実施し、子会社化を目指すと発表した。約19億円を投じ、現在6.83%の出資比率を53.71%まで高める考えだ。 日本技開は8日、敵対的買収への対応方針を発表。同社株を大量に買い付ける投資家に、狙いなどについて情報提供などを要請する。

つまり、松下電器型の防衛策の有効性を試す事例が出現したということであります。報道では夢真HDは「TOB期間中の株式分割は認められない」と発言している模様ですから、日本技術開発が株式分割に踏み切った場合には差し止め請求が予想されます。個人的には、TOB期間中の株式分割は、例え企業価値を毀損するような買収提案への対抗策であっても認められるべきではない、そもそも日本のTOB制度の不備だとと思います。自由民主党が先日発表した「公正なM&Aの実現に向けて」においても、期間中の株式分割があった場合を考慮して、買付価格の下方修正や撤回が認められるべきだとしていましたよね。

従って、日本技術開発の対応としては、新株予約権の発行によるポイズンピルかなと思います。折しも、
敵対的買収者以外の株主にも税負担が生じないポイズンピルの仕組み
が経済産業省と国税庁から発表されていますので、それを使うってはいかがかと。

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2005/07/07

株主総会開催場所

先日ある会社の社長さんとお話をする機会があった折りに、「本社を移転したいなぁ」という話題になりました。その会社の本社は関東ではありますが、東京都ではありません。ただし、管理部門等の本社機能はちゃんと本社内にあります。理由をお伺いすると、大きな営業拠点がある東京を登記上の本社にした方が営業上の見栄えが良い(管理部門は今の本社にいることで構わない)、そして株主総会を東京の営業拠点の大会議室でやりたい(今はホテルで開催しているのを経費節約できるし、総会後の懇親会で当社の商品を見る機会を設ければ株主数の増加も期待できるのではないか)、ということでした。

本店所在地は定款記載事項で、その会社は普通に3月決算ですから、何もなければ来年の定時総会での定款変更ということになります。しかし、来年の株主総会提案事項を決する取締役会までに会社法が施行されていれば、株主総会の場所だけは本店所在地にこだわらなくて良くなります。海外で開催できるかどうかは判りませんが(仮にできたとしても上場会社の場合は定足数を充足できないリスクがあります)、東京都に本店がない会社も東京都で開催可能です。

会社法施行時期が判ればお知らせする約束をしましたが、一体いつなのでしょうね。4月1日説から10月1日説まで乱れ飛んでいます。官報で政令をチェックするのも結構面倒ですしね(^^;)

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2005/07/06

有限会社

会社法はなんとか成立しましたので、この調子で行くと来年度前半(実際何月なんでしょうね)の施行に向けて動くことになりそうですね。

会社法はの目玉の1つが有限会社がなくなることです。なぜなくなるのかという理由付いて余り合理的な理由は聞かれず、「公開会社ではない株式会社があれば十分でしょう」で片付いています。残すと会社法の条文が2000条を超えるので、内閣法制局が「勘弁してくれ」と言ったという説が最も説得力があったります。

有限会社の法的な特徴は何かを考えるとヒントがあるのかもしれないっつーことで、私が思いつく有限会社のメリット。

1.最低資本金が少ない

株式会社は10百万円で有限会社は3百万円ですから、有限会社の方が作り易いといえます。ただし、会社法で最低資本金の規制がなくなるので、有限会社を廃止する理由にはならないですね。

2.決算公告が義務づけられていない

株式会社は商法上は定款で公告手段(日刊紙とか官報とか)の定めを設け、その方法で確定決算の内容を公告しなければなりません(WEBで決算公告をすることも可能です)。商法特例法上の小会社は要約貸借対照表のみでいいわけですが、それ以外は貸借対照表と損益計算書を、WEBで公告する場合には注記部分も含めて、公告する義務があります。実態としては、上場会社以外の決算公告はまず見かけませんが、法律ではそうなっています。法務省も決算公告をさせたいらしく、減資や企業再編等で債権者保護を行う場合には、直近の決算公告をした場所を明記するように商法施行規則に定めるなどしています。恐らくこの点は有限会社廃止のきっかけなのでしょう。ただし、会社法施行後も存続する既存の有限会社(特例有限会社)には決算公告の義務を免除しますので、一番の理由ではないでしょう。

3.大規模な会社になっても公認会計士による会計監査の義務ない

株式会社は資本金5億円、負債総額200億円を上回ると商法特例法上の大会社として、公認会計士による会計監査が義務づけられています。非上場の株式会社はそうならないように苦心している訳です。ところが商法特例法は株式会社に関する法律で、有限会社には適用されません。会社法の議論でも大規模有限会社の問題は提起されたようですが、結局特例有限会社でも会計監査人は規模にかかわらず不要という規定になっています。経過措置ですから、いずれはなくなるのかもしれませんが、経過措置がいつなくなるかという規定はありませんから、すぐになくしたかった訳ではなさそうです。

4.機関設計や利益配分が柔軟

現行商法では株式会社は取締役会3名以上で監査役も必要ですが、有限会社は取締役会1名ののみの設計も可能です。この点については会社法では公開会社ではない株式会社も採用できるようになりました。また、有限会社は利益配分についても各社員の出資口数に比例しない設計が可能ですが、これも会社法の公開会社ではない株式会社には認められています。種類株扱いですね。株式会社に認めると言うことはなくしたいものではないということになります。
機関設計では取締役の任期の定めが、株式会社は2年以内(委員会等設置会社は1年以内)ですが、有限会社法には規定がなく、無期限も許容されています。会社法では公開会社ではない株式会社については定款規定により10年超えない期間とすることができるようになりましたが、それでも無期限とまではいきませんでした。取締役の選・解任は登記事項ですから、定款も変更しない、取締役も任期が無期限だから変更がないということになると登記所のお仕事が減ってなってしまうのがいけないのでしょうか(笑)。実際には、休眠会社を排除する為だとは思いますが。特例有限会社法にも任期の規定が適用されないようですから、余り深刻な問題意識はないのかもしれません。

5.一口当たりの出資金の規定がある

株式にはすでに額面という概念がなくなっています。その結果、資本金=額面×株数という考え方が成立しなくなったわけですが、それが未だに理解ができないという人も少なくないようです。財産評価基本通達でも類似業種比準方式では額面50円に置き換える規定を残している位ですから無理もないかもしれません。それが有限会社には定款記載事項として一口当たりの出資金の考え方が残っています。整備法の有限会社の規定を見ていると、会社法施行後の特例有限会社の定款にある一口当たりの出資金尾記載は「ないもの」とされます。「インクの染み」と表現した方がいらしゃいますが、そういうものです。つまり、これが絶対に止めたかったことの少なくとも1つのようです。
一口当たりの出資金のあるなしは増資の際の資本金の決め方を左右します。額面があると増資の際の増加資本金は、増資の期間決定による増加口数に一口当たりの出資金をかけた金額になります。額面がない株式会社では発行価額の2分の1以上ということになっています。例えば、10億円の増資の場合、増加口数を何口にするかは会社側が決めますから、経済合理性があれば1口とする(増加資本金額は5万円)ことも可能ですし、2万口(増加資本金額は10億円)とすることも可能です。1口当たりの出資金額がなくなる会社法施行後は5億円以上を資本金にしなければなりません。増加金額の5万円と5億円で何が違うかと言えば、資本金を1億円以下の中小企業ではなくなってしまうこともありますし、登録免許税負担も変わります。登録免許税が法務省の収入かどうかは判りませんが、少なくとも国にとっての身入りが変わります。これが最大の動機とは考えたくはありませんが、実務上は会社法施行前後で大きくことなる点であることは間違いありません。

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2005/06/22

コクド、160億円の債務超過・前期、プリンスホテルも

21日付日経新聞「コクド、160億円の債務超過・前期、プリンスホテルも」から。

西武グループの中核企業コクドと、その100%子会社のプリンスホテルが2005年3月期決算でそれぞれ160億円、9億円の債務超過に転落したことが20日、明らかになった。 投資損失の引き当てや子会社の株式評価損などで多額の特別損失を計上したため。3月末に西武グループ経営改革委員会が示した西武鉄道を加えた3社統合を柱とするグループ再編案は両社の債務超過を前提としていない。

現在国会審議中の会社法案では債務超過の会社との合併は可能と明記されているようですから、再編はすべて来年にすれば良いのかも知れません。

ただし、確か西武グループの再編案は、コクドの分割型分割し、西武グループの株式を保有する新コクドが増資した上で、新コクドとプリンスホテルを西武鉄道が吸収合併というものでした。プリンスホテルとの合併は会社法で手配されるとしても、現在のコクドが時価で債務超過となると分割は難しいですね。

投資ファンドも興味を示しているようですから、西武グループの再生にはもう一波乱あるのかもしれませんね。

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2005/06/15

大証は上場廃止で東証と一線

14日付日経新聞「大証、再審査制度新設へ・上場廃止で東証と一線」から。

大阪証券取引所は13日、経営再生中の企業が過去の虚偽記載によって上場廃止基準に抵触した場合でも、経営陣が刷新されていれば上場維持の道を残す新制度を検討すると発表した。企業側が上場を望み一定条件を満たせば上場の可否を改めて審査する。

13日付ポストで「不適切な合併は監理ポストで最長2年維持できるのに」としましたが、大証のスタンスはこれに近いものだといえます。これも1つの方法だとは思うのですが、監理ポストである間の投機的な取引はあるでしょうし、上場廃止を遅らせれば遅らせるほど外野の声が大きくなるのではないかなと思いますので、どうかなと。

そうまでして上場維持をさせなければならない理由はなんなのでしょうか。株主に回復不可能な損害を与えるのでしょうか。再生対象になった時点でゴーイングコンサーンを前提に購入した株主には大きな損害を与えている訳ですし。素朴な疑問です。

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2005/06/13

東証、再生銘柄の再上場基準を緩和

11日付日経新聞「東証、再生銘柄の再上場基準を緩和」から。

交代した経営陣が過去の不正を明らかにし、これが上場廃止基準に抵触するようなケースについて、東京証券取引所は10日、再上場しやすくする方針を固めた。上場廃止が真相究明にブレーキをかけるのは好ましくないと判断した。

このようなケースで問題とするべきなのは、どのような手順でその銘柄が、過去の不正から決別したか、今後そのような不正が起きることはないのか、を審査するのかだと思います。

東証のようにいったん上場廃止にして、再申請時に現経営陣の下での体制をチェックするというのも、1つの考え方ではないのでしょうか。上場廃止ということで会社が受けるダメージとはなんでしょうか。イメージは不正が明らかになった時点で相当に傷んでいますし、非上場だとスポンサーが付かないことはないでしょう。市場価格がないとスポンサー候補企業との交渉が難しいということでもあるのでしょうか。私には思いつかないのですが。

1つだけいえるのは、株主の資産価値については明らかに下がります。処分が困難になりますから。また、個人株主の場合税制が不利です。譲渡損がなかったものとされてしまいますし、譲渡益(仮にもしあればですが)に対する税率が平成19年12月31日までは上場株式10%に対して、非上場株式20%です。この点は税制上の手配がなされれば良い話ではないかと思います。金融庁は財務省に要望するよりも、東証に行政指導する方が楽なんだということなのでしょうか。

もちろん、「不適切な合併」を行った企業も監理ポストで2年間上場維持ができるのになんで、という気持ちも判らないではありません。そういう意味では、東証には市場運営者としての説明責任をきっちり果たして頂きたいと思います。

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2005/06/09

ニレコ事件決定文

ニレコの新株予約権発行差止仮処分決定の決定文が東京地裁のサイトに掲載されていたので読んで見ました。日経新聞の報道を見ていたのでポイズンピルそのものに対する批判があるのかなと思いましたが、原則的なスタンスは経済産業省・法務省の「指針」と大差ない印象を持ちました。

どちらも、買収防衛策については株主総会の決議を経て導入し、株主総会決議でいつでも償却できるようになっていることを原則としています。つまり、株主総会決議で導入し、サンセット条項が付いているイーアクセスのポイズンピルは少なくとも導入時に差止をされるリスクはなくなったと理解できます。

ニレコの件では取締役会決議のみでの導入かつ償却ですから、その是非をどう判断するかでは確かに厳しいようです。取締役会が外部者の判断に従わない余地を残している点について、地裁は。ニレコの場合は外部者からなる委員会の勧告を最大限尊重するといいながらも、それが企業価値を損なうことが明らかな場合は、取締役会独自の判断が許容されることになっていることを問題視しています。これはある意味適切だと 思います。最大限尊重というからには従わない場合についての規定は、厳格に規定しておくべきでしょう。

日経新聞の記事でもう1つ問題にしていたのが、利害関係者の利益についても発動条件にしている点です。「指針」においても脅威の具体例としては挙げていなかった項目です。地裁は取締役の恣意性が入る要因であるとして否定しています。逆に言えば株主総会決議での導入とサンセット条項があれば合法になりそうです。経営者側からすれば入れたいところですが、企業価値と株主の利益の観点だけにするべきという地裁の判断は余りむりはないと思います。企業価値の外に利害関係者はないのではないでしょうか。

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2005/06/06

敵対的買収防衛策のガイドライン

経済産業省と法務省が敵対的買収防衛策のガイドラインを発表しました。これまでの株主平等原則や主要目的ルールに替わる敵的買収防衛策の是非の判断基準が整備されたことになります。官僚が設定したことに違和感を感じる向きもあるようですが、私は素直に評価したいと思います。この指針に法的拘束力がないことを認識しておけば良いだけのことですから。

同時に発表された企業価値報告書においては、むしろ制度についての切り込みが足りないのではないかと感じました。

ポイズンピル(ライツプラン)発動時に新株予約券証券を取得した株主に税負担が生じる可能性があることを指摘している訳ですが、その点は対抗策としての有効性に大きく影響する部分ではないでしょうか。株主に税負担があるプランを発動した場合、経営者はそれを正当化できるのでしょうか。私は堂々と税制改正要求をするべきだったと思います。

来年の商法改正で取得条件付き新株予約券が可能になり、対価として議決権付株株式をわたすことで強制的に行使させる仕組みが可能な訳ですが、そこの課税を繰り延べにするだけでもポイズンピルの実効性は増し、不意打ちの敵対的買収提案で一般株主が損害を被るリスクが減るのではないでしょうか。

もう1点の制度改正要望は、今の普通株を新株予約券付証株式に転換した場合でも上場を維持できる上場規則です。ニレコのポイズンピルが否定されたのは基準日(3月31日)以降の株主に新株予約権がなかったことが大きいですが、それを回避することができます。国会審議中の会社法が成立すれば、株主総会の議決が必要な定款変更により可能な行為のはずです。東証等の取引所に対して要望しておくべきだったのではないでしょうか。

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2005/02/24

素朴な疑問

前回の記事には3つもトラックバック(grandeさん、jiang_nai_ziさん、Grebewebさん、ありがとうございます)を頂いた上に、当ブログへのアクセスも過去最高を記録しているみたいです。

24日付日経新聞3面には、大学教授の方2名のコメントが掲載されています。私は上村達男早大教授のご意見に同感する部分が多いです(上村教授は、「会社法改革」(アマゾンでのご購入はこちら)という著書がある会社法の専門家ですね)。もちろん、「違法」とか「なんでもありになってしまう」という部分には、そこまで言い切る自信も根拠もありませんが、私が同感するのは、そもそもライブドアのニッポン放送株式取得の適法性について司法判断を仰ぐべきだという点です。

以前「個人的には、是非ニッポン放送には証券取引法違反の取得という理由で名義書換を拒否して頂きたいと考えています。それをうけてライブドアがニッポン放送を訴えることでしか、本件が早期に法廷の場に持ち込まれることはないと思います。」と書きました(保管振替機構名義なのでしょうから、名義書換ではなく実質株主としての扱いを拒否することになるのでしょうが、それが現行の制度で可能かどうかは検証していないというそそっかしいコメントである点は反省しています)。

今回の新株予約権差し止め仮処分請求で、すべての論点について司法判断が出れば、それはそれで歴史に残る判決になるかと思われます。ベルシステム24対CSKやUFJ対住友信託の例から考えて、司法が「ライブドアの株式取得」も「ニッポン放送の新株予約権発行」も容認するのはないかと、勝手に想像はできる訳ですが、それでも一応判決があれば、立法者もそれを考慮した会社法改正を考えると思いますので。

で、タイトルの素朴な疑問ですが、日経新聞にはライブドアが「フジテレビとニッポン放送の取締役を兼務する村上光一富士社長など「取締役個人に対する賠償責任なども考えている」としている」とありますが、村上氏は議事録上利害関係人として取締役会決議に参加していない格好になっていると思うのですが、その場合でも賠償責任を追及できるのでしょうか。

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2005/02/21

相続財産の確定

19日付日経新聞「堤康弘氏、改めてコクド株相続権主張」から。

「西武鉄道グループの中核会社コクド前会長の堤義明氏の実弟で、遊園地運営会社インターベストトレーディング(3月に豊島園に社名変更)の堤康弘社長と顧問の前田茂弁護士が18日都内で記者会見し、西武グループ経営改革委員会の諸井虔委員長(太平洋セメント相談役)の辞任と同委員会の解散を求めた。」

株式を相続したのは誰か、と問われれば、堤義明氏だったのでしょう。ただし、分割協議書に入っていない財産ですから、もし仮に名義株になっていたコクドや西武鉄道の株式が堤康次郎氏の財産であったとなれば、義明氏以外の相続人にも権利はあるといえます。これらの株式はコクドで管理していたようですから、堤家のものであると確定できるかどうかは判らない気がします。

相続発生は40年以上前ですが、もし仮にこの段階で相続未了の財産があって、今になって遺産分割が確定したら、相続税の修正申告書を提出する必要はあるのでしょうか。それとも時効なのでしょうか。特に、今回のケースは、相続税負担を軽減させる目的で(いわば「悪意」をもって)「名義株」とした訳ですが、それでも時効なのでしょうか。40年も経過したのなら、時効なんでしょう、きっと。それを見越して、「自分のものだ」と主張する方々には、「記者会見開くのもいいけど、裁判をがんばってね」としか申し上げるのみです。

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2005/02/16

DESの税務

はぐれバンカーさん「DESってどうよ?」から。

意外に大変だなと思ったのは、DESをする際の税務上の取り扱いが明確でない点。 債務者側の取り扱いが税法上決まってないみたい(判例はあるらしいがやや心もとない。)。クライアント側の会計士はネガティブな反応。

私は会計士でも税理士でもありませんので、参考になる書籍を1冊。中東正文他『新版「資本の部」の実務 改正商法・会計・税務』(新日本法規、ISBN4-7882-0630-7)の679~729ページがよくまとまっています。悲しいことにアマゾンでは在庫切れとなっていますが、お持ちの方がいらっしゃったら見せて貰って下さい。

以下は同書の記載をもとにした私の理解であり、正確さを保証するものではありませんし、法律上または税務上のアドバイス等を意図したものではありません。税務上の取り扱いについては、必ず「税理士」にご相談下さい。また、法的な取り扱いについては、弁護士等の専門家にご相談下さい。

商法的には、DESは金銭債権による現物出資という考え方でいいようです。増資額については色々と議論があるようですが、東京地裁民事第8部では、券面額説での取り扱いをしているそうです。参考文献として、商事法務1590号7~9頁以下が引かれています。増資して、その代わり金で債権を返済したのと同じじゃん、というはぐれバンカーさんが思われた通りの理由があるようですね。

さて、税法ですが、こちらもDESは金銭債権の現物出資と考えるようです。従って、適格現物出資の場合は、すべて帳簿価額ですみますので、ノープロブレムです。でも、今回はM&Aですから、適格現物出資にならない可能性もあると思います。

買収する側は、時価で債権を取得するのでDESをしても課税の対象にならない。これは多分確実。債務免除と取られて寄付金認定されることがあるのか?

買収する側は、いったん時価で債権を取得する訳ですね?理論的には、債権取得時は債権の時価、DESにより取得した株式の取得価額は、法人税基本通達2-3-14により、合理的な再建計画等の定めるところによりDESをした場合には、その株式の「時価」とされています。その場合、株式の時価が債権の額を下回り、債権譲渡損が出る可能性が(ごく少ないとはいえ)あります。しかし、上掲書によれば、「合理的な再建計画」の定めによる以上は、損金として認容され、寄付金にはならないという理解です。

一方、買収される側の債務額はDESにより資本に振り替わるが、この資本への振替金額を簿価にするか(券面学説)、時価にするか(評価額説)が焦点になりそう。

確かに、評価額説では債務消滅差益が出てしまい、それを消せるだけの繰越損失がないと、税負担が生じてしまいます。これについては、前掲書は705ページはファジーな書き方をしています(引用は控えます)。私個人としては、合理的な再建計画等があり、商法決算を券面額説で会計処理した場合に、税務署がチャレンジできるのであれば、その根拠が知りたいな、と思うところであります。

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2005/02/14

ニッポン放送買収合戦(2)

ニッポン放送買収合戦は、ある意味予想通り、フジテレビが25%の取得を目指すという対抗策を出しました。ライブドアが主張する通信と放送の相乗効果についても、(ライブドア以外の)パートナーとの連携も考えるようです。

ライブドア以外のパートナーはどこか?堀江社長の仇敵三木谷さんや一時はテレビ朝日支配を試みた孫さんは、いまやどちらも球団を保有していますので、ベイスターズやスワローズの株式を保有しているフジサンケイグループに手を出すのは考え難いと思います。私としては、熊谷さんや木村さんや宇野さんあたりはいかがかと思いますが(あてずっぽうですけどね)。

さて、フジテレビの対抗策をうけて、ライブドアも「ニッポン放送の増資」を言っていますし、はぐれバンカーさんは「匿名組合出資方式」を考案されています。

しかし、どちらも前提条件があります。それは、「ニッポン放送の取締役会を支配してからの対抗策」だということです。現在のライブドアの持ち株比率はわかりませんが、連休中の堀江社長のコメントからは過半数をとったという発言はありませんから、ライブドアグループ単独では、まだ取締役会を支配できません。

これが、村上氏とすでに共同歩調をとることが合意されているとなると話は別で、現状でもライブドア派の持ち株比率が50%を超えていることになります。しかし、今のところ、表向きは、そのようなコメントを出していませんので、(たとえ馬鹿正直といわれようとも)それを信じて議論を進めます。

ライブドアグループで議決権の過半数をとっていれば、臨時株主総会を請求し、議案に取締役の新規選任(現在19名ですから、20名を新規選任で取締役会をコントロール可能です)を入れ、総会でそれを通すことができます。そうなれば、普通発行による増資も重要な資産の処分も可能です。

仮に、ライブドア派で議決権の3分の2をとっていれば、取締役の解任も可能ですし、有利発行の増資も決議できますから、万全ですね。

いずれにせよ、ライブドアが過半数を取るまでには、少し時間がかかると思われます。その間に、フジテレビが次の対策をとることも可能です。例えば、ホワイトナイトを探してくるとかですね。

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2005/02/10

ニッポン放送買収合戦

一昨日から大変な騒ぎになっているようですが、このニュースを見た私の第一印象は、以下の2つです。

(1)どうやって公開買付でなくて35%も集めたんだ?
(2)フジテレビがニッポン放送株式を25%集めたらどうするつもりだ?

(1)については、取得者を2社に分散させた上でTOSTNET-1を使って、時間外に取得したようです。以下のBLOGでは、その正当性について議論されています。個人的には、是非ニッポン放送には証券取引法違反の取得という理由で名義書換を拒否して頂きたいと考えています。それをうけてライブドアがニッポン放送を訴えることでしか、本件が早期に法廷の場に持ち込まれることはないと思います。

 磯崎哲也事務所さん「ライブドア、「ニッポン放送戦」に参戦」
              「ライブドアのニッポン放送株1/3超取得は違法か?」
              「ライブドアのニッポン放送株1/3超取得は違法か?(続き)」
              「ライブドアのニッポン放送株1/3超取得は違法か?(その3)」

 grandeさん「ライブドアの動き とりあえずまとめ」
 はぐれバンカーさん「ニッポン放送TOB ライブドア参戦!!」
             「ニッポン放送TOB (続き)」
             「ニッポン放送TOB (完結編)」
 47thさん「ライブドア参戦」のM&A業界へのインパクト」
       「ライブドアのニッポン放送株式は「違法」・・・だなんて、滅相もありません(1)」
        「ライブドアのニッポン放送株式は「違法」・・・だなんて、滅相もありません(2)」 

(2)フジテレビがニッポン放送株式の25%を保有すると、ニッポン放送が保有するフジテレビ株式の議決権は消滅します。そうなるとライブドアは少なくともフジテレビに影響を与えることはできません。フジテレビ側としては公開買付条件の変更で、予定数に満たない場合でも買い付けを行う旨公告が必要になる(買い付け価格の上方修正も必要かもしれません)訳ですが、対抗策としてはありえますね。この場合、ライブドアはどうするのでしょうか。株主総会の特別決議がとれそうなまで議決権をコントロールできれば、株主提案による臨時株主総会を開催して有利発行の第3者割当増資でフジテレビの持ち株比率を薄めることを狙えますが、時間がかかりそうです。その間に、フジテレビ側が防御を固めることも可能でしょう。

この考えから発展すると、ニッポン放送がライブドア株式の25%を取得するなんていう対抗策もありえるかもしれません。ある種のパックマンディフェンスですが、ライブドアは浮動株比率がそんなに高くないようですから、実現可能性は少ないでしょうね。

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2005/02/08

走れ!レッドアロー号

村上ファンドの西武鉄道買収提案は、色々なBlogでも取り上げられているようで、拙文にもトラックバックを頂いております。ファイナンス関連で実績のあるまたは興味のある方がblogをお始めになられるケースが増えたことを反映しており、勉強になるばかりです。

村上ファンドの提案に対する分析は、以下のBLOGをご覧頂ければ、尽くされていると思います。

 grandeさん「西武鉄道の完全買収案の意味を考えてみる」
 小林雅さん「西武とコクド」西武鉄道とコクド(続)
 diwaseさん「鉄道会社買収の皮算用」
 47thさん「西武鉄道株TOB提案の謎」「西武鉄道株TOB次の一手~本当の狙いは?」
 はぐれバンカーさん「勝算なきTOB?」

西武鉄道グループの再編はみずほコーポレート銀行主導で進められていくのでしょうが、西武鉄道グループを悪くする方向にいかないことを願うのみです。

もう1点だけ付け加えるとすると、西武鉄道株式を保有する個人株主の税務というマイナーな論点があります。個人の証券税制は磯崎哲也さんいわく「ディープ」な世界であり、また今回の西武鉄道グループの再編に関連しては余りにマイナーなのですが、一応ということで。

現在、西武鉄道株式は非上場株式です。従って、村上ファンドが仮にコクドと取引銀行を説得して公開買付をすることになったとした場合、応じる西武鉄道株主(個人)には非上場株式の譲渡損益が生じます。

譲渡益が生じる場合は、税率20%の申告分離課税です。上場株式であれば10%(平成19年12月末までの時限措置)ですから、仮に新生西武鉄道が上場して、村上ファンドが提案する株価(1000円/株)以上で取引されると思えば、上場まで待つ方が得です。

譲渡損が生じる場合、上場株式の場合は譲渡損の繰越制度がありますが、非上場株式にはありません。つまり、今年の非上場株式の譲渡損は、今年の株式譲渡益と通算できるだけですが、今年の上場株式の譲渡損は来年以降3年間は繰り越して、各年度の株式譲渡益と通算できます。そうであれば、上場まで待つ方が得であります。

実際には、こういうことを考えている西武鉄道株主(個人)って...いないんでしょうねぇ(汗)

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2005/01/28

東証が6社に改善報告書提出を求める

28日付日経新聞「改善報告書の提出を求める 東証、6社に」(nikkei.netには掲載されていないようです)から。

「東京証券取引所は27日、先月の金融庁による有価証券報告書の一斉点検を受けて訂正報告書を出した巴コーポレーション、昭和化学工業、新神戸電機、いなげや、丸運、藤田観光の6社に訂正の経緯と改善措置を記した改善報告書の提出を求めた。」

東証のプレスリリースはこちらです。

「昭和化、丸運は上場廃止基準に、巴、いなげや、藤田観は一部上場基準に抵触していた。新神戸は上場廃止基準などには抵触していなかったが、直近の決算期でも株主の水増し数が百人と多かった。
今回の改善報告書は東証に提出する「株式の分布状況表」が適切でなかったことが理由で、適時開示に問題がある企業に東証が求める改善報告書とは異なる。」

西武鉄道問題で上場廃止処分を出したことから、今回の処分もそれに相当するものかと思われないようにとの配慮から、わざわざ入れた一文と推測されます。しかしながら、上場廃止基準や1部基準に抵触しているという事実は大きいです。西武鉄道も上場廃止基準に抵触していることを隠蔽していたことが、今回の騒動のきっかけでしたから。

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2005/01/25

会社分割か株式移転か

25日付日経新聞「オークマ、グループ2社と経営統合・経営基盤強化」から。

工作機械大手のオークマは24日、10月1日付で持ち株会社に移行し、グループ会社で東証一部の大隈豊和機械、名証上場の大隈エンジニアリングの2社と経営統合すると発表した。今年の工作機械市場は減速が見込まれており、グループの開発や生産、販売力を結集して経営基盤を強化する。新たに発足する持ち株会社の社長には柏淳郎オークマ社長が就任する。

会社側のプレスリリースはこちらです(pdfファイルです)。それによりますと、旧オークマ(オークマホールディングスに社名変更)から事業部門が分社型分割により新会社(オークマホールディングの100%の子会社)になり、オークマホールディングが大隈豊和機械と大隈エンジニアリングを株式交換により100%子会社化する、というステップが予定されています。トステムが会社分割で事業部門を分社化し、純粋持株会社がINAXを株式交換により100%子会社化したのと同じ手法です。

同じ結果をもたらす再編手法としては、3社が株式移転により完全親会社オークマホールディングスを新設する方法も考えられます。日本興業銀行、第一勧業銀行、富士銀行の3行がみずほホールディングを設立したのと同じ手法です。

この違いは、今回オークマがとった手法では、純粋持株会社が旧オークマの法人格を継承するのに対し、株式移転方式では、純粋持株会社は新設で、旧オークマの法人格を継承するのは、事業子会社であるオークマであるという点です。些細な違いに見えるかもしれませんが、その後の純粋持株会社体制の運営に影響が出ます。

オークマ方式では、旧オークマが持つ(もしあればですが)知的財産権や剰余金は、オークマホールディングスが継承します。従って、オークマホールディングス単体の収入基盤として知的財産権のライセンス収入や純粋持株会社になった直後の配当可能原資も確保できます。

株式移転方式では、新設されるオークマホールディングスの資本の部は資本と資本準備金ですから、配当可能原資はありません。設立第1期目の決算が出てからでないと、資本準備金の取り崩しはできないでしょうから、もともと無配の予定でもない限りは、配当可能原資を捻り出す工夫が必要です。子会社の定款変更をして、中間配当日を変えた例もあったようです。会社法現代化が施行されると、随時配当のような行為が可能になる時代ですから、問題はなくなるのかもしれませんが、子会社の利益蓄積が減少することは問題かしれません。

また、株式移転方式により設立されたオークマホールディングスの収入源は、何もしなければ子会社からの配当金のみです。株式移転により発生した完全親子会社関係では、100%子会社からの配当金は最初から全額益金不算入ですから、オークマホールディングスは税務上赤字の会社になってしまいます。

株式移転方式にメリットがないかといえば、そうではありません。事業会社の事業継続に必要な許認可がある場合、事業会社が現在営業中の会社の法人格を継承することが必須条件になります。その場合は、株式移転で完全親会社を設立しないといけません。

結局は、個別事情により最適な経営統合方式を選択しなければ、後で苦しみます、ということです。

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2005/01/20

東証の「親会社等」の上場開示ルールについて補足

ヘラクレスの上場基準に関するポストに対して、Tomさんからコメントを頂戴しました。

マスダ社はあくまで財産保全会社であり、さらにベンチャー企業投資を業としてるから、開示対象から外れるという扱いではないのでしょうか? 東証では財産保全会社や投資育成を目的とするファンドには、開示を要求していませんよね?

私の理解では、東証は財産保全会社であっても、「親会社等」に該当する限り、開示対象にしています。それは親会社等が特殊会社(石油公団とか)であろうが、原則同じとだと理解しています(例外については後述)。以下、東証の規則に関する私見を述べますが、上場審査は申請を受けた市場(および市場によっては主幹事証券会社)が行うものであり、判断については個別に当該関係者にご確認頂かなければならない旨申し添えます。ましてや、私はマスダアンドパートナーズの開示を避けるためにデジタルスケープがヘラクレスに上場したということを主張している訳では全くないことを明記しておきます。

「マザーズ上場の手引き」の32ページ以降に子会社上場に関する記述があります。そこには、親会社等が株式会社である場合、特殊法人である場合、投資ファンドである場合について、それぞれ開示すべき情報の内容が説明されています。特殊法人や投資ファンドも原則株式会社と同様である旨も明記されています。ちなみに、こう変わったのは、平成15年6月のルール改正以降だと思います。

財産保全会社については、34ページの(注3)に、

「ただし、親会社等が申請会社の役員等の資産を管理すること目的とする会社(いわゆる財産保全会社)であると認められる場合は、公認会計士又は監査法人による監査については、最近1年間のみとすることができます。」

とあります。財産保全会社に関しても、「親会社等」である以上は開示対象ではあるが、公認会計士又は監査法人による監査については、上場前1年間のみで良いよ、と読めます。私の理解では、それ以外の読み方はできないと思います。

「親会社等」に該当するかどうかの判断は、連結基準を準用していますので、会計監査人である公認会計士の判断が尊重されることが実務上多いと聞きます。

「親会社等」に該当しない会社の例は、日本公認会計士協会監査委員会が発表している「連結財務諸表における子会社等の範囲の決定に関するQ&A」Q10(2)に記載されています。そこにあるのは、「実体のないいわば役員Xの(役員X及びその配偶者等が議決権を所有している場合を含む。)の個人的な持株会社であるような場合」です。私の理解では、当該上場申請会社の株式保有以外の事業実体を有していない会社である場合のみが、「親会社等」ではないと判断されるということです。

財産保全会社には、不動産賃貸業を営む会社(なかには上場会社の本社ビルを保有して、賃貸借関係がある場合もあるようです)もあります。上記Q&Aによれば、その場合には、「親会社等」に該当し、その結果東証は開示を求めてくることになると思います。

「親会社等」に該当するにもかかわらず、開示を求めない例外は、上場会社が「親会社等」の内容を把握できないケースです。例えば、海外の投資ファンドに50%超保有された場合で、上場会社が要求しても財務内容等の開示に応じない場合でしょう。

東証マザーズ限定の開示の例外は、「手引き」36ページにあるとおり、

「親会社等による株式の所有が投資育成を目的としたものであり、申請会社の事業活動を実質的に支配することを目的とするものではないことが明らかな場合は、例外として認めています。
例えば、親会社等が申請会社の投資育成を目的としたベンチャーキャピタルであり、特に申請会社との取引関係がない場合などは、この例外に当たるケースと思われます。また、出資が投資育成目的であり、明らかに申請会社を支配することを目的としたものではないことが確認された場合には、例外として認めることができるケースと考えられます。」

Tomさんご指摘の投資育成ファンドの例外はこれですね。「東証1・2部上場の手引」に同様の記述がないことから、これはマザーズ限定の例外で、東証1・2部にはないという理解です。

役員の財産保全会社である場合には、役員による企業支配目的があることは明らかですから、この例外には該当しないでしょう。投資ファンドにしても、過半数近くの株式を保有している場合には、単なる投資育成目的とはいいづらいものを感じます。従来の日本のベンチャーキャピタルは数%の出資比率が多いですから、そもそも親会社等には該当しないできたものと思いますが、企業再生ファンドのようなPEファンドはベンチャーキャピタルとは一緒にできないと思います。また、投資先同士のアライアンス(取引関係)を促進するような投資ファンドも、投資育成目的のみとはいい難いのではないでしょうか。

従って、東証の情報開示ルールに従う限り、財産保全会社や投資ファンドであっても、「親会社等」に該当する場合には、情報開示対象であると私は考えます。至らぬ点があれば、ご指摘頂ければ幸甚です。

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2005/01/14

大証「会社情報等に対する信頼向上のための上場制度の見直し等について(案)」

見逃していましたが、コクド問題に端を発した情報開示ルール強化の流れの中で、昨年12月21日付で大阪証券取引所が「会社情報等に対する信頼向上のための上場制度の見直し等について(案)」をパブリックコメントにかけていました。コメントは1月11日で締め切られてしまいましたので、今は応募できません。

内容を見ると東証とほぼ同様の措置に思われます。ただし、ヘラクレスについては、東証がマザーズに対してとった措置とは異なる姿勢を示しています。両者のパブリックコメントを比べてみるとわかります。

「ヘラクレスにおいて、継続開示会社等ではない親会社等を有する上場会社については、親会社等との関係に加え、以下の内容に係る情報を開示することとする。
①親会社等が継続開示会社等ではない旨
②将来的な親会社等との関係
新規上場申請者の議決権の過半数を所有する親会社等が継続開示会社等でなければならないとする現行の取り扱いについては変更しない」(大証パブリックコメント3ページ)
「マザーズ上場会社については、現行は持ち株比率が50%超の親会社のみが開示義務の対象となっていますが、市場第一部・第二部上場会社と同様、持株比率が50%以下の親会社および当該マザーズ上場会社を関連会社とする会社の情報についても開示を求めることとします。」(東証パブリックコメント3ページ)

つまり、持株比率がたとえば30%の親会社等がある会社が東証マザーズに上場しようと思うと、その親会社等の内容を開示しなければいけませんが、ヘラクレスに上場する場合には財務内容の開示までは求められない、と読めます。

1月11日付でヘラクレスに上場承認されたデジタルスケープという会社に、大証のその立場が示されているようです。この会社の1の部をみると、マスダアンドパートナーズ株式会社(増田宗昭CCC社長の財産保全会社でベンチャー企業投資を業としている会社とされています)が60%超を保有する親会社等ですが、同社は継続開示会社等ではありません(少なくとも、開示資料を見つけることはできませんでした)。

上場時には公募増資(1000株)と売り出し(マスダアンドパートナーズ社による800株)により49.83%と50%以下になることから、親会社等が継続開示会社等でなく、関係等を1の部の22ページ以下で開示するにとどまっていても、上場が承認されたものと思われます。

今後、このような会社の上場の受け皿としてヘラクレスが注目されることになるかもしれません。しかし、逆にヘラクレス上場企業は「コクド予備軍」みたいなレッテルを貼られることのないように、大証は上場企業の開示内容に目を光らせて頂きたいものです。駿河屋の上場廃止を先導したのは大証だというイメージを崩してはいけないでしょう。

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2005/01/11

西武グループの構造

11日付朝日新聞「西武グループ、持ち株会社新設へ 鉄道・コクドを傘下に」から。

西武鉄道グループは、創業家の堤義明・前コクド会長に権限が集中してきた経営体制を刷新するため、グループ経営の中核として新たに持ち株会社を設立する方向で最終調整に入った。これまでは、西武鉄道の親会社コクドがグループ企業の実質的な持ち株会社として機能してきたが、資本関係を抜本的に見直し、コクド、西武鉄道とも新設する持ち株会社傘下の子会社とする。持ち株会社は委員会等設置会社とする方向で、最高経営責任者(CEO)には、みずほコーポレート銀行の後藤高志副頭取を起用する案が有力だ。

朝日新聞紙面上には、新設の持株会社の下に西武鉄道とコクドが並列で並ぶ図が掲載されています。ここで問題となるのは、JASDAQ市場へ上場するのはどこか、ということです。普通に考えれば新設の持株会社であるべきです。そうでなければ、委員会等設置会社が云々以前に、グループの全体の経営に対するガバナンスが効かないからです。

そのなかで、合併やコクドを子会社化する場合は、不振となっているコクドのレジャー事業の立て直しが西武鉄道の重荷になりかねないと判断。2社の経営の独立性を保ちやすい持ち株会社方式を最有力案として絞り込んだ。

2社の経営の独立性といいますが、持株会社のコントロールに服するという点では変わりありませんし、西武鉄道グループのキャッシュフローがコクドグループの事業再編に使われる可能性は十分にあります。それでも、持株会社が上場するのであれば、持株会社の株主総会で株主は発言することができますから、そこでガバナンスを効かせることも期待できます。

しかし、仮に西武鉄道が上場するのであれば、実態として今と変わりはなくなる可能性が残ります。もちろん、現行の上場ルールでは、持株会社が西武鉄道株式を20%以上保有することが前提であれば、持株会社は継続開示会社として有価証券報告書を提出してグループ全体像が見えたとしても、持株会社の経営に対して西武鉄道の株主は何の発言権もありません。

どうも西武鉄道のみの上場を考えているようにみえるのですが、西武グループのガバナンスの根本的な構造問題を解決する方向は見失わないでほしいものです。

コクドと完全子会社のプリンスホテルは、昨年9月末段階で西武鉄道株の約53%を保有しており、虚偽記載の公表前に大量売却した西武鉄道株の買い戻しを進めているため、持ち株比率はさらに高まっているとみられる。持ち株会社を設立する際には、保有する西武鉄道株を移管する予定。

持株会社がコクドを100%子会社化すれば、資産の移動に伴う税コストは最小限ですむと思いますから、これは可能でしょう。結果、持株会社が西武鉄道の株式の80%超を保有する圧倒的な親会社となることが予想されます。やはり、株式交換で持株会社が西武鉄道を100%子会社化して、持株会社が上場するべきでしょう。

ただ、持ち株会社によるグループ再編には、コクドや西武鉄道の株主総会での決議が必要となる。コクドの大株主である堤氏は、改革委の方針に従う意向とされているが、具体的な調整はこれからだ。また、コクドの役職員名義の株について、だれが本当の株主かがはっきりしない状況もあり、今後の道筋には不透明な部分も残る。

歴史が長い非上場会社の株主の確定は、過去従業員個人に株式を(本当に)譲渡している場合、一般的にいっても大変です。相続等で移動している可能性があるからです。2006年4月施行といわれる会社法の現代化では、株式の譲渡を制限できるイベントとして相続や贈与を加えられるようになる予定ですから、この部分は大分楽になると期待されます。

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2005/01/04

株券ペーパーレス化の影響

1日付朝日新聞「堤氏、事前に違法性認識 監視委・検察協議 西武鉄道株」から。

西武鉄道による有価証券報告書虚偽記載問題で、同社グループのオーナーである堤義明・前コクド会長が04年5月ごろ、個人名義に偽装した西武鉄道株をコクドが違法に大量保有していた事実についてコクド役員から報告を受けていたことが分かった。偽装の発覚を恐れて両社役員が対策を協議していたことを受けたものとみられ、堤前会長らが違法性を認識していたにもかかわらず、西武鉄道は同年6月、虚偽の記載をしていた疑いが強まった。証券取引等監視委員会も詰めの調査に入っており、東京地検特捜部と協議している模様だ。

記者会見で虚偽の発言をしていたということですから、いよいよ堤義明氏ご本人に捜査が及ぶ事態になりそうです。捜査は整斉と進めて頂きたいですし、その後の裁判では、相続税や証券市場制度のどこに問題があり、それがどのように利用されたのかが明らかになることを期待します。それを受けて、税務および金融当局は制度の改正に動いて頂きたいと思います。

ところで、朝日新聞の報道によると、西武鉄道が名義株問題を隠しきれないと判断した最大の理由は、株券ペーパーレス化だったとしています。

関係者によると、西武鉄道とコクドの役員や株式担当者は03年中、上場企業を対象に株券を電子化してペーパーレスにする制度が数年後に実施される公算が大きくなったことから、意見交換の場を数回にわたって開き、対策を協議した。
この制度では、株主は証券会社などを通じて「証券保管振替機構」に株券を預けた上で、電子化対応の管理口座を開設する手続きをとるが、株券を預ける際に株主の本人確認などが必要となる。
両社の協議は、個人名義に偽装してコクドなどが保有する西武鉄道株の取り扱いが主要テーマとなり、株主の本人確認手続きにより名義偽装が発覚する可能性が高いとの認識に至ったという。
 

株券ペーパーレス化に名義偽装を発覚させる効果があるとは気づきませんでした。担保株券の第3者対抗要件が一番気になっていたのですが、そちらは株主名簿記載をもって対抗できるようになるそうなので、あとは銀行等の実務家の方々に詰めていただけると思っておりました。私がそんなこと考えている間に、コクド/西武鉄道グループの幹部の方々は、堤義明氏の相続対策への影響に関する会議を延々と繰り広げられていたことになります。企業オーナーの資産管理に関与する方々のご苦労と想像力には恐ろしいものを感じます。

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「経営者天国」

30日付日経新聞経済教室『「経営者天国」牽制が必要』(上村達男早稲田大学教授)から。

上村氏には、『会社法改革―公開株式会社法の構想』という著書もあり、株式会社が資本市場からお金を搾取する存在になりがちであるという観点からの発言が多数あります。

上村氏の論旨は、完全子会社の経営者に対して完全親会社の株主によるガバナンスが効くように会社法で手配しないと、完全子会社が経営不正の巣になってしまう、というものです。例として、旧日本興業銀行に係る株主代表訴訟がみずほホールディングの発足により門前払いされた件、旧大和銀行に係る株主代表訴訟がりそなホールディングが発足するために早期の和解を強いられた件、UFJ銀行による三菱東京FG宛優先株式発行はUFJホールディングの経営に重要な影響があるにもかかわらずUFJホールディングの株主総会決議が不必要であった件、があげられています。

純粋持ち株会社を使った株主代表訴訟逃れについては、現在法案とりまとめ作業中の会社法現代化で手当てされるようですが、上村氏は、会社法現代化案においても完全子会社に対するガバナンスに関する手当てがなされておらず、不十分だとの立場です。確かに、UFJ銀行の優先株発行については、UFJホールディングの株主の立場からみれば割り切れないものがあります。

統合比率すら示していない三菱東京FGとの経営統合が良いと言い切る経営陣も腹をくくっている筈です。その実現を確実にする手段をとる権利はあるでしょう。しかし、本来は株主総会の特別決議が必要な経営統合を、中核子会社の種類株発行により、それ以外に手段がないような状態にできる商法には、やはり「問題あり」かなと思います。

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2004/12/27

金融庁の情報開示ルール

25日付日経新聞「非上場の親会社にも情報開示義務・金融庁」から。

金融庁は24日、企業開示に絡む不正が相次いでいることを受け、規制の強化策を発表した。企業グループの全体像を投資家がつかみやすいように、親会社が非上場でもその業績を開示することを公開企業に義務付ける。財務報告にかかわる内部管理に問題がないか経営者に確認を義務付けるルールも導入する。有価証券報告書の点検要請に回答がなかった145社に対しては、立ち入り検査に踏み切ることを検討する。

金融庁の発表資料はこちらです。親会社情報に関する部分を引用しますと、以下の通りです。

(4)親会社が継続開示会社でない場合の親会社情報の開示の充実
 関係府令の改正を行い、平成17年3月期から、継続開示会社である子会社の有価証券報告書において、親会社に係る以下の事項の開示を義務づける。
①株式の所有者別状況及び大株主の状況
②役員の状況
③商法に基づく貸借対照表、損益計算書、営業報告書及び附属明細書(会計監査人の監査を受けている場合には、監査報告書を添付)

有価証券報告書は上場企業以外でも提出しています。過去上場していた会社は基本的に継続開示会社として有価証券報告書を提出する義務がありますし、子会社を上場させる為に親会社が有価証券報告書を提出している場合もあります。あと、有名処ではサントリーが非上場会社で、子会社の上場もありませんが、有価証券報告書を提出しています。

サントリーの有価証券報告書を見ると、寿不動産株式会社という会社が親会社となっています。推測するに、鳥井家と佐治家という創業者一族の財産を管理する会社でしょう。今回、金融庁が開示府令を改正すると、これまで非公開であった寿不動産株式会社の株主構成や財務内容が、単独ベースではありますが、判明することになります。

ところで、金融庁の定義する「親会社」とは何でしょうか?東証のルールでは、財務諸表等規則第8条第3項に定める「親会社」および財務諸表等規則第8条第5項に定める「関連会社」を含めた「親会社等」について開示を求めています。金融庁の資料は「親会社」ですから、財務諸表等規則第8条第3項に定める「親会社」だけということなのでしょうか。

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2004/12/24

有価証券報告書の点検、無回答企業に立ち入り検査も

23日付日経新聞「有価証券報告書の点検、無回答企業に立ち入り検査も」から。

金融庁は、企業の情報開示を充実させるため有価証券報告書のチェックを強化する方針だ。同庁は先月、西武鉄道グループの虚偽記載などを受け公開企業約4500社に有価証券報告書の再点検を求めたが、回答を寄せていない200数十社に関しては悪質な場合などに立ち入り検査も検討する。報告書の信頼性を向上するのが狙いだ。

金融庁の要請に答えない公開企業(これは有価証券報告書提出会社すべてを指すのでしょうか?)があるというのは驚きです。督促をうけて「訂正の必要がない場合も回答しなければならないとは思わなかった」などという企業もありそうな気がしますが。

それとも、「対処すべきは課題ばかり」でご指摘あるように、

回答しない200数十社の会社の関係者、「提出しない」勇気に1票!といいたいところですが、 多分、、、★忙しくて忘れている、★問題が見つかって提出できず社内でもめてる、、、というところなのでしょうか。

という可能性もありますね。後者の場合、特に西武鉄道同様の相続対策の名義株問題を抱えている場合には、問題の性質上、関係者全員が覚悟を決める必要がありますが、それでも金融庁に期限どおりに回答しないのは得策とはいえない気がします。

前回の対策で金融庁は有価証券報告書の提出義務がある上場企業や公募社債の発行企業など4547社に対し、1カ月以内に自社の報告書に誤りがないか点検するように文書で要請した。その結果、21日時点で約500社が報告書の内容を訂正、約3800社が「訂正の必要がない」と報告を寄せた。一方、残りの200数十社については金融庁に対して何ら報告をしていない。このため、金融庁は無回答企業を対象に、各財務局を通じて個別に再度回答を求める。それでも回答がない場合は、立ち入り検査に入るか検討する。

さすがにこれでも対応しない公開企業はないと思いますが、もしあったらどうなるんでしょうか。上場廃止の決定は上場市場が行うものですし、課徴金制度はまだないんでしょうし、文書で「厳重注意」する位でしょうか。社名を所属市場に通知して対応を求める手もありますが、上場企業の場合は株価に影響を与える(市場としては開示に不備がある銘柄は監理ポストに入れる旨発表することになります)ので、そういう措置をとることを事前に警告するなどして企業側に対応を求めておく努力が必要と思われます。

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2004/12/15

コクドの責任のとり方

15日付日経新聞「コクド、西武株の売買契約白紙に・70社に代金返還へ」から。

「西武鉄道グループの中核企業コクド(東京・渋谷)は有価証券報告書の過少記載問題に絡み、西武株を売却した企業約70社との売買契約を白紙に戻す方針を固めた。近く株購入企業に、購入代金の返還と西武株の譲り受けを申し入れる。これで購入企業には損失が生じないことになるが、過少記載による株価下落の影響は個人投資家も被っており、特定株主に返金することに不満が出る可能性もある。」

コクドと相対で購入した企業だけを優遇する訳ですから、一般株主の中にも訴訟を提起する動きもあるんでしょうが...。

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2004/12/10

決算公告

10日付日経新聞「プリンスホテル、発足から30年以上決算公告義務怠る」から。

「西武鉄道グループの中核会社コクド(東京・渋谷)の100%出資子会社で、ホテル運営会社のプリンスホテル(東京・渋谷)が商法で定められている決算公告義務を30年以上にわたって怠っていたことが9日、明らかになった。」

有限会社は決算公告不要なのはさておいて、実態として、守って公告している株式会社が少ないのは、法務省の担当者の方もどこぞの対談で認めておられた事実であります。今更なんでそんな、と思いますが、きっと、西武鉄道グループ全体のコンプライアンス遵守の姿勢を示したということなのでしょう。

していない会社が多いとは申し上げましたが決算公告ですが、最近はしている株式会社も出ているようです。商法では、決算確定後に速やかに定款で規定した場所に決算公告しなければならない訳ですが、商法改正の流れの中で、平成15年からだったと思いますが、債権者保護手続にあたっての官報公告と知れたる債権者への通知には、直近期の決算公告した場所(官報なら日付、日刊紙なら新聞名と日付とページ、WEBサイトならurlアドレス)が記載されていなければなりません。

債権者保護は、減資や合併や会社分割等で必要になる訳ですが、手続に瑕疵があると、減資や分割の登記をして貰えませんから、それらの行為を行う予定のある株式会社が、ようやく決算公告をしています。私の知っている非上場の株式会社も企業組織再編の可能性があるので決算公告したと言っていました。

そもそも、債権者保護手続を明確化した商法改正には、株式会社の決算公告を促したいという、法務省の意向があるのでしょう。今回の会社法現代化の中でも、すべての株式会社に決算公告を義務付けている規定を変える予定はないようです。でも、そこまでして、取締役1名でも許される譲渡制限付株式会社にまで決算を公告させる意義って何なんでしょうね。

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2004/12/08

ジャスダック取引所上場審査基準

ジャスダックが取引所免許を取得したことをうけて、こちらに各種規則類が公表されています。取引所化と同時に、url変えるみたいですが。

取引所でない頃は、日本証券業協会の公正慣習規則に審査基準に該当するものが定められていました。取引所になったからといって変わらないんだろうと思っていましたが、証券会社の方から、第3条第1項第5号bは新たに追加された文言だと教えて頂きました。

「b 最近2事業年度に係る財務諸表等及びに直前事業年度に係る中間財務諸表等に「虚偽記載」を行っていないこと」(原文ママ)

同じく公表された上場審査基準の取り扱い2.(5)dでは、「虚偽記載」について以下のように規定しています。

「第5号bに規定する「虚偽記載」とは、有価証券届出書、発行登録書、または発行登録追補書類若しくはこれらの書類の添付書類若しくはこれらの書類に係る参照書類、有価証券報告書若しくは添付書類又は半期報告書について、内閣総理大臣等から訂正命令(原則として、法第10条(法第24条の2および第24条の5において準用する場合を含む。)又は第23条の10に係る訂正命令)を受けた場合又は内閣総理大臣等又は証券取引等監視委n員会により方第197条若しくは第207条に係る告発が行われた場合、又はこれらの訂正届出書、訂正発行登録書又は訂正報告書を提出した場合であって、その訂正した内容が訂正命令を受ける場合と同等とみなされるものである場合をいうものとする」

同じ文言は東証等の取引所の上場審査基準にはあるのだそうですが、公正慣習規則にはなかったということです。これに該当する会社といえば、やはり例の鉄道会社を考えない訳にはいきません。同社は早期のジャスダック取引所上場を目指しているそうですが、2004年3月期以前の有価証券報告書を訂正していますから、2005年3月期と2005年3月期について「虚偽記載」のない書類を作成しなければ、上場できないことになります。

取引所化にあわせての変更だと思いますが、結果として件の鉄道会社のジャスダック上場は、最短で2006年3月期決算を直前期としてのものになると格好であります。諸井委員会の答申と野村證券・中央青山監査法人の指導を受けて来年度1年かかえて体制を整えて、新体制でさ来年度を見事に運営してみせて再上場申請というのは、綺麗なシナリオに見えます。

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2004/12/06

日本版毒薬

6日付日経新聞スクープ欄「敵対的買収 水面下の防衛戦」から。

「100%子会社などに株式を発行できる新株予約権を与え、その権利の管理を信託銀行に委託する手法。信託契約には「持ち株比率2割超の株主が新たに登場したら買収者を除く株主に大量の株式を付与する」といった内容を盛り込む。こうした方式にすれば、新株付与が機動的にできるという。」

子会社を利用するのは、UFJホールディングの子会社であるUFJ銀行に種類株を発行させたケースと同じ発想ですね。問題はUFJのように経営統合で基本合意している相手がいない会社は誰に引き受けさせるかでした。日経新聞で紹介されている信託を使用するというのは1つの方法ですが、経営陣の自己保身ではないか、という懸念の解消にはならないのではないでしょうか。

「防衛策の推進論者は、「毒薬は企業の価値を守り、買収されるにしてもより高い値段で買ってもらえるから株主の利益になる」と主張している。」

公開買付という方法で攻めてこられると、時間的な問題もあり、取締役会が「株主の利益」を十分に検討することができないのではないか、という懸念は理解できます。毒薬条項により取締役会にまず最初のアプローチがあるように仕向ける効果が期待できる訳です。

しかし、経営者の判断に寛容な日本の市場風土(並びに司法判断)や発祥の地である米国でも廃止するケースが出ていることを考慮すると、日本でポイズンピルをやるのはどうかな、というのが正直な感想であります。

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2004/12/02

オーナー一族の会社を連結子会社に

2日付日経新聞「シダックス、シダックスC&Vを連結子会社に」から。

「シダックスは1日、病院や企業の売店などを受託運営するシダックスシーアンドブイ(東京、志太正次郎社長)の株式を7億9500万円で22%取得し、連結子会社にすると発表した。役員も派遣する。シーアンドブイはシダックスの創業者一族が株式を保有し、経営していたが、これまでシダックスの連結対象会社ではなかった。シーアンドブイの2004年3月期は売上高が123億円、経常損益は700万円の赤字。」

プレスリリースはこちら(pdfファイルです)です。それによると、過去に株式交換によりシダックスが100%子会社化する予定であったのですが、取りやめとなった経緯があるようです。

ここで注目なのは、シダックスC&Vはシダックスの株式を保有している(0.3%)こと、同社の主要株主(24.0%)にシダックスの主要株主(13.4%)でもあるエスアンドエイ株式会社が登場していることです。シダックスはジャスダック銘柄ですから、エスアンドエイはシダックスの親会社等には該当していないかもしれません。

ただし、東証上場時には、親会社等に該当すると判断される可能性があります。平成15年6月以降は、親会社等に該当する場合、財産保全会社であっても、財務内容や重要事実の開示が求められています。財産保全会社の特例は、会計監査が上場直前期1期のみで良いことであり、開示義務は免れません(東証『新規上場の手引き(第1部・第2部編)』P100参照)。

ジャスダックも取引所化する訳ですし、西武鉄道グループ・コクドや日本テレビ・読売新聞の件もあり、ルールが厳格化する可能性はあります。それらのルールへの対応とみるのは、シダックスの100%子会社とする訳ではないこともあり、うがちすぎだと思いますが、こういう動きがオーナー企業と呼ばれる上場会社に起きてくるのかもしれません。

ちなみにですが、なんでシダックスの100%子会社にしないのでしょうね?それが一番すっきりすると思うのですが。

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2004/11/30

「武井帝国」って

nikkeibp「有罪でも続く「武井帝国」、武富士に未来はあるか」から。

「売却を信じるわけにはいかない。信託設定しても、売却できないケースがある」(津田武寛・日興シティグループ証券株式調査部ディレクター)

事実として売却できないケースがあるのおはその通りですが、「信じるわけにはいかない」というのも、敵意むきだしのあんまりなコメントですね。

「そもそも、武井被告の持ち株比率が4分の1に低下しても、今の株式処理スキームでは「武井支配」の構図が崩れるわけではない。多方面に分散して売却したことで、武井被告が大株主の地位を守っているからだ。そして、社員研修所を兼ねる東京・高井戸の豪邸「真正館」に住み続けている。しかも、二男の健晃氏が代表権を持ち、実動部隊である営業部門を統括している。一方で、改革のために松井証券から招いた元久存社長は、存在感が薄くなっているとささやかれる。
いまだ続く武井帝国。だが、分散売却というスキームは、一時的な武井支配を可能にしたが、その継続を保証するものではない。それどころか、波乱の火種を残した。武井被告の持ち株比率が下がり、敵対的買収をかけられる危険が高まっているのだ。営業力が衰えたとはいえ、武富士は今後も年間1000億円超の営業利益を生み出すと見られる。連結利益剰余金も8600億円に上る。一方、株価低迷によって時価総額は9000億円程度に落ち込んでいる。この状態を外資系金融機関や投資ファンドが黙って見過ごすはずがない。
それに対して、武井被告が取り得る防御策には限界がある。貸金業規制法によって、執行猶予の4年間と、その後の5年間は25%を超える株式保有を許されない。つまり、今後9年間、株を今以上に買い増すことができず、買収を受けやすい状態が続く。
王位の禅譲という穏便な結末を嫌った武井被告。だが、それは武富士騒動第二幕の始まりを予感させる。今後、武富士株を巡る壮絶な戦いが繰り広げられるかもしれない。」

筆者である金田氏が、武富士が自己株式取得により連結剰余金を使うと同時に、処分信託の実効性を高めるというシナリオを無視しているのはなぜなのだろうと思います。もちろん、自己株式取得の結果、議決権ベースで武井氏一族の比率が25%を超えたりすると金融庁がどう反応するのか、という論点が浮上する訳ではあります。

それはそれとして、武富士に敵対的買収がかかる可能性は否定できません。こちらで取り上げているように、GSがSPCを立ち上げているであれば、むしろその可能性は高いといえます。それに、武富士経営陣がどう対応するのでしょうか。

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