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2010年11月

2010/11/12

ブックレビュー『同族経営はなぜ3代でつぶれるのか』

@FamilyBiz_Takei こと武井一喜さん著「同族経営はなぜ3代でつぶれるのか?」読了。自らが4代目社長であったファミリービジネスを整理した経験をお持ちで、現在はファミリービジネスに係るコンサルタントをしておられる筆者が、ファミリービジネスが3代で潰れない為にファミリーメンバーが考えるべきことを網羅的に解説された書籍です。

日本においては、ファミリービジネスは同族企業と訳され、余り良いイメージはありませんでした。ダイエー、三洋電機、赤福等の世間の耳目を集める事件は、「同族経営故の」と評されます。法人税法においても、「特殊同族会社の留保金課税」や「同族会社の行為計算否認」という具合に、同族会社は税逃れをするものと捕らえられています。実務の世界でも、同族会社向けのコンサルといえば、まずは相続税対策が提供されてきた経緯があります。

しかし、一方で戦後の日本の税制は同族会社が事業を継続するには酷過ぎたのも事実であり、相続税率の引き下げ(それでも高すぎる最高税率50%)や基礎控除の拡充によって整備された基盤の上に、平成21年度税制改正において事業承継税制が(使えないという批判はありながらも)導入されています。民主党政権が主税局の尻馬に乗って相続税の増税に向かうのは時代錯誤であり、自らもビジネスオーナーファミリーご出身である岡田幹事長が体を張って阻止して頂きたいと、個人的に勝手に希望しています。

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2010/11/11

ブックレビュー:Wise Growth Strategies in Leading Family Business

Joachim Schwass, Wise Growth Strategies in Leading Family Businesses, palgrave macmillan 読了。会社の同僚の推薦です。著者はIMDで Family Business の教授で、IMDが1996年から2004年にかけて Distinguished Family Award で表彰した会社について、どの様に経営者の世代交代、つまり事業承継に成功裏に取り組んできたかを研究した成果物です。

海外の事例にもとづいていますから、日本に直接当てはまる保証はないとはいえ、理論的な説明には説得力があります。この本で著者が提唱しているのは、次のマトリックスです。

phase / interests Family Ownership Management Individual
Do Child-parent relationship Control dependent Professional assertion Personal leadership
Lead-to-do Adult-adult relationship Control struggle Leadership assertion Organizational leadership
Let do Parent-child relationship Control versus vision Governance assertion Institutional leadership

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2010/11/10

ブックレビュー『起業のファイナンス ベンチャーにとって一番大切なこと』

@isologue こと磯崎哲也先生の『起業のファイナンス ベンチャーにとって一番大切なこと 』を拝読致しました。いや、発売早々に買ったし、先生のご講演を拝聴もしていたんですが、諸事情により本を読み終わったのが今になってしまいました。内容は既にレビューがたくさん出ているので、詳しくは紹介しませんが、感想をいくつか。

  • エンジェルやVCからの資金調達が必要な事業を考えている起業家が、ファイナンスで落とし穴に落ちない為には必読であることは間違いないと思います。むしろ、起業家がそれを今まで知らなかったことについては、関係者の一端にいる人間としては反省しなければいけないと思います。最近は上場前のVBに関与する例は殆どないのですが、考えなければいけないなと。
  • この本、増刷を続けている様ですが、それだけ注目を集めているのは、著者の人徳もさることながら、日本においてもVB周辺の温度が沸点に近づいているのではないかと感じます。過去数度のベンチャーブームを経て、漸く定着するかもしれないと期待しております。
  • しかし、問題なのは日本の株式市場の低迷です。筆者もIPO市場の低迷は認識されていて、バイアウトが増えないといけないと考えておられるようです。ただし、株式市場が低迷している状況では、株式交換等でバイアウトした場合の起業家側のリターンが期待できませんし、キャッシュでやろうにも市場がネガティブにしか反応しないのではいかんともしがたいかと。Googleに見初められるようなビジネスモデルでもない限り、バイアウトもしんどくないかなと。著者の昨年来の主張である預金税(個人的には、預金者から見ると預金保険料との2重負担になってしまう気がしますが、そういうことはマイナーイシューとしておいておくぐらいの思い切りが必要な時期かも)の導入により、資本市場にニューマネーが入ると違うのかもしれません。

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