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2010/07/07

年金保険に関する最高裁判決

昨日の最高裁判決はWEBで判決文が公開されています。それを読まれた立教大学の浅妻先生(@asatsuma)がtwitterで「国の全面敗訴ではなく、5割程度は国が勝っている」と分析されています。早速読んでみました。

なお、本ブログは読者の方に法務・税務・会計・財務等に関するアドバイスを提供することを意図したものではありません。内容の無謬性について一切責任を負うものでもありません。法務・税務・会計・財務等に係る事項は、常に読者の方がご自身のアドバイザーとご相談の上で、ご自身の責任においてご判断下さい。

要約すると、相続税法24条により評価され、相続財産に含まれた金額までは所得税は非課税とするべき、という判示ですね。相続財産に含まれた金額については、所得税を課さないというのは、(現在の税理論上は色々とあるのでしょうが)合理的に聞こえます。新聞紙上で言われている通り、預金の経過利子等を相続財産に含めている実務も理論上は否定していますので、厳しい判決であることは間違いありません。

しかし、定期金の相続・贈与時の評価額が払込保険料の総額を下回っている場合の取扱いついて判示しなかったことは、「増税」の余地が出るとも言えないでしょうか?

現在、生命保険契約等に基づく年金の雑所得の金額は、所得税法施行令183条により計算されています。仮に今回の判決が、同条1項2号ロ(「当該生命保険契約等に係る保険料又は掛金の総額」)を「当該生命保険契約等に係る定期金額(相続財産に加算された金額を上限とする)」と変更するものと捕らえると、生命保険契約の内容によっては、年金の受取人が支払う所得税額は増えてしまう可能性があると思いわれます。

雑所得について源泉徴収義務があり、かつ商品のこの種の販売を行った生命保険会社にとっては、財務省主税局の対応が恐ろしく心配な判決が出たことになります。

第百八十三条  生命保険契約等に基づく年金(法第三十五条第三項 (公的年金等の定義)に規定する公的年金等を除く。以下この項において同じ。)の支払を受ける居住者のその支払を受ける年分の当該年金に係る雑所得の金額の計算については、次に定めるところによる。
 当該年金の支払開始の日以後に当該年金の支払の基礎となる生命保険契約等に基づき分配を受ける剰余金又は割戻しを受ける割戻金の額は、その年分の雑所得に係る総収入金額に算入する。
 その年に支払を受ける当該年金の額に、イに掲げる金額のうちにロに掲げる金額の占める割合を乗じて計算した金額は、その年分の雑所得の金額の計算上、必要経費に算入する。
 次に掲げる年金の区分に応じそれぞれ次に掲げる金額
(1) その支払開始の日において支払総額が確定している年金 当該支払総額
(2) その支払開始の日において支払総額が確定していない年金 第八十二条の三第二項(確定給付企業年金の額から控除する金額)の規定に準じて計算した支払総額の見込額
 当該生命保険契約等に係る保険料又は掛金の総額
 当該生命保険契約等が年金のほか一時金を支払う内容のものである場合には、前号ロに掲げる保険料又は掛金の総額は、当該生命保険契約等に係る保険料又は掛金の総額に、同号イ(1)又は(2)に掲げる支払総額又は支払総額の見込額と当該一時金の額との合計額のうちに当該支払総額又は支払総額の見込額の占める割合を乗じて計算した金額とする。
 前二号に規定する割合は、小数点以下二位まで算出し、三位以下を切り上げたところによる。

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