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2009年7月

2009/07/16

淡麗金麦

13日付日経新聞 キリンとサントリー、経営統合へ 持ち株会社統合で交渉 から。

食品最大手のキリンホールディングスと2位のサントリーホールディングスが経営統合の交渉を進めていることが明らかになった。両社持ち株会社の統合案を軸に最終調整、年内の合意を目指す。実現すればビールと清涼飲料で国内首位に浮上。世界でも最大級の酒類・飲料メーカーとなる。統合で国内市場の収益基盤を強化、成長が見込まれる海外市場を共同開拓し、世界的な勝ち残りを目指す。

独禁法チェックも大きな問題でしょうが、旧財閥(三菱)系上場企業と同族経営の非公開企業(規模も知名度も東証一部上場企業のトップクラス並ですが)の経営統合という事例になります。まずは、持株会社傘下に既存の事業会社をそのままぶら下げるという時間稼ぎストラクチャーとなりますが、水と油位に違うとも言われる企業文化の違いをどの様にして乗り越えられるかに注目です。

純資産や売上等の規模から考えて、今回の経営統合が東証の不適切な合併等に該当する、即ちサントリーによるキリンの買収と判断される可能性は小さいと思われます。仮に該当したとしても、継続開示(有価証券報告書提出)会社であるサントリーですから、上場に大きな支障はないと考えるのが普通でしょう。

ただし、サントリーホールディングスの株式の約9割を保有している寿不動産という会社があります。同社はサントリーが株式の過半数を保有する子会社で上場企業であるダイナックの、金商法上の親会社等として、親会社等報告書を提出しています(これもEDINETで見ることができます)。それによりますと、寿不動産の存在が今回の統合に影響を及ぼしそうな感じです。

  • 寿不動産とサントリーとの間には取引(不動産賃貸、損害保険代理店契約)があります。合併比率にもよりますが、上場会社となると思われる統合持株会社の株式の26~50%は保有すると思われますので、その様な筆頭株主(というか、東証上場規則上の親会社等)との取引(関連当事者取引)は、有価証券報告書に開示すれば良いと言い切れるものでしょうか?
  • 寿不動産の株主の多くは、サントリーの創業家である鳥井家(今の社長の姓は佐治ですが、その父でありサントリーの元社長である故佐治敬三氏は、サントリーの創業者鳥井信治郎氏の次男ですから、やはり鳥井家です)の方々です。現在の寿不動産株式の評価においては、財産評価基本通達上の純資産価額方式によったとしても、サントリー株式もまた財産評価基本通達で評価した株価で良い訳ですが、仮にキリンとの統合新会社の株式、つまり上場株式になった場合の評価は市場価格です。キリンと同等の時価総額となると、1兆円の9割に当たる9000億円として評価しなければなりません。それが寿不動産株式の純資産価額方式による評価に使われますので、10%弱を保有する個人筆頭株主の方は500億円超に評価され、凡そその半分の相続税を相続人が負担することになります。そんな資金を調達することは可能なのでしょうか?
    仮にそれを避ける為に、寿不動産とサントリーホールディングスを合併させてから、キリンと統合するとした場合でも、当該合併を税制適格にする為には、寿不動産株主の方々には継続保有要件が課されます。さすがに、相続が発生した場合にまで継続保有を求められることはないでしょうが、そうでもない限り上場株式を保有しているのに現金化できないことになります。それで鳥井家の皆さんは満足なのでしょうか?配当金が入りますし、1人1人は恐らく税法上の少数株主でしょうから、その配当に係る所得税は再来年末までは10%、それ以降でも20%の源泉徴収で終わりにできますから、年度ベースのキャッシュフローは改善するかもしれません。サントリーの配当性向はキリンのそれをはるかに下回っていますので、統合後の配当性向が現在のキリンと同じレベルになると結構美味しい話なのかもしれません。それでも、配当は保証されたものではありませんので、統合後の持株会社株式の価格変動リスクと共に、リスクとして背負うことになりますね。

私は、個人的にはキリンの製品もサントリーの製品も余り口にしない人でして、普段愛飲している製品のメーカーさん達が今回の統合をきっかけにドロップアウトしないで頂きたいなぁと願っております。

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2009/07/08

優先株式

伊藤園さんといえば、お茶系飲料ですが、M&Aによりタリーズコーヒーの親会社だったりもします。資本政策的な観点からは、優先株式の発行・上場にチャレンジされたことで記憶に残る存在であります。

その伊藤園さんの大株主であるグリーンコア株式会社から7月3日付で大量保有報告書の変更報告書が提出されています。実は、伊藤園さんのように普通株式と優先株式を発行されている会社の大量保有報告書ってどうなるのかなと思っていまして、ここでようやく拝見することができましたので、備忘録的に。

  1. 大量保有報告書の書き方ですが、「法第27条の23第3項本文」列の「株券又は投資証券等」行に、普通株と優先株の合計を記載し、株券等保有割合も同様に普通株と優先株の合計で計算しています。大量保有報告書は持株比率ベースでの提出ですので、これで納得です。ちなみに、内訳は「取得資金の内訳」の「その他金額の内訳」を見ないと判りません。株式の無償株主割当ということですね。
  2. 今回の変更報告書の提出原因の1つは「保有割合が1%以上減少したこと」です。グリーンコア株式会社は普通株式と優先株式の両方を保有していますので、どちらを譲渡したでしょうか。変更報告書には、6月26日に「普通株式2,000,000株を市場外で1,260円」で処分した旨記載されています。当日の普通株の終値は1,373円、優先株の終値は833円です。普通株を約8.3%のディスカウントでブロックトレードで処分したと思われます。
    なぜ普通株を処分したのでしょうか。グリーンコアは創業家である本庄家の資産管理会社ですし、今年は本庄家の次世代が伊藤園の社長に就任したばかりですから、議決権の減少を避けて優先株を処分する選択肢もあったはずです。考えられる理由は3つ。第1に、優先株の取引相手(買い手)がいなかったか、あるいは価格で折り合いがつかなかった。ブロックトレードの相手は機関投資家ですから、優先株の保有が認められていなかったり、価格が折り合わなかった可能性は極めて高いと思います。第2に、議決権よりも配当金を優先した。優先株には優先配当がありますから、議決権1%強の減少が経営に与える影響は少ないと判断して、グリーンコアとしての受取配当金を確保したのかもしれません。実際、優先株だけで約25億円(税前)を調達しようとすると、結構な株数を売却することになりますから、配当金という観点からも好ましくはなかったのかもしれません。それは、ブロックトレードの相手方も同じですから、後付かもしれませんが。第3の理由は税務です。伊藤園さんの説明によると、優先株の取得価額はゼロですから、優先株を譲渡した場合の譲渡益が高いのを避けたのかもしれません。しかし、大量保有報告書に記載されているグリーンコアの株式取得資金をグリーンコアが保有する普通株式数で割ると、取得価額は218円であり、1260円で売却した場合の譲渡益は1042円と、1株当たりの譲渡益は普通株の方が高いことになります。となると、優先株の処分では資金の調達ができなかったことになります。株価の差も広がっていますし、優先株の発行は、今のところ、マイナスに出ていると思われます。

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