書評:企業価値最大化の財務戦略
知人から紹介された本ですが、柳良平「企業価値最大化の財務戦略」読了。
著者略歴によりますと、都市銀行を振り出しに、上場企業のIRおよび財務部長を経て、現在は外資系金融機関でIRアドバイザリーに従事されている方だそうです。ググるとある程度のことは判りますが、勤務されていた大手メーカーさんはIR姿勢の良い会社として有名でありますね。その方が、現在は外資で発行体企業に対してIRアドバイザリーを提供され、かつこのような書籍を上程されている訳ですから、貴重な存在だと思われます。
本書の内容も財務理論が、投資家側ではなく、発行体企業サイドでどのように利用されるべきかということを、実務経験をもとに解説されていますので、貴重な書籍であるといえます。文章のそこかしこに、機関投資家寄りのニュアンスが滲み出ています(投資家の利害とステークホルダーの利害は必ず一致する等)が、現代財務理論的には正当な主張ですし、各方面へのご配慮もある訳でしょうから、ご愛嬌の範囲内でしょう。
突っ込みどころとしては、理論の適用を厳密にすればする程実務が回らなくなるのではないか、という疑問にもう少し答えて頂きたかったかなと思います。つまり、理論的な企業価値は、前提条件を1ついじると大きく変わることがままある訳で、例えば毎月DEBTの調達金利を市場実勢に即して変えて理論的企業価値を計算していたら、昨今のような債券市場においては、その差に右往左往させられるリスクがあるといえます。そこをどのように「割り切って」考えて、実務を行っておられたのかなと思います。
今回は導入編でしょうから、次回作に期待したいと思います。その場合、例えば、大株主との経営権を巡る小競り合いの過程で、会社側提案がまたしても否決されたアデランスが、どのようなIRを行えば、スティール以外の株主の賛同を得られたかの考察等もお願いしたいところです。
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