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2009年2月

2009/02/11

書評:ファミリーオフィス

野村證券ファミリーオフィス研究会訳『ファミリーオフィス―富裕層向け財産管理の新潮流』は、米国でファミリーオフィスに対してなされた調査結果をまとめた書籍を翻訳したものです。米国のファミリーオフィスはどのようなことをしているのかを知りたい層に向けた本といえます。

ファミリーオフィスが富裕層に提供しているサービスは、およそ、富裕層が求めているもの全てに及ぶようです。メインはファミリーの資産運用ですが、それ以外にもコンシェルジュ的なことであったり、タックスプラニングであったりを、専門家と協力しながらやっている、もしくはこれから手がける(やらされる?)予定というアンケート結果ですね。それはそれでそんなもんかいなということです。

ふうんと思ったのは、ファミリーオフィスに3種類あるとしていることです。3種類とは、シングルファミリーオフィス、マルチファミリーオフィス、そしてコマーシャルファミリーオフィスです。

シングルファミリーオフィスというのは、1つのファミリーのみにサービスを提供するファミリーオフィスのことで、超々富裕層ファミリー(ロックフェラーとか)でないと、とても費用をまかなえないということです。

マルチファミリーオフィスというのは、中核となるファミリーの他に、その知り合いのファミリー等をサービス提供の対象としているファミリーオフィスです。1つのファミリーでは費用をまかなえなかったり、高度な運用商品を提供してもらうには運用資産の額が足りない場合には、より多くのファミリーの資産を集めてみようという発想ですね。欧米には専門の会社があるそうですから、ある意味ではサービス業として成立するのでしょう。問題は、資金的な貢献が少ないファミリーと多いファミリーをどう差別的に取り扱えるかという運用の難しさのようです。

コマーシャルファミリーオフィスというのは、個人向けの金融商品を提供しているプライベートバンクのことです。当然、良い顧客には個別対応で色々なニーズに答えてくれますので、ファミリーオフィスとみなすことができるようですが、要は金融機関のプライベートバンキング部門の顧客になることです。大手の金融機関ともなると、ノウハウの蓄積により、ある程度の質のサービスは期待できます。シングルファミリーオフィスとなると、ファミリーオフィサーの交替により、サービスの質が大きく変わる可能性がありますからね。

ファミリーオフィサーの給与水準も高いようですし、欧米ではすっかり確立されたサービスなんだなと実感いたしました。日本のことについては、稿を改めて考えたいと思っています。

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2009/02/10

公益法人の経営

磯崎哲也事務所さん 「漢検」で思った、公益法人の利益についての素朴な疑問から。

公益法人を取り巻く環境がいつも安定してたり、資金に困ったときは必ず寄付が集まるというなら問題ないですが、そんなはずあるわけないわけで、「ゴーイングコンサーン」として活動し、活動規模を大きくしていくためには、それなりの資金を保持し、拡大していく必要があるはずです。

詳しい事情は私も判りませんが、今回の漢字検定の場合は、公益事業そのもので利益が盛大に積み上がったのが問題なんだと思っていました。つまり、検定料収入>>費用という状態を、理事会が放置したのだと。だったら、営利法人がやる途もあるだろうと。

確かに、非営利法人が活動を続けていく為の基盤の充実は大事だとは思います。しかし、それは公益事業から生じた剰余金ではなく、基金や基本財産あるいは運用財産およびその運用体制を充実させることでなされるべきではないかなと思います。

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