アドバイザーの責任
毎日.jp「 損害:M&A算定で神戸の元会社社長ら 三井住友銀提訴へ」から。.
M&A(企業の合併・買収)で会社を売却する際、価格算定が不適当だったため不当に低い価格で売るはめになったとして、神戸市の元会社社長の男性(60)ら元株主15人が、売却を仲介した三井住友銀行(本店・東京都)に、約1億4700万円の損害賠償を求める訴訟を近く大阪地裁に起こす。過去に工場を移転した際、新工場の帳簿上の価格(簿価)を時価より低く設定したが、転売時には時価が適用されることを見過ごしたと指摘している。M&Aを巡り仲介の銀行の責任が問われるケースは珍しい。
関与者の方々は長く辛い時間を過ごすことになりそうですね。
非上場会社のM&Aですから、担当者の方は、過去2~3期分の財務諸表(場合によっては税務申告書や勘定科目明細をお出しいただけることもあります)で話を始めたのではないでしょうか。そうなれば、最初に提示できるのは、簿価純資産と類似業種批准方式もどきと類似会社方式程度でしょう。そこから、売り手さんの思いを反映させて、売却希望価格を検討していくことになります。
その中で、「この土地の価値はこんなもんじゃない」とかの話が出てくれば、圧縮記帳についても気が付いたと思います。圧縮記帳について正確に理解している銀行員は少ない(私も理解できていません)と思いますので、売り手側アドバイザーとしては色々と考えて、お話を進めることになります。機械や設備の時価など同様で、売り手さんなりに考えて頂かなければなりません。
仮に、圧縮記帳の件が判るケースがあるとすれば、銀行とその工場を担保にとっていて、売り手の承認の上でですが、取引部店の融資資料にある評価額を見る場合でしょうか。そこらへんは個別事情です。
もちろん、路線価や固定資産税評価額をチェックすることは可能です。それは、売り手さんに追加で資料をお願いすることになります。そこまでやるかどうかは、関係者の話し合いです。
私ももうM&Aの実務に携わってはいませんが、ご相談が来ることはあります。売却希望価格の決定については、丁寧にするべきだなと改めて思ったのでした。
追記
- 日本独特の慣行ともいわれる、「仲介」(売り手と買い手の両方から手数料をとるやり方です)であったのであれば、話がこじれるた場合の心証は悪くなります。仲介者は公正な第三者として振舞うことが求められますが、並の人間ではかなり難しい技が必要ですから、どこかで当事者に不満を抱かせると、全てにおいてこじれてしまいます。売り手と買い手でアドバイザーを分けるのが自然なんでしょうねぇ。メガバンクさんになると、両方とも顧客ですから大変です。
- 今回の発端は事後の監査法人の指摘だそうです。どこでどう監査法人が売り手さんと繋がったのでしょうか。買い手さんの監査法人さんがパーチェス法の仕訳でマイナスのれんが生じる等とやり取りしている一環で繋がったのでしょうか。それとも、何か違う理由だったのでしょうか。そこにも興味があったりします。
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