中小企業経営承継円滑化法施行規則案
経済産業省が「中小企業における経営のh総計の円滑化に関する法律」の施行規則案をパブリックコメントに付しています。ざっと目を通す時間ができましたので、備忘録です。
- 1条10項(「特別子会社」)
「会社並びにその代表者及び当該代表者に係る同族関係者が他の会社の総株主等議決権の100分の五十を超える議決権を有する場合における当該他の会社をいう」とありますので、資産管理会社Aが事業会社Bについて直接保有する議決権が過半数を切っていても、その代表者一族でB社の議決権の過半数を保有していれば、B社はA社の特別子会社ということになります。 - 6条1項7号ロ(「資産保有型会社」)、ハ(「資産運用型会社」)
ここでは、中小企業であっても、この承継円滑化法による認定の対象外となる「資産保有型会社」および「資産運用型会社」が定義されています。その定義の為に必要な、「特定資産」と「特別特定資産」も定義されています。
「特定資産」とは、金融商品取引法2条1項に規定する有価証券及び持分および「特別特定資産」の指します。有価証券及び持分から、特別子会社の分は除かれますが、特別子会社が資産保有型会社もしくは資産運用型会社である場合は除くことは出来ません。つまり、製造業や卸売業等の事業をしている特別子会社の株式は特定資産にはならないということですね。
「特別特定資産」とは、自ら使用していない不動産、事業用ではないゴルフ会員権や絵画等、および現預金です。現預金には、代表者およびその同族関係者あての貸付金及び未収金が含まれます。
「資産保有型会社」は直近の事業年度末における資産の価額の総額に占める特定資産の価額の合計額の割合が百分の七十以上である会社、「資産運用型会社」は直近の事業年度における総収入金額に占める特定資産の運用収入の合計額の割合が百分の七十五以上である会社のことです。つまり、不動産賃貸業を営む会社は承継円滑化法の認定対象外と思われます。 - 6条1項7号へ(特別子会社に関する例外)
特別子会社が、上場会社等、大法人等又は風俗営業会社に該当しないこと、とされていますので、上場企業のオーナー一族の資産管理会社は、本法の適用対象外となります。 - 6条2項(資産保有型会社および資産運用型会社の特例)
6条1項7号に該当しても、資産保有型会社あるいは資産運用型会社にあたらない条件が規定されています。商品販売、(不動産や金銭以外の)賃貸、サービス提供、広告代理店等の事業を3年以上継続し、店舗等の固定施設を保有するか賃借し、従業員が5名以上いる場合となります。6条1項7号の機械的な判定基準から、どのような会社を救済しようとしているのかはよく判りません。製造業を営む特別子会社を持つ会社(資産は特別子会社株式、不動産および機械)が、その特別子会社に不動産に加えて、一部取引について販売代理店となっている場合は、認定の可能性があるということなのでしょうか? - 9条(認定の取消)
後継者が形式的にも実質的にも後継者とはいえなくなった場合はいたしかたないと思いますが、2項17号に「当該特別認定中小企業者が会社法台47条第1項又は626条第1項の規定により資本金の額を減少したこと(同法台309条第2項第9号イ及びロに該当する場合を除く。)。」とありますので、欠損の填補以外での減資ができないことになります。何故この条文が入ったのでしょうね。 - 10条(合併があった場合の認定の承継)
一部実務家が気にしていたことですが、認定を受けた企業が吸収合併等により消滅した場合について規定されています。実質的に認定企業が存続企業として認められるような合併でなければ、認定は承継できないようです。譲渡したのと同じなのに、認定が承継するのはおかしいということなのでしょう。それと存続企業が、大法人等や6条1項7号の基準での資産保有型会社または資産運用型会社である場合も承継は不可とされています。ここにおいては、6条2項の例外は認められない点も、仮に合併する場合には要注意でしょうね。 - 11条(株式交換などがあった場合の認定の承継)
株式交換等により、別企業の完全子会社になった場合の規定です。これもざっくりといえば、株式交換等のあとに現行の企業結合会計に従って連結計算書類を作成すると仮定した場合に、認定企業が連結親会社となるような株式交換等でなければ、認定は承継されないということになります。10条と同じく、完全親法人についての縛りがありますので、仮に株式交換などを計画する場合は注意が必要でしょう。どちらも、趣旨は認定を受けたら株式を死ぬまで譲渡できない規定の潜脱行為を防止することを意図しているとは思います。しかし、このご時勢に、余りに縛りすぎではないかと思ったりもします。悪意の脱税だって10年で時効なのですが。
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