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2008/07/23

書評『新時代の相続税対策の徹底検証』

奥村眞悟著『新時代の相続税対策の徹底検証 改訂新版―あなたの相続税対策には危険がいっぱい!?』読了。

新信託法とその税務についての精力的に著作を発表されている奥村税理士の、相続対策一般に関する書籍です。信託に係っていらっしゃるからか、不動産関連の税制や相続対策には一家言お持ちでいらっしゃいますし、養子縁組のリスクについてのご説明も含めて、極めて適格に問題点が指摘されています。

一方で、非上場株式の相続税ベースの評価の実務については、若干誤解を招くような記述が見受けられたのが残念であります。

  1. 92~97ページの事例
    会社分割による相続対策の事例です。(高収益事業を分社型分割により完全子会社B社として分割した)A社が分割後も引続き財産評価基本通達上の大会社に該当すると仮定されていますが、その場合B社株式(相続税評価ベース)がA社の総資産(相続税評価ベース)の25%を超えるようにみえますので、株式保有特定会社(純資産価額方式により評価)となる可能性があると思われます。しかし、本書ではA社株式を類似業種批准方式で評価されています。
  2. 119~122ページの事例
    株式移転によりA社の完全親会社であるC社を設立する事例です。この事例では、適格株式移転によりC社はA社株式(相続税評価10億1千万円)を1億円で受け入れています。本書の解説では、C社株式の純資産価額方式による評価において、10億1千万円と1億円の差額9億1千万円について42%を控除されていますが、財産評価基本通達186-2(2)による「株式移転により著しく低い価額で受け入れた株式」、すなわち9億1千万については42%を控除できない可能性があるのではないでしょうか。その点についての記載は見受けられないようです。

もちろん、私は税理士ではありませんので、奥村先生のご説明が「間違っている」と断言はできませんし、ましてや本書を読む価値がなかったとは思っていません。本書の前半で取り上げらている信託の活用については、税メリットはないものの、それ以外のメリット・デメリットを真剣に検討するべきだと考えます。奥村先生のようにご造詣の深い方のご活躍を期待すればこそのコメントであります。念の為。

(ご参考)財産評価基本通達 186-2 

185≪純資産価額≫の「評価差額に対する法人税額等に相当する金額」は、次の(1)の金額から(2)の金額を控除した残額がある場合におけるその残額に42%(清算所得に対する法人税、事業税、道府県民税及び市町村民税の税率の合計に相当する割合)を乗じて計算した金額とする。(昭47直資3-16追加、昭49直資5-14・昭56直評18・昭58直評5外・昭59直評5外・昭62直評11外・平元直評7外・平2直評4外・平6課評2-8外・平10課評2-5外・平11課評2-12外・平12課評2-4外・平18課評2-27外改正)

(1) 課税時期における各資産をこの通達に定めるところにより評価した価額の合計額(以下この項において「課税時期における相続税評価額による総資産価額」という。)から課税時期における各負債の金額の合計額を控除した金額

(2) 課税時期における相続税評価額による総資産価額の計算の基とした各資産の帳簿価額の合計額(当該各資産の中に、現物出資若しくは合併により著しく低い価額で受け入れた資産又は会社法第2条第31号の規定による株式交換(以下この項において「株式交換」という。)若しくは会社法第2条第32号の規定による株式移転(以下この項において「株式移転」という。)により著しく低い価額で受け入れた株式(以下この項において、これらの資産又は株式を「現物出資等受入れ資産」という。)がある場合には、当該各資産の帳簿価額の合計額に、現物出資、合併、株式交換又は株式移転の時において当該現物出資等受入れ資産をこの通達に定めるところにより評価した価額から当該現物出資等受入れ資産の帳簿価額を控除した金額(以下この項において「現物出資等受入れ差額」という。)を加算した価額)から課税時期における各負債の金額の合計額を控除した金額

(注)

1 現物出資等受入れ資産が合併により著しく低い価額で受け入れた資産(以下(注)1において「合併受入れ資産」という。)である場合において、上記(2)の「この通達に定めるところにより評価した価額」は、当該価額が合併受入れ資産に係る被合併会社の帳簿価額を超えるときには、当該帳簿価額とする。

2 上記(2)の「現物出資等受入れ差額」は、現物出資、合併、株式交換又は株式移転の時において現物出資等受入れ資産をこの通達に定めるところにより評価した価額が課税時期において当該現物出資等受入れ資産をこの通達に定めるところにより評価した価額を上回る場合には、課税時期において当該現物出資等受入れ資産をこの通達に定めるところにより評価した価額から当該現物出資等受入れ資産の帳簿価額を控除した金額とする。

3 上記(2)のかっこ書における「現物出資等受入れ差額」の加算は、課税時期における相続税評価額による総資産価額に占める現物出資等受入れ資産の価額(課税時期においてこの通達に定めるところにより評価した価額)の合計額の割合が20%以下である場合には、適用しない。

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