信託で財産継承
前回取り上げたファミリーウェルス:三代でつぶさないファミリー経営学 改訂版―ファミリーの財産を守るために (g.n.n.叢書)ですが、「保有しないで管理する(そしてIRSも手出しできない)」箱として、信託が取り上げられています。日本においては、括弧がきの部分が平成19年度税制改正で完全無欠なまでに否定されていますので、成年後見の代替手段になりうるといったお考えをお持ちの方もいらっしゃいますが、資産税(相続税・贈与税のことです)の分野では余りご関心が高くないのかなぁと思っています。
で、つらつら考えたのですが、以下のような信託は税務上どうなるんだろうなぁと。こうなると、特定の方向けの質問になってしまいますが(^^;、まだ私の駄文に目を通して頂いているかなぁ(笑)。
なお、念の為ですが、本ブログ記載事項は、筆者の単なる思い付きであり、その正確性について一切保証するものではありませんし、法務・税務・財務上のアドバイスを意図したものではありません。筆者は読者の方に法務・税務・財務についてアドバイスを提供する立場にはありません。法務・税務・財務に係るアドバイスは、それぞれの分野における専門家にご自身の責任でご依頼下さい。
信託:甲の推定相続人は、配偶者乙と孫丙(4才)とします。甲が設定した信託は、現金5億円で設定された後に、一定の割合で各種の金融資産に投資されます。その収益から、乙の生存中は月100万円を、丙は満27才に達するまでの23年間月50万円を分配されます(乙の死亡により、丙への分配額は増加しないこととします)。丙の満23才もしくは、設定来35年のどちらか短い期限で信託は終了し、残余財産は国・地方公共団体もしくはそれと同等と認められる公益法人に寄付することとします。
処理例1:明確な信託受益権者は乙と丙なので、乙と丙が一定の割合で10億円を贈与されたものとして、贈与税を支払う。
- 疑問1:10億円をどのような比率で乙と丙に割り振るのか?
- 疑問2:「国・地方公共団体もしくはそれと同等と認められる公益法人」は本当に受益者として認めらるべきではないのか?
- 疑問3:仮に、残余財産について、甲が生存していれば甲に、甲が死亡していた場合には「国・地方公共団体もしくはそれと同等と認められる公益法人に寄付すること」となっていたらどうなるのか?
処理例2:乙と丙の収益受益権を定期金(乙は180百万円、丙はざっくりですが55.2百万円)として評価し、それぞれに贈与税を支払う。5億円から定期金部分を差し引いた残余部分(264.8百万円)については、贈与税等は課税されない。
- 疑問1:仮に定期金部分にインフレ率を勘案しようとしたらどう評価するべきか。
- 疑問2:残余部分が課税されない根拠は何か(相続税法66条類推か?)。相続財産を不当に減じていないという証拠はどこに求められるのか。
- 疑問3:信託する財産が不動産等の場合、みなし譲渡所得が発生するのではないか。その場合、処理例1疑問3のようにすることでみなし譲渡所得の回避は可能か。
あ、こんな信託する奴はいない、という疑問もありますね。孫も社会人になってある程度したら、自立しなさいということで...(^^;
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コメント
KRPさん こんにちわ 信託大好きおばちゃんです。
KRPさんは日光けっこーのようですが、おばちゃんは明日、また、大好きな草津温泉に日帰りで行きます。
処理例1について
処理例1:明確な信託受益権者は乙と丙なので、乙と丙が一定の割合で10億円を贈与されたものとして、贈与税を支払う。
疑問1:10億円をどのような比率で乙と丙に割り振るのか?
これをどうやって計算すればいいのか、それがいちばんの問題
それから、公益法人は、残余財産受益者か帰属権利者かで全然違う。
信託の税制の基本は、受益権は、受益者がみんな持っている。複数だったら複数でシェア
公益法人が残余財産受益者だったら、受益者は基本的には3人、帰属権利者だったら2人で、信託設定時にシェアする。
問2:「国・地方公共団体もしくはそれと同等と認められる公益法人」は本当に受益者として認めらるべきではないのか?
公益法人等が受益者とする信託の設定が可能かという問題はあります。
ただ、宗教法人を受益者とする永代供養信託というのは、すでにあるようです。
疑問3:仮に、残余財産について、甲が生存していれば甲に、甲が死亡していた場合には「国・地方公共団体もしくはそれと同等と認められる公益法人に寄付すること」となっていたらどうなるのか?
甲がみなし受益者に該当するかどうかで答えがかわると思います。みなし受益者 つまり、信託の変更権があり、かつ、残余財産を受けるのなら、 受益者は3人になるから、
乙、丙は 疑問1より少ない利益を受けたとして贈与税
甲は自分が自分に贈与することはないから課税されない。
甲が死んだ時点で、信託がおわらないなら、その時点での課税関係が微妙だなあ。この時点で、信託が終了したなら、公益法人に寄付があったものとして処理されるけど、信託が終了せず、この時点で、帰属権利者が公益法人になるけど、みなし受益者にならないのだったら、甲の死亡時点の受益者は乙、丙だけだから、彼らにいったん残余財産部分の遺贈があったものとして、信託終了時に乙、丙から公益法人に寄付があったものとするものとも考えられます。
甲がみなし受益者に該当しないのなら処理1のようになるのでは
あんまり深く考えていないので間違っているかもしれません。取り扱い注意!
投稿: 信託大好きおばちゃん | 2008/04/28 21:35
信託大好きおばちゃんさん、思いつきのスキームにもかかわらず、詳細なコメントありがとうございます。思うに、日本国の相続税制って、とことん取ってやろうという強い意図を感じます。相続財産に担税力を求めるのは、所得税との2重課税と思うのですが...。
ま、私が死んでも基礎控除の範囲内ですから、関係ないんですけどね(笑)。
投稿: krp | 2008/04/30 11:12
KRPさん
こんにちわ 信託大好きおばちゃんです。
日本国というところが し・ぶ・いですね。
P.S 昨日、草津温泉に行って来ました。天気もよく
露天風呂は最高でしたね。そのあとのビールのうまさったら
ではまた。
投稿: 信託大好きおばちゃん | 2008/04/30 12:54