事業承継は「相続」か「売買」か
磯崎哲也事務所さん事業承継税制の「拡充」 (その2)から。
私は基本的には、相続税を優遇するよりも、上場なりバイアウトなりLBOなり「売買」で解決できるような社会にしていくべきだという方向で考えているのですが、そういったスキーム構築のサポートや税務アドバイス、ファイナンス等を受けられない企業も非常に多いと考えられ、なかなかスパッとした解決策は難しそうです。
私の印象では、日本人は「相続」を重視してきたが、最近は「売買」もようやく重要な選択肢として認識されるようになったと思います。もっとも、非上場会社の場合は、事業承継型MBOといわれる、後継者である子息がLBOにより親の持つ株式を取得する事例もあるといわれていますので、必ずしも「売買」と「相続」が相反する訳ではないのでしょう。また、創業者がいなくなれば存続が危うい中小企業は、子息がはなから承継に興味がない事例も見聞致しておりますので、廃業はなくならないのではないかと推測いたします。
さて、今回の事業承継税制ですが、私は主要なターゲットは、自動車部品メーカーではないかと思っています。日本の自動車産業を支えている主要因の1つが優秀な部品メーカーであることは間違いないと思いますが、上場・非上場を問わずそれらの企業は自動車メーカーの成長と共に成長しています(利益は成長しても資本金は増えないので、今回の法律の対象である中小企業にはなります)。加えて言うと、持株比率がそれほど高くはありませんが、完成品メーカーの安定株主でもあります。
それらの企業、特にオーナー企業である非上場企業が事業承継に失敗すると、完成品メーカーの事業にも影響を与える為、日本の産業界における大きな課題ではないかと個人的に考えています。それらの企業の持っている技術というのは、金属やプラスチックの加工に関する継続的な「カイゼン」の賜物である場合が多く、地味というか法的な保護が困難なものというのが私の認識です。それらの企業を継承しようという創業家の次世代が相続で頭を悩ませたり、節税対策に走るのは本末転倒ではないかなと思います。磯崎先生がご懸念される対象非上場企業のガバナンスについては、例えば(財務諸表の適法性に限定はされますが)会計参与制度もしくは会計監査人を義務付ける等の対応策はあろうかと思います。その意味では私は今回の制度には期待しているところであります。
確かに、世間の認識と事業承継に係る実務家の認識にはギャップがあるのかもしれませんが、制度そのものは否定したくないということで。
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