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2007/05/25

事業承継型経営統合

4月6日付け株式会社平和から、「株式会社平和による
株式交換を通じた株式会社 オリンピアの完全子会社化に
関する基本合意のお知らせ」
と題するプレスリリースが出ています。
このプレスリリースはユニークです。スキームを選択
した本音が書いてあります。意訳すると「中島家から
石原家に経営権を譲渡したいけど、普通にやると平和
が上場廃止になるので工夫しました」ということにな
ります。

こういう面白いスキームについて、それを選択した方
々の思考を自分なりになぞるのは面白いものです。念
のためですが、私は本件の関係者でもなければ、当ブ
ログは税務・法務・会計等に関するアドバイス等を意
図したものではありません。

平和の経営権を移動する方法としてまず考えられるの
は、オリンピアもしくは同社石原社長がTOBをかけ
る方法です。この場合、オリンピアサイドは多額の資
金が必要ですし、平和は上場廃止となります。昨今の
ファンド事情を考えると、オリンピアにファイナンシ
ャルスポンサーはつく可能性はあったと思いますし、
当面の上場維持にそう大きなインセンティブはないよ
うにも思えるのですが、当事者はそうは考えなかった
ようです。

資金を使わないで経営統合する方法としては、平和と
オリンピアが合併・株式交換・共同株式移転等を行う
ことが考えられます。現行の上場ルールや会計基準で
は、実態としてどちらかがどちらか「取得」していな
いかを判断しますので、その点では各手法に差はあり
ません。株式移転は純粋持株会社という新たな経営体
制を作る必要がありますし、合併は2つの会社を1つ
にしますのでこれも新たな経営体制を作る作業です。
残るのは、両社の組織をそのままにできる株式交換と
いうことになります。

株式交換となると、まずは税制適格かどうかですが、
今回は共同事業要件がクリアできるものと仮定してよ
さそうです。また、上場維持という観点と、すでに平
和がオリンピア株式の20%を保有しているという点
から、平和がオリンピアを完全子会社にするという形
式をとったものと思われます。

さて、株式交換した場合ですが、プレスリリースにも
ある通り、現状のままで株式交換をかると中島家も石
原家も3分の1を超える議決権比率を持ちますので、
経営権の移動がはっきりしません。更に、少数特定者
持株比率が上場廃止基準に抵触する可能性が高い為、
平和の上場が廃止になってしまいかねません。

ということで、以下の複数の取引を走らせることにな
る訳です。

1.平和による自己株式公開買付に中島家の資産管理会
社と中島家が設立した財団法人が応じる。この目的
は、中島家サイドの議決権比率を下げることと思わ
れます。加えて、オリンピアとの株式交換の際に取
得した自己株式を使うことで、既存株主の価値希薄
化を避けるという点を強調可能です。また、応募し
ているのは法人株主ですから、市場売却よりは手取
りが多いことが期待できます。自己株式取得ですか
ら、平和の資金負担で行っていることもポイントで
す。
2.石原家資産管理会社による平和株式の公開買付に中
島家資産管理会社が応募します。これは株式交換後
の石原家の議決権比率を上げることが目的でしょう。 中島家の資産管理会社に益金が発生する可能性があ
りますが、どうなのでしょうか。
3.オリンピアが石原家の資産管理会社から自己株式を
取得します。これは恐らくですが、石原家の資産管
理会社が平和株式を取得する資金をファイナンする
ことが目的ではないでしょうか。資産管理会社より
は事業会社の方が資金調達は容易だと思われます。
仮に、オリンピアの有利子負債が増えている場合、
平和グループの負債ということにはなります。
もう1つの効果は、株式交換後の石原家資産管理会
社の議決権比率を下げることです。ただし、それで
あれば石原家の資産管理会社が平和株式の公開買い
付けをしなければ良いとも思うのですが、そこのと
ころの経緯まではプレスリリースからは読みとれま
せん。
4.平和がオリンピアを株式交換により完全子会社化し
ます。これにより平和の支配権は石原家に移動し、
平和とオリンピアは統合されます。

ここまで整理できると疑問点が3つあります。

1.平和の経営権が石原家に移動すると言うことは、形
を変えてみるとオリンピアによる平和の買収ともい
えます。非上場会社が上場会社を買収したにも係わ
らず、形式上上場会社を上場会社として維持するこ
とは、「不適切な合併等」として即監理ポスト入り
で最長2年間上場審査の対象となります。しかし、
東証は今回そのような措置は執りませんでした。私
はどのような理由でそのようになったかについて東
証には説明義務があると思います。
2.経営統合後の平和の主要株主は石原家の資産管理会
社です。このような場合、新規上場であればその資
産管理会社は「親会社等」として上場企業並の開示
と最低1期の会計監査がが求められます。ところが
平和は既上場会社ですので親会社等に該当しても会
計監査まで求められることはありません。もちろん、 決算内容等の開示は義務づけられますが、会計監査
のあるなしは大きいと思います。
3.経営統合後の平和の連結財務諸表はどうなるのでし
ょうか。プレスリリースにもあります通り、オリン
ピアによる平和の買収として会計処理がされ、逆の
れんが発生する可能性があります。というか、実態
から考えるに、オリンピアが親になると思います。
そこで逆暖簾が発生するとのことですが、平和のP
BRが1倍を切っているからでしょうが、株式交換
比率に由来する部分があった場合には、平和株主の
負担でオリンピアを買収している訳ですので、公開
買付価格を低くしたことと矛盾があるような気がし
ます。

来年の有報でどこまで疑問を解消できるでしょうか。

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