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2005/08/02

「社長保有株式の無償譲渡」の税務

日本駐車場開発の巽社長が保有する株式の一部を株主に対して無償譲渡について47thさんが株式の無償償却にしなかった理由を考察されています。

その中で税務についても述べられていますが、「うろ覚え」ということですので、ちょっと補足を試みます。

株式の無償償却なんですが、47thさんは「自己株式の無償取得+償却」を考えておられますが、減資に伴う強制償却(商法213条)もあることはあります。ただ、こちらは100%減資に使うことが多いですし、個別の株主の株のみで減資というのも考えられないので無視することにします。

この場合、売り手である株主の税務ですが、所得税法59条を適用するとすれば、みなし譲渡益課税となります。相対取引ですから税率は20%ですね。みなし配当については、交付金銭等で計算しますので、それがないのでないのではないでしょうか。自己株式を取得する会社側は時価相当の受贈益を対価として、資本積立金と利益積立金を按分して減額することになるでしょう。他の株主には株主持分の増加があったとしてみなし贈与の問題がありそうです。その計算は面倒ですから、自己株式の無償取得はちょっと問題な気がします。

株主間の無償譲渡の場合はどうなるのでしょうか。譲渡する相手が法人か個人かで変わります。法人に譲渡する場合、売り主はみなし譲渡所得が発生し(所得税法59条)、譲渡先には受贈益が立ちます(法人税法22条)。一方、相手が個人の場合は、贈与とみなされ(相続税法7条)、売主には課税はなく、譲渡先に贈与税が生じます。つまり、個人買う主のみに無償譲渡するのであれば、巽社長には税金がかからないことになります。この点では、株式無償譲渡の方が巽社長の税負担は軽減される可能性があります。また、個人株主にしても110万円の控除がありますから、その範囲内であれば税負担はない格好です。

ここで重箱の実務ですが、所得税法と相続税法で「時価」が異なります。所得税法の時価は譲渡した日の終値(所得税基本通達23~35共ー9)ですし、相続税法では課税時期の終値、課税時期の属する月の月中平均、その前の月の平均、その前々月の平均の中で最も低い価格とされています(財産評価基本通達168、169)。つまり、渡す側の巽社長は譲渡したした日の時価で所得税を計算しますが、受ける側は数カ月分の平均値をしらべないと、税金の金額が違ってしまいます。そこらへんのデータは巽社長が提供してくれるのでしょうか。更に言えば、贈与された株式の取得価額は贈与した元の株主のものを引き継ぎますので、これも巽社長からデータを頂かないと、その株を特定口座に入れることもできなければ、譲渡益の計算が正確にはできませんね。

では、法人株主は無償譲渡に応じるのでしょうか。権利ではありますから、行使するのが経営陣の務めであるようにも思えます。しかし、権利行使に伴うメリット(将来の日本駐車場株式の価値向上期待)とコスト(受贈益が立つことによる税負担)を考えての判断となるでしょう。税務上の欠損金のある(もしくは生じる見込みの)法人は応ずるんでしょうね。

あとは、投資信託やファンド等はどうなのでしょう。そもそもこういう構成員課税のものが株主の場合の実務はどうなるのでしょうかね。ここらへんは残念ながら経験のない私には判らない世界であります。

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