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2005年8月

2005/08/22

社長の個人出資(2)

前のポストの続きです。上場企業の社長が、その上場企業に買収される会社に個人出資することをストックオプションと捉えることもできるかと思いついたので、追記的に。

社長が個人の資産で株式を取得することで、同時に出資する上場会社と利益を共にし、被買収会社、ひいては買収会社である上場企業の企業価値向上へのインセンティブとしているとは考えられないでしょうか。

なお、今回問題にしているのは、買収会社の社長が被買収会社の株式を一部取得することです。以下便宜上、上場会社である買収会社をP社、被買収企業をT社とします。

株式ベースの報酬は、米国ではエンロン事件等の経営者の犯罪の原因と考えられています。日本ではそういう例は少ないようですが、目先の業績を良く見せる方向への強力なインセンティブであることは間違いないでしょう。そのような場合に困るのは、売却のタイミングを逸してしまうP社既存株主もそうですが、新規に株式を購入する判断を誤らせられる投資家も損害を被ります。上場企業であるP社取締役として、市場参加者全体に正確な情報を開示する義務が有る訳ですから、売る選択肢だけとなりがちなインセンティブとしての株式保有には問題があるのではないでしょうか。

仮に、P社社長が株式を保有するとしても、それはP社株式ではないでしょうか。T社株式を保有した場合、その処分方法はP社への譲渡が有力な手段です。その場合、T社株主としての立場とP社取締役としての立場では利益相反が生じます。株式売買の実行時のP社取締役会決議の議決に当事者である社長は参加できないわけですが、それ以外の部分で利益相反が起こり得ないのかが気になります。

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2005/08/17

社長の個人出資

8月11日付asahi.com「ドン・キ、「オリジン弁当」株取得へ 事実上筆頭株主に」から。

大手ディスカウントストアのドン・キホーテは11日、弁当・総菜店「オリジン弁当」を展開するオリジン東秀の株式の一部を8月末に取得すると発表した。同時に安田隆夫社長も株式を取得するほか、オリジンの大株主の不動産管理会社も買収。これらを合わせた持ち株比率は23%余りで、事実上の筆頭株主となる。

このような買収形態は過去にもみたことがありまして、その都度「なぜ社長が個人出資しなければならないのだろう?」と思います。「経営している上場会社に投資先が倒産するリスクを過大に負担させたくないから」等という理由を言う方もいらっしゃいました。しかし、結局は上場会社にメリットがあるからの出資でしょうし、その実現のためには上場会社のリソースが使われる訳です。

買収後の経営が上手く行けば、上場会社の基盤を使って社長個人の資産の価値が上がる訳ですから、悪い言い方をすれば社長の個人資産の価値を上げるために上場会社のインフラが使っている、ということにはならないのでしょうか。また、会社の業績が上向いたところで、被買収会社が上場等して社長が株式を売り出したり、上場会社と被買収会社が合併したり(社長は被買収会社の持分に応じて上場会社の株式を受け取ります)、社長の持分を上場会社が買い取ったりするケースもあります。その場合、社長の資産形成に上場会社が貢献しているともいえます。これで代表取締役社長としての株主への責任を果たしているといえるのでしょうか。

このような買収形態はいわゆる「オーナー企業」がやりますので、社長は上場会社の大株主でもあります。従って、社長の中で利益相反は解決されていく筈のものかもしれません。しかし、少数株主の立場はやはり軽視されているように感じてしまいます。

では、上場会社は一切関与していない(ようにみえる)この場合はどうよ、ということですが、上場会社の取締役は上場会社の経営に最大限の時間を使うべきではないかと思います。従って、上場会社の取締役がプライベートカンパニーの事業を拡大させているのをみると、やっぱり「う~ん」と唸ってしまいます。

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2005/08/16

成功するM&Aか

14日付日経新聞「夢真のTOB、過半数に達せず」にある通り、夢真HDは日本技術開発の経営権を取得することはできませんでした。夢真は事前警告型防衛策の意義(中長期の企業価値向上戦略も描けない経営陣が敵対的買収者に中長期の計画を提出することを求めることは正当かとか、敵対買収を目論むプレーヤーは防衛策があっても仕掛けてくるものだ、とか)を問いかけたり、買収防衛策としての株式分割の有効性を否定したりしてくれました。その意味ではライブドアと共に、日本の会社法制や経営思想を変えさせた功労者であります。

一方で、夢真は日本技術開発を傘下に収めることには、少なくともこの段階では成功していません。買付株価だけで判断を求める株式公開買付を強行した結果、日本技術開発経営陣や従業員の反発を買い、ホワイトナイトという夢真からみた場合の競合相手を呼び込み、夢真主導での買収は困難な情勢です。このままでは、やみくもに公開買付に突入したことが致命的だったと評価されてしまいます。

もちろん、まだ決まった訳ではありません。エイトコンサルタントの公開買付は、買付下限として過半数確保となっている上に、現在進行中であり、その帰趨は10%超を保有する夢真が握っているといえなくもありません。エイトコンサルタントの公開買付を不調に終わらせることができれば、夢真が再度日本技術開発に対して買収提案をすることも可能でしょう。

そもそも夢真は日本技術開発の何が欲しかったのでしょうか。割安株を売り抜けることが目的ではない事業会社ですから、日本技術開発の事業や有形・無形の資産に魅力を感じての買収提案だった筈です。オラクルとピープルソフトの件は、どうあってもピープルソフトが他社の傘下に入ることを阻止したかったオラクルがかなり粘って買収が成立した訳ですが、夢真はどうなのでしょうか。

一方、日本技術開発は防衛に成功したといえるのでしょうか。少なくとも夢真よりも条件の良い買い手を見つけることができた訳ですから、それほど悪い結果とはいえないでしょう。今の経営陣とエイトコンサルタントで企業価値を上げられれば、丸く収まることになるでしょう。それができなければ、経営陣はエイトコンサルタントから首を切られることになるでしょうが、まぁどうせ今の株価を放置せざるを得なかった経営陣ですから、延命できれば御の字なんだろうと思います。従業員とて新体制で能力を発揮できればそれでよしとなるでしょう。

この結果は、防衛策の効果なのでしょうか。防衛策導入発表によって夢真側が多少公開買付の時期をずらしたかもしれませんが、そうではなかったことを考えると、必ずしも防衛策導入効果ではなかった気がします。やはり、防衛策よりも企業価値向上に努めることに経営者が没頭する、できなければ退陣するというのが王道ということなのでしょう。

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2005/08/15

ワールドのMBO

ワールドのMBOはなかなかにインパクトがあったようですね。過去に非上場化した例とは規模と会社の知名度が違いますから、当然と言えば当然なことであります。

そのスキームについて以下まとめです。

買収ビークルとして既存の会社を使っているように見える。公開買付人であるあるハーバーホールディングスアルファ(以下α社)は、産業再生法の認定を受けているとのことですから、再生法申請前にあったのではないでしょうか。これはなぜなのでしょうか。

買収ビークルを2つ使っている。α社の親会社として社長100%出資のβ社があります。ワールドの経営陣が出資する予定の会社でもあります。これはタリーズが非上場化する際に、2社設立して直接株式公開買付を行った会社が株式交換により対象会社を100%子会社化した後に、清算することで少数株主退場を図るスキームと理解しています。今回は、現金株式交換を行う訳ですから、少数株主退場の為に2つ会社を使う必要はない気がします。しかし、報道をよく読むと、どうやら公開買付資金の調達をしたのはα社の方に見えます。更に、α社とワールドの合併の可能性と純粋持株会社経営が示唆されていますので、β社は純粋持株会社になる予定ということが考えられます。また、ワールドと合併予定のα社向けとすることで金融機関は事業会社であるワールドに直接貸し付けたことになり、より資金調達がやりやすかったのかもしれませんね。

産業再生法を使って現金対価の株式交換により少数株主の退場を図っている。会社法施行の1年後(今の予定では2007年5月)には現金対価の株式交換が解禁されますが、それまでは産業再生法を使うしかない現状です。その結果、α社やワールドは経済産業省に計画の実行具合を報告する義務が生じますが、経営陣は自信があるのでしょう。

ところで、ワールドの大株主には公益法人が入っています。公益法人は基本財産として保有している株式を処分するには、当該法人の機関決定に加えて、主務官庁の許可が必要な筈です。公開買付公表後かつ買付期間中に主務官庁の許可を取るのは可能なのでしょうか。株であれば配当金で運営できますが、現金に替わってしまっても財団法人の運営に影響はないのでしょうか。もっとも、今回のスキームでは現金株式交換の段階では現金になりますので、どうしようもないという判断なのかも知れません。しかし、仮に、公開買付発表前に公益法人が主務官庁に根回しに動いていたのであれば、重要情報の管理として適切といえるのかという疑問が生じます。

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2005/08/02

「社長保有株式の無償譲渡」の税務

日本駐車場開発の巽社長が保有する株式の一部を株主に対して無償譲渡について47thさんが株式の無償償却にしなかった理由を考察されています。

その中で税務についても述べられていますが、「うろ覚え」ということですので、ちょっと補足を試みます。

株式の無償償却なんですが、47thさんは「自己株式の無償取得+償却」を考えておられますが、減資に伴う強制償却(商法213条)もあることはあります。ただ、こちらは100%減資に使うことが多いですし、個別の株主の株のみで減資というのも考えられないので無視することにします。

この場合、売り手である株主の税務ですが、所得税法59条を適用するとすれば、みなし譲渡益課税となります。相対取引ですから税率は20%ですね。みなし配当については、交付金銭等で計算しますので、それがないのでないのではないでしょうか。自己株式を取得する会社側は時価相当の受贈益を対価として、資本積立金と利益積立金を按分して減額することになるでしょう。他の株主には株主持分の増加があったとしてみなし贈与の問題がありそうです。その計算は面倒ですから、自己株式の無償取得はちょっと問題な気がします。

株主間の無償譲渡の場合はどうなるのでしょうか。譲渡する相手が法人か個人かで変わります。法人に譲渡する場合、売り主はみなし譲渡所得が発生し(所得税法59条)、譲渡先には受贈益が立ちます(法人税法22条)。一方、相手が個人の場合は、贈与とみなされ(相続税法7条)、売主には課税はなく、譲渡先に贈与税が生じます。つまり、個人買う主のみに無償譲渡するのであれば、巽社長には税金がかからないことになります。この点では、株式無償譲渡の方が巽社長の税負担は軽減される可能性があります。また、個人株主にしても110万円の控除がありますから、その範囲内であれば税負担はない格好です。

ここで重箱の実務ですが、所得税法と相続税法で「時価」が異なります。所得税法の時価は譲渡した日の終値(所得税基本通達23~35共ー9)ですし、相続税法では課税時期の終値、課税時期の属する月の月中平均、その前の月の平均、その前々月の平均の中で最も低い価格とされています(財産評価基本通達168、169)。つまり、渡す側の巽社長は譲渡したした日の時価で所得税を計算しますが、受ける側は数カ月分の平均値をしらべないと、税金の金額が違ってしまいます。そこらへんのデータは巽社長が提供してくれるのでしょうか。更に言えば、贈与された株式の取得価額は贈与した元の株主のものを引き継ぎますので、これも巽社長からデータを頂かないと、その株を特定口座に入れることもできなければ、譲渡益の計算が正確にはできませんね。

では、法人株主は無償譲渡に応じるのでしょうか。権利ではありますから、行使するのが経営陣の務めであるようにも思えます。しかし、権利行使に伴うメリット(将来の日本駐車場株式の価値向上期待)とコスト(受贈益が立つことによる税負担)を考えての判断となるでしょう。税務上の欠損金のある(もしくは生じる見込みの)法人は応ずるんでしょうね。

あとは、投資信託やファンド等はどうなのでしょう。そもそもこういう構成員課税のものが株主の場合の実務はどうなるのでしょうかね。ここらへんは残念ながら経験のない私には判らない世界であります。

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