敵対的買収防衛策のガイドライン
経済産業省と法務省が敵対的買収防衛策のガイドラインを発表しました。これまでの株主平等原則や主要目的ルールに替わる敵的買収防衛策の是非の判断基準が整備されたことになります。官僚が設定したことに違和感を感じる向きもあるようですが、私は素直に評価したいと思います。この指針に法的拘束力がないことを認識しておけば良いだけのことですから。
同時に発表された企業価値報告書においては、むしろ制度についての切り込みが足りないのではないかと感じました。
ポイズンピル(ライツプラン)発動時に新株予約券証券を取得した株主に税負担が生じる可能性があることを指摘している訳ですが、その点は対抗策としての有効性に大きく影響する部分ではないでしょうか。株主に税負担があるプランを発動した場合、経営者はそれを正当化できるのでしょうか。私は堂々と税制改正要求をするべきだったと思います。
来年の商法改正で取得条件付き新株予約券が可能になり、対価として議決権付株株式をわたすことで強制的に行使させる仕組みが可能な訳ですが、そこの課税を繰り延べにするだけでもポイズンピルの実効性は増し、不意打ちの敵対的買収提案で一般株主が損害を被るリスクが減るのではないでしょうか。
もう1点の制度改正要望は、今の普通株を新株予約券付証株式に転換した場合でも上場を維持できる上場規則です。ニレコのポイズンピルが否定されたのは基準日(3月31日)以降の株主に新株予約権がなかったことが大きいですが、それを回避することができます。国会審議中の会社法が成立すれば、株主総会の議決が必要な定款変更により可能な行為のはずです。東証等の取引所に対して要望しておくべきだったのではないでしょうか。
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