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2005/02/16

DESの税務

はぐれバンカーさん「DESってどうよ?」から。

意外に大変だなと思ったのは、DESをする際の税務上の取り扱いが明確でない点。 債務者側の取り扱いが税法上決まってないみたい(判例はあるらしいがやや心もとない。)。クライアント側の会計士はネガティブな反応。

私は会計士でも税理士でもありませんので、参考になる書籍を1冊。中東正文他『新版「資本の部」の実務 改正商法・会計・税務』(新日本法規、ISBN4-7882-0630-7)の679~729ページがよくまとまっています。悲しいことにアマゾンでは在庫切れとなっていますが、お持ちの方がいらっしゃったら見せて貰って下さい。

以下は同書の記載をもとにした私の理解であり、正確さを保証するものではありませんし、法律上または税務上のアドバイス等を意図したものではありません。税務上の取り扱いについては、必ず「税理士」にご相談下さい。また、法的な取り扱いについては、弁護士等の専門家にご相談下さい。

商法的には、DESは金銭債権による現物出資という考え方でいいようです。増資額については色々と議論があるようですが、東京地裁民事第8部では、券面額説での取り扱いをしているそうです。参考文献として、商事法務1590号7~9頁以下が引かれています。増資して、その代わり金で債権を返済したのと同じじゃん、というはぐれバンカーさんが思われた通りの理由があるようですね。

さて、税法ですが、こちらもDESは金銭債権の現物出資と考えるようです。従って、適格現物出資の場合は、すべて帳簿価額ですみますので、ノープロブレムです。でも、今回はM&Aですから、適格現物出資にならない可能性もあると思います。

買収する側は、時価で債権を取得するのでDESをしても課税の対象にならない。これは多分確実。債務免除と取られて寄付金認定されることがあるのか?

買収する側は、いったん時価で債権を取得する訳ですね?理論的には、債権取得時は債権の時価、DESにより取得した株式の取得価額は、法人税基本通達2-3-14により、合理的な再建計画等の定めるところによりDESをした場合には、その株式の「時価」とされています。その場合、株式の時価が債権の額を下回り、債権譲渡損が出る可能性が(ごく少ないとはいえ)あります。しかし、上掲書によれば、「合理的な再建計画」の定めによる以上は、損金として認容され、寄付金にはならないという理解です。

一方、買収される側の債務額はDESにより資本に振り替わるが、この資本への振替金額を簿価にするか(券面学説)、時価にするか(評価額説)が焦点になりそう。

確かに、評価額説では債務消滅差益が出てしまい、それを消せるだけの繰越損失がないと、税負担が生じてしまいます。これについては、前掲書は705ページはファジーな書き方をしています(引用は控えます)。私個人としては、合理的な再建計画等があり、商法決算を券面額説で会計処理した場合に、税務署がチャレンジできるのであれば、その根拠が知りたいな、と思うところであります。

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コメント

《税務上の取扱いについて》
問題の債務者側の取扱いですが、個別案件について確認をとったことがあります(局でなく庁)。

その際には、債務者側に合理的な再建計画がある旨説明したところ、「資本等取引」として、課税関係は生じないという見解でした。ただし、これが一般論として通用するかどうかは確認できていませんので悪しからず。
また、諸星健司先生の著書の
「事例詳解資本等取引をめぐる法人税実務 資本の部の税務調整のすべて」(税務研究会出版局)
でも、同様に資本等取引とされるご説明があったことを記憶しています。


一方で、週刊「T&A master」H17年12/13号 №094 プロからの税務相談(法令等の根拠に基づく即決判断)
 武田昌輔税法研究グループ
 「DESを行った場合の税務上の取扱い」
では債務免除益課税が生じる場合があるとの見解もあります。

いずれにしても、再生手続におけるDESについて債務者側に課税関係が生じるようなバカげた話はありえないと思いますので、通達等の整備が待たれるところです。

また、補足ですが、同族会社においては、DESによる株式の発行価額が高額である場合、相続税法の規定により既存株主にみなし贈与課税が生じる場合もあるのでここも注意です。

投稿: 書庫部長 | 2005/02/17 01:01

ありがとうございます!
ご紹介いただいた書籍に早速あたってみたいと思います。

私は税務に疎いので、今回の案件は勉強するいい機会になりました。krpさんのご意見も非常に参考になりました。

何のお礼もできずに恐縮ですが、今後ともよろしくお願いいたします。

投稿: はぐれバンカー | 2005/02/17 05:55

フォローありがとうございます。>書庫部長さん
券面説の方向で考えておられる実務家の数が増え、その方向で通達が整備されると嬉しいです。

案件がんばって下さい>はぐれバンカーさん

投稿: krp | 2005/02/17 13:35

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