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2005/02/15

失敗するM&A

米国 University of Pennsylvania のビジネススクールである Wharton School のWEBサイトである Knowlege@Whartonの「The Latest Mergers: Why Some Will Fly, And Others Won't」から。

M&Aがうまくいかない理由をいくつか挙げています。概念論ではわかりにくいですから、架空の買収例(LD社によるCX社の親会社の非友好的買収)を例に考えてみましょう。あくまでわかりやすくする為の「例」ですから、実在の企業や人物とは一切関係ありませんから、お願いします。

Martin Sikora(editor of Mergers & Acquisitions: The Dealmaker's Journal)のコメントが主に登場します。彼の最初のコメントは

According to Sikora, the kinds of problems companies face with mergers range from poor strategic moves, such as overpayment, to unanticipated events, such as a particular technology becoming obsolete. "You would hope these companies have done their due diligence, although that isn't always the case," he says.

高すぎる金額と特定の技術が時代遅れになるような予想されていなかったイベント、だそうです。LD社としては、CX社の親会社株式取得に支払った金額が妥当かどうか(本当に投資回収できるの?)、それからLD社のもつネット技術が本当にCX社の放送事業と融合して働くようなものか、をよく事前に調査することが求められる訳です。これらが鍵でありながら、外部からは預かり知らない部分なのが、一般投資家には残念なことであります。CX社の持つコンテンツをネットで有料配信するにしても、ビジネスとして成立するかは未知数ですね。

Wharton management professor Harbir Singh, who has done extensive research on mergers, says that the crucial distinguishing factor between success and failure in a merger is a sense of objectivity on the part of executives -- a "realistic outlook" that needs to be maintained from the initial transaction through the entire integration process. The danger, it seems, is when executives "fall in love" with the idea of the acquisition, wanting it to work no matter what the cost.

Singh教授によると、成功と失敗の差は、経営陣が現実的な考えができるかだそうです。経営陣がM&Aそのものに熱狂してしまい、どんなコストをかけても実現する、と考えてしまうのは危険だということです。LD社の社長H氏が「経営マシーン」に徹することができれば「問題ない」でしょう。

"Look, company A buying company B is really buying people," he says. "You need to realize that and be aware that certain issues exist." Negative outcomes -- such as employee layoffs for the target company -- are "invariable" and "must be handled humanely." For example, companies can help these individuals to find other jobs and provide acceptable severance. Sikora also advocates immediate and clear communication on the part of management with regard to any problematic issues. "You need to create a good impression," he says. "Good employees will quit if they feel their fellow workers are treated poorly."

これは再び Sikora 氏の言葉です。M&Aで買うのは人だということです。今回H氏は敵対的買収をしかけている格好ですので、「良い従業員は、自分の同僚が酷く扱われていると感じると、辞めていく」という部分はよく考えておくべきでしょう。いわば占領軍であるLD社関係者の言動次第で、CX社の従業員がぼろぼろと辞めていってしまうリスクがあるということです。「経営陣の総入れ替え」を示唆するような発言は、某公共放送の例でも分かる通り、極めて内向きな組織である放送事業者に長年勤務する従業員には、余り快いものには響かないリスクがあります。放送事業にノウハウのないLD社が、CX社の幹部社員の代替要員を確保することは困難であり、ここが最大のリスクではないでしょうか。

According to Sikora, the customer should perhaps be viewed as the biggest stakeholder and treated as such. "If the customer is a large one, I'd say they should hold hands with top executives through the transition," he says. "At the end of the day, that's the cash." As an example, he sites a merger between two tech firms in Silicon Valley, both of whom had IBM as a leading customer. When the merger was announced, they both lost IBM's business. "IBM wanted to know why they were not told of the change," he says. He suggests using sales forces to keep customers informed and having communications ready for all customers, with a key message that answers the question, "What is this merger going to do for you?"

Sikora氏は、「顧客は恐らく最大の利害関係者としてみるべきだ」と述べています。放送事業者であるCX社の顧客は2つ考え方がありますね。1つは広告主で、もう1つは視聴者です。CX社の放送番組の制作費は広告主からの広告料で賄われます。従って、LD社傘下のCX社を広告主が嫌って、広告を減らしたりすると、視聴者に好まれる番組が制作できずピンチです。また、視聴者がCX社の番組を見なくなると、広告主から広告効果が減少しているとして広告費を減らされる可能性がありますから、やはりピンチです。LD社は、自社のポータルサイにおいて広告収入を得ていますから、広告主との関係構築には自信があるのでしょう。LD社のサイト+CXの番組トータルでの広告宣伝効果を広告主にアピールするのかもしれません。

加えていえば、放送事業は免許業種ですから、所管官庁である総務省も重要な利害関係者です。流石に免許を取り消すような荒業はしてこないでしょうが、LD社からの独立性を免許維持の要件にするなどの嫌がらせは考えられます。

LD社はM&Aを繰り返して事業の種類と規模を拡大してきたとはいえ、敵対的M&Aをクローズしたことはありません(某球団についてはクローズできずですし、某金融機関については株式取得後経営陣との関係が悪化したので撤退)。公開の場で進行中の敵対的M&Aをしかけた側の最高責任者として、どのようなメッセージを利害関係者に送るのか。H社長のコミュニケーション能力が問われているといえるでしょう。

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