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2005年2月

2005/02/28

金融コングロマリット

SMFGが決算の下方修正を発表したそうです。東証の適時開示システムで確認しました。金融庁検査の指摘等新聞でも色々と言われていましたので、やむをえないところでしょう。asahi.comによると、資本増強も検討するようです。

保険会社など複数の国内機関投資家向けに増資引き受けの打診を始めた。優先株や劣後債など、引受先が議決権を持たない形での増資を検討しているとみられる。

「機関投資家に打診」ですから、みずほのように法人取引先への増資引き受けを要請するようなことまで検討しているかどうかは分かりません。しかし、ここまで赤字(週刊誌ネタですが、税務上も赤字らしい)が続くと、りそなの時のように繰延税金資産の計上額の問題が生じる可能性はどうなのでしょう。会計監査人であるあずさ監査法人はどういう対応をするのでしょうか。

SMFGの対応としては、大和証券グループとの経営統合というネタもある訳ですが、金融コングロマリットの可能性についてはぐれバンカーさんから懐疑的なご見解をトラックバックで頂戴しています。

確かに、シティグループの再編からは保険と銀行・証券の相性は良くなかったことは言えるかもしれません。しかし、シティは今回の再編で証券会社を手放していないことを考えると、銀行と証券の相性が悪い、とまでは言い切れないのかもしれません。実際、コーポレートの話ですが、M&A案件のアドバイザリー獲得とM&Aファイナンスに係るシンジケートローンの主幹事がセットになるなど、投資銀行業務と商業銀行業務の相乗効果は出るのではないかとも思います。大和証券SMBCという合弁会社をテコにした経営統合というのは考えられるのではないでしょうか。

法人で言えば、三井住友の担当者のセリフが「大和証券を紹介しましょうか」から「大和証券を紹介させてくれ」に変わる。この辺の圧力は確かに効果ある。ただし、三井住友以外の金融機関からの紹介が確実に減るので、プラスマイナスの効果は不確実。このあたり特定の金融機関の色がつくことは諸刃の剣としか言いようがない。日本生命や野村證券はそのあたり心得ている。

すでにSMBCによる大和証券SMBC紹介は既に広範に行われています(法人向け証券仲介業における提携先は大和SMBC1社で、大和からエース級の人材がSMBCに送り込まれたことが以前報道されていました)から、法人取引においては恐らく変化はないかと思います。

心配なのはリテール部門の相乗効果でしょうね。

個人で言えば、富裕層は資産を一元管理されることを嫌うので逆効果になる恐れがある。また、アクティブに取引をしている層はネットの親和性が高いので、取引条件次第で金融機関を選ぶ。そもそも囲い込みが不可能。で、結局、大して資産も持たず、資産運用も積極的でない層がクロスセルの餌食にできるだけ。うまみがあるかは分からん。

銀行からすると、クロスセルするだけの商品を提供してくれる証券会社と組みたい訳で、今のSMBCフレンド証券というのはSMBCからみると力不足なのでしょう。だからといって、大和証券と組めば完璧かというと、分からんですね。大和証券は販売力や開発力では野村に追いつけず、かといって日興シティのような海外との連携も大きくはないというイメージですから。

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2005/02/25

祝、MTUFG

nikkei.netに「三井住友FG、UFJへの統合提案取り下げを決定」と出ました。25日付夕刊と26日付朝刊に掲載されるものと思われます。

三井住友フィナンシャルグループは25日、UFJホールディングスへの統合提案を取り下げたと発表した。三井住友FGは同日に開いた取締役会で取り下げを決定、UFJに通知した。

SMFGは今期の赤字決算、更には繰延税金資産否認のリスクがいわれています。どうなるにせよ、銀行のバランスシート健全化は最終工程に入ったということなのでしょう。大和証券グループと統合して金融コングロマリット法案を先取りするから堪忍して、というのがSMFGの唯一のシナリオなのでしょうか。

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2005/02/24

素朴な疑問

前回の記事には3つもトラックバック(grandeさん、jiang_nai_ziさん、Grebewebさん、ありがとうございます)を頂いた上に、当ブログへのアクセスも過去最高を記録しているみたいです。

24日付日経新聞3面には、大学教授の方2名のコメントが掲載されています。私は上村達男早大教授のご意見に同感する部分が多いです(上村教授は、「会社法改革」(アマゾンでのご購入はこちら)という著書がある会社法の専門家ですね)。もちろん、「違法」とか「なんでもありになってしまう」という部分には、そこまで言い切る自信も根拠もありませんが、私が同感するのは、そもそもライブドアのニッポン放送株式取得の適法性について司法判断を仰ぐべきだという点です。

以前「個人的には、是非ニッポン放送には証券取引法違反の取得という理由で名義書換を拒否して頂きたいと考えています。それをうけてライブドアがニッポン放送を訴えることでしか、本件が早期に法廷の場に持ち込まれることはないと思います。」と書きました(保管振替機構名義なのでしょうから、名義書換ではなく実質株主としての扱いを拒否することになるのでしょうが、それが現行の制度で可能かどうかは検証していないというそそっかしいコメントである点は反省しています)。

今回の新株予約権差し止め仮処分請求で、すべての論点について司法判断が出れば、それはそれで歴史に残る判決になるかと思われます。ベルシステム24対CSKやUFJ対住友信託の例から考えて、司法が「ライブドアの株式取得」も「ニッポン放送の新株予約権発行」も容認するのはないかと、勝手に想像はできる訳ですが、それでも一応判決があれば、立法者もそれを考慮した会社法改正を考えると思いますので。

で、タイトルの素朴な疑問ですが、日経新聞にはライブドアが「フジテレビとニッポン放送の取締役を兼務する村上光一富士社長など「取締役個人に対する賠償責任なども考えている」としている」とありますが、村上氏は議事録上利害関係人として取締役会決議に参加していない格好になっていると思うのですが、その場合でも賠償責任を追及できるのでしょうか。

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2005/02/23

経営者の姿勢

ニッポン放送をめぐるライブドアとフジテレビのせめぎ合いについては、本日新展開があったようです。「これはこれでTOB期間中にこんなことしてええのか?」(証券取引法27条の5の「趣旨」はどうなっているのか)と思う訳で、ここまでなんでもありなのかなというのが感想です。

第二十七条の五  公開買付者等は、公開買付期間(公開買付開始公告を行つた日から公開買付けによる買付け等の期間の末日までをいい、当該期間を延長した場合には、延長した期間を含む。以下この節において同じ。)中においては、公開買付けによらないで当該公開買付けに係る株券等の発行者の株券等の買付け等を行つてはならない。ただし、次に掲げる場合は、この限りでない。
一  当該株券等の発行者の株券等の買付け等を公開買付けによらないで行う旨の契約を公開買付開始公告を行う前に締結している場合で公開買付届出書において当該契約があること及びその内容を明らかにしているとき。
二  第二十七条の二第七項第一号に掲げる者(同項第二号に掲げる者に該当するものを除く。)が、内閣府令で定めるところにより、同項第二号に掲げる者に該当しない旨の申出を内閣総理大臣に行つた場合
三  その他政令で定める場合

そもそも今回のフジテレビサイドの方々の発言には疑問を感じます。感情的にはわからない訳ではないですが、ライブドアがニッポン放送やフジテレビの企業価値を高める提案をしようといっているのに、「まずTOBに応じるのが筋だ」とか、「3分の1超の取得に自信」とか発言されると、ニッポン放送やフジテレビの企業価値を高める意識がなくて、自身の保身しか考えていないのか、と思ってしまいます。せめて、「具体的な提案があれば、詳細に検討する」くらいは言ってほしいものです。UFJもSMFGの提案を「無視する」と言ったことは一回もありません。

会社法現代化こういう意識で経営をされる取締役会にポイズンピルを許容するのは、違和感を覚えます。ここは、委員会等設置会社で社外取締役が過半数からなる委員会でポイズンピル履行や償却を決定する旨定款で定めている会社か、商法特例法上の大会社でポイズンピル履行や償却を監査役会で決定する旨定款で定めている会社をのみ許容するような規定を希望したいと思います。

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2005/02/21

相続財産の確定

19日付日経新聞「堤康弘氏、改めてコクド株相続権主張」から。

「西武鉄道グループの中核会社コクド前会長の堤義明氏の実弟で、遊園地運営会社インターベストトレーディング(3月に豊島園に社名変更)の堤康弘社長と顧問の前田茂弁護士が18日都内で記者会見し、西武グループ経営改革委員会の諸井虔委員長(太平洋セメント相談役)の辞任と同委員会の解散を求めた。」

株式を相続したのは誰か、と問われれば、堤義明氏だったのでしょう。ただし、分割協議書に入っていない財産ですから、もし仮に名義株になっていたコクドや西武鉄道の株式が堤康次郎氏の財産であったとなれば、義明氏以外の相続人にも権利はあるといえます。これらの株式はコクドで管理していたようですから、堤家のものであると確定できるかどうかは判らない気がします。

相続発生は40年以上前ですが、もし仮にこの段階で相続未了の財産があって、今になって遺産分割が確定したら、相続税の修正申告書を提出する必要はあるのでしょうか。それとも時効なのでしょうか。特に、今回のケースは、相続税負担を軽減させる目的で(いわば「悪意」をもって)「名義株」とした訳ですが、それでも時効なのでしょうか。40年も経過したのなら、時効なんでしょう、きっと。それを見越して、「自分のものだ」と主張する方々には、「記者会見開くのもいいけど、裁判をがんばってね」としか申し上げるのみです。

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2005/02/17

ここにもM氏絡みのM&Aが

17日付日経新聞
カジュアル衣料のマックハウスとレオが合併へ」
から。

カジュアル衣料品チェーンのマックハウスとレオは16日、9月1日付で合併すると発表した。存続会社はマックハウスで、レオは解散する。マックハウスはレオの筆頭株主で、これまでも人材交流などを進めてきた。合併により商品仕入れや店舗開発面でも効率化を進める。

記事にもある通り、両社は靴小売大手のチヨダのグループ会社です。ですが、レオの大株主はとみると、チヨダとマックハウスで36.5%保有しているのですが、直近では12月27日付でMACアセットマネジメントの大量保有報告書が出ていまして、672千株(13.76%)保有となっています。レオの内容はとみると、2月16日の終値(640円)ベースでPBR0.71倍、時価総額31億円、2004年2月期末で現金同等物24億円、有利子負債10億円、というファンドが好きそうな銘柄ですね。

一方のマックハウスですが、チヨダの持株比率64.8%で、ま、子会社上場です。こちらは、2月16日の終値(1551円)ベースで、PBR1.75倍、時価総額175億円、2004年2月末で現金同等物93億円、有利子負債38億円、という状態です。チヨダの持分さえ低ければ、これもファンドが好みそうな現金が多い銘柄です。

レオ株1株に対しマックハウス株0.45株を割り当てる。マックハウスの栗原勝利社長が合併会社でも社長に就く予定。

この合併比率ですが、2月16日の終値ベースで単純計算すると、1対0.41になります。従って、その分、レオの株主に有利になっていることがわかります。ちなみに、2004年5月頃はマックハウス3000円、レオ800円ですから、比率は1対0.26です。今日の相場をみると、マックハウスの株価は1560円、レオの株価は675円位ですので、1対0.43と合併比率にさやよせの方向ですね。

この合併比率は一応野村証券(マックハウス側)と中央青山監査法人(レオ側)というアドバイザーが算定した価格をもとに両社が交渉して決めたことになっていますが、MACアセットマネジメントの存在を意識して、レオの「のれん」をみたと考えるのは邪推でしょうか。

レオの株価が一夜にして上昇しましたので、MACアセットマネジメントは株式を売却しているのでしょうか。彼らの取得価額次第だというのが正しい答えでしょうが、他に彼らがアクションを起こす要因はあるかもしれません。

合併後の新マックハウスの現金同等物は2004年2月期の単純合計で100億円を超えますので、会社から株主に還元させる方向でプレッシャーを与える可能性は残っているようにもみえます。しかし、売らなかった場合の新マックハウスにおけるMACアセットマネジメントの持株比率は2.3%で、チヨダが59.2%です。これを考えると持っていても経営に影響を与えられないだけに、合併後まで保有するのはどうかと思います。チヨダからみれば、MACアセットマネジメントを水面下に落とした、とでも言いたい気持ちなのかもしれません。

となると、MACアセットマネジメントとしては、合併比率を更にレオに有利にさせるような方向に動くのはどうでしょうか。あと20%あれば、株主総会での合併議案を否決できます。チヨダがレオを手放さないという読みであれば、そういう暴れ方も可能でしょう。

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書評「詳説自社株評価Q&A」

尾崎三郎監修、竹内陽一・掛川雅仁共編「詳説自社株評価Q&A」(清文社)は、帯に「商法・法人税法の改正を前提に、財産評価基本通達の非公開会社の株式の評価に関する実務上の疑問点に、明解に回答、Q&A形式により最新の情報で解説。」とありますが、まさにそのとおりの本だと思います。(アマゾンでご購入はこちらへ)。

この本の良いところは、まず薄いこと(^^)、Q&A形式になっていて実務上疑問が生じた際に参照ページを見つけやすいこと、です。非上場株式評価の参考書の定番は、現役の東京国税局資産評価官の方が執筆されていることから、「株式・公社債評価の実務―自社株の評価のために」(大蔵財務協会)(amazonでの購入はこちらへ)や「図解 財産評価」(アマゾンでの購入はこちらへ)でしょうが、本書はそれらよりもコンパクトにまとまっており、非上場株式評価が話題になりそうな時にかばんに入れて持っていこうと思えます。

読んでみて、法令や通達が実務家の実感とかけ離れつつあるということを改めて実感します。営業権の評価においても、基準年利率の変更という大きなイベントがありましたが、本書ではその問題点も指摘しています。実務書という観点からはそこまで踏み込む必要はない訳ですが、現場で相当問題になっていることが伺えます。こういう実務家の実感を反映した税制の構築ができると良いなと思います。

ここのところの法令・通達の変更は激しいものがありますので、こういう本が常に最新の法令にもとづいて、実務家の方々の手で執筆されるのは、大変なことだと思いますが、今後の改訂にも期待したいと思います。

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郷愁

17日付日経新聞に郷愁というか、哀愁というかを誘うニュースが2つ。

ニフティの「パソコン通信」、来春終了

インターネット接続大手のニフティ(東京・品川、古河建純社長)は16日、「ワープロ・パソコン通信」サービスを来年3月末で終了すると発表した。インターネットを介さずにパソコン同士でやりとりする同通信の利用者は一時300万人を超えたが、ネットの普及により2万人程度まで落ち込んだためとりやめる。

ドコモ、PHSから撤退・4月にも募集停止

NTTドコモはPHS(簡易型携帯電話)事業から撤退する。4月にも新規加入の受け付けを停止し、2、3年後をめどにサービス自体も取りやめる。携帯電話各社による料金引き下げや高機能化の競争激化を受け、PHSの利用者は減少しドコモの同事業も赤字が続いている。PHS事業を打ち切り、経営資源を携帯電話の技術開発・営業に集中させることで、KDDI(au)の猛烈な追い上げを受けている携帯電話事業での競争を勝ち抜く考え。

どちらも私の人生を変えたといえる一連の事象を構成する要素でした。そしてそれを私は過去形で語っています。恐ろしいものです。

1つ言わせてもらえば、NTTドコモはPHS利用者をWILLコムに継承できるルートも手配するべきではないでしょうか。FOMAにしろといわれてもねぇ。

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2005/02/16

DESの税務

はぐれバンカーさん「DESってどうよ?」から。

意外に大変だなと思ったのは、DESをする際の税務上の取り扱いが明確でない点。 債務者側の取り扱いが税法上決まってないみたい(判例はあるらしいがやや心もとない。)。クライアント側の会計士はネガティブな反応。

私は会計士でも税理士でもありませんので、参考になる書籍を1冊。中東正文他『新版「資本の部」の実務 改正商法・会計・税務』(新日本法規、ISBN4-7882-0630-7)の679~729ページがよくまとまっています。悲しいことにアマゾンでは在庫切れとなっていますが、お持ちの方がいらっしゃったら見せて貰って下さい。

以下は同書の記載をもとにした私の理解であり、正確さを保証するものではありませんし、法律上または税務上のアドバイス等を意図したものではありません。税務上の取り扱いについては、必ず「税理士」にご相談下さい。また、法的な取り扱いについては、弁護士等の専門家にご相談下さい。

商法的には、DESは金銭債権による現物出資という考え方でいいようです。増資額については色々と議論があるようですが、東京地裁民事第8部では、券面額説での取り扱いをしているそうです。参考文献として、商事法務1590号7~9頁以下が引かれています。増資して、その代わり金で債権を返済したのと同じじゃん、というはぐれバンカーさんが思われた通りの理由があるようですね。

さて、税法ですが、こちらもDESは金銭債権の現物出資と考えるようです。従って、適格現物出資の場合は、すべて帳簿価額ですみますので、ノープロブレムです。でも、今回はM&Aですから、適格現物出資にならない可能性もあると思います。

買収する側は、時価で債権を取得するのでDESをしても課税の対象にならない。これは多分確実。債務免除と取られて寄付金認定されることがあるのか?

買収する側は、いったん時価で債権を取得する訳ですね?理論的には、債権取得時は債権の時価、DESにより取得した株式の取得価額は、法人税基本通達2-3-14により、合理的な再建計画等の定めるところによりDESをした場合には、その株式の「時価」とされています。その場合、株式の時価が債権の額を下回り、債権譲渡損が出る可能性が(ごく少ないとはいえ)あります。しかし、上掲書によれば、「合理的な再建計画」の定めによる以上は、損金として認容され、寄付金にはならないという理解です。

一方、買収される側の債務額はDESにより資本に振り替わるが、この資本への振替金額を簿価にするか(券面学説)、時価にするか(評価額説)が焦点になりそう。

確かに、評価額説では債務消滅差益が出てしまい、それを消せるだけの繰越損失がないと、税負担が生じてしまいます。これについては、前掲書は705ページはファジーな書き方をしています(引用は控えます)。私個人としては、合理的な再建計画等があり、商法決算を券面額説で会計処理した場合に、税務署がチャレンジできるのであれば、その根拠が知りたいな、と思うところであります。

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2005/02/15

失敗するM&A

米国 University of Pennsylvania のビジネススクールである Wharton School のWEBサイトである Knowlege@Whartonの「The Latest Mergers: Why Some Will Fly, And Others Won't」から。

M&Aがうまくいかない理由をいくつか挙げています。概念論ではわかりにくいですから、架空の買収例(LD社によるCX社の親会社の非友好的買収)を例に考えてみましょう。あくまでわかりやすくする為の「例」ですから、実在の企業や人物とは一切関係ありませんから、お願いします。

Martin Sikora(editor of Mergers & Acquisitions: The Dealmaker's Journal)のコメントが主に登場します。彼の最初のコメントは

According to Sikora, the kinds of problems companies face with mergers range from poor strategic moves, such as overpayment, to unanticipated events, such as a particular technology becoming obsolete. "You would hope these companies have done their due diligence, although that isn't always the case," he says.

高すぎる金額と特定の技術が時代遅れになるような予想されていなかったイベント、だそうです。LD社としては、CX社の親会社株式取得に支払った金額が妥当かどうか(本当に投資回収できるの?)、それからLD社のもつネット技術が本当にCX社の放送事業と融合して働くようなものか、をよく事前に調査することが求められる訳です。これらが鍵でありながら、外部からは預かり知らない部分なのが、一般投資家には残念なことであります。CX社の持つコンテンツをネットで有料配信するにしても、ビジネスとして成立するかは未知数ですね。

Wharton management professor Harbir Singh, who has done extensive research on mergers, says that the crucial distinguishing factor between success and failure in a merger is a sense of objectivity on the part of executives -- a "realistic outlook" that needs to be maintained from the initial transaction through the entire integration process. The danger, it seems, is when executives "fall in love" with the idea of the acquisition, wanting it to work no matter what the cost.

Singh教授によると、成功と失敗の差は、経営陣が現実的な考えができるかだそうです。経営陣がM&Aそのものに熱狂してしまい、どんなコストをかけても実現する、と考えてしまうのは危険だということです。LD社の社長H氏が「経営マシーン」に徹することができれば「問題ない」でしょう。

"Look, company A buying company B is really buying people," he says. "You need to realize that and be aware that certain issues exist." Negative outcomes -- such as employee layoffs for the target company -- are "invariable" and "must be handled humanely." For example, companies can help these individuals to find other jobs and provide acceptable severance. Sikora also advocates immediate and clear communication on the part of management with regard to any problematic issues. "You need to create a good impression," he says. "Good employees will quit if they feel their fellow workers are treated poorly."

これは再び Sikora 氏の言葉です。M&Aで買うのは人だということです。今回H氏は敵対的買収をしかけている格好ですので、「良い従業員は、自分の同僚が酷く扱われていると感じると、辞めていく」という部分はよく考えておくべきでしょう。いわば占領軍であるLD社関係者の言動次第で、CX社の従業員がぼろぼろと辞めていってしまうリスクがあるということです。「経営陣の総入れ替え」を示唆するような発言は、某公共放送の例でも分かる通り、極めて内向きな組織である放送事業者に長年勤務する従業員には、余り快いものには響かないリスクがあります。放送事業にノウハウのないLD社が、CX社の幹部社員の代替要員を確保することは困難であり、ここが最大のリスクではないでしょうか。

According to Sikora, the customer should perhaps be viewed as the biggest stakeholder and treated as such. "If the customer is a large one, I'd say they should hold hands with top executives through the transition," he says. "At the end of the day, that's the cash." As an example, he sites a merger between two tech firms in Silicon Valley, both of whom had IBM as a leading customer. When the merger was announced, they both lost IBM's business. "IBM wanted to know why they were not told of the change," he says. He suggests using sales forces to keep customers informed and having communications ready for all customers, with a key message that answers the question, "What is this merger going to do for you?"

Sikora氏は、「顧客は恐らく最大の利害関係者としてみるべきだ」と述べています。放送事業者であるCX社の顧客は2つ考え方がありますね。1つは広告主で、もう1つは視聴者です。CX社の放送番組の制作費は広告主からの広告料で賄われます。従って、LD社傘下のCX社を広告主が嫌って、広告を減らしたりすると、視聴者に好まれる番組が制作できずピンチです。また、視聴者がCX社の番組を見なくなると、広告主から広告効果が減少しているとして広告費を減らされる可能性がありますから、やはりピンチです。LD社は、自社のポータルサイにおいて広告収入を得ていますから、広告主との関係構築には自信があるのでしょう。LD社のサイト+CXの番組トータルでの広告宣伝効果を広告主にアピールするのかもしれません。

加えていえば、放送事業は免許業種ですから、所管官庁である総務省も重要な利害関係者です。流石に免許を取り消すような荒業はしてこないでしょうが、LD社からの独立性を免許維持の要件にするなどの嫌がらせは考えられます。

LD社はM&Aを繰り返して事業の種類と規模を拡大してきたとはいえ、敵対的M&Aをクローズしたことはありません(某球団についてはクローズできずですし、某金融機関については株式取得後経営陣との関係が悪化したので撤退)。公開の場で進行中の敵対的M&Aをしかけた側の最高責任者として、どのようなメッセージを利害関係者に送るのか。H社長のコミュニケーション能力が問われているといえるでしょう。

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2005/02/14

ニッポン放送買収合戦(2)

ニッポン放送買収合戦は、ある意味予想通り、フジテレビが25%の取得を目指すという対抗策を出しました。ライブドアが主張する通信と放送の相乗効果についても、(ライブドア以外の)パートナーとの連携も考えるようです。

ライブドア以外のパートナーはどこか?堀江社長の仇敵三木谷さんや一時はテレビ朝日支配を試みた孫さんは、いまやどちらも球団を保有していますので、ベイスターズやスワローズの株式を保有しているフジサンケイグループに手を出すのは考え難いと思います。私としては、熊谷さんや木村さんや宇野さんあたりはいかがかと思いますが(あてずっぽうですけどね)。

さて、フジテレビの対抗策をうけて、ライブドアも「ニッポン放送の増資」を言っていますし、はぐれバンカーさんは「匿名組合出資方式」を考案されています。

しかし、どちらも前提条件があります。それは、「ニッポン放送の取締役会を支配してからの対抗策」だということです。現在のライブドアの持ち株比率はわかりませんが、連休中の堀江社長のコメントからは過半数をとったという発言はありませんから、ライブドアグループ単独では、まだ取締役会を支配できません。

これが、村上氏とすでに共同歩調をとることが合意されているとなると話は別で、現状でもライブドア派の持ち株比率が50%を超えていることになります。しかし、今のところ、表向きは、そのようなコメントを出していませんので、(たとえ馬鹿正直といわれようとも)それを信じて議論を進めます。

ライブドアグループで議決権の過半数をとっていれば、臨時株主総会を請求し、議案に取締役の新規選任(現在19名ですから、20名を新規選任で取締役会をコントロール可能です)を入れ、総会でそれを通すことができます。そうなれば、普通発行による増資も重要な資産の処分も可能です。

仮に、ライブドア派で議決権の3分の2をとっていれば、取締役の解任も可能ですし、有利発行の増資も決議できますから、万全ですね。

いずれにせよ、ライブドアが過半数を取るまでには、少し時間がかかると思われます。その間に、フジテレビが次の対策をとることも可能です。例えば、ホワイトナイトを探してくるとかですね。

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2005/02/10

ピアレビューに限界はあるのか

10日付日経新聞「会計士の不正、協会チェック「甘い」・金融庁」から。

公認会計士などの業務を監視する金融庁の「公認会計士・監査審査会」は9日、日本公認会計士協会に対し、協会による会計士の不正チェックが甘いとして改善を求めた。監査に使った書類の中身を精査していないなど手続きがずさんなうえ体制も不十分だと指摘。詳細なチェック項目の策定や担当者の大幅増などを求めた。問題が解消しなければ金融庁に行政処分を求める方針だ。

公認会計士協会による監査のチェックは、ピアレビューとも呼ばれる手続きです。協会の会員である公認会計士が別の会員の監査をチェックするというシステムは、担当者の質および量の確保や「馴れ合い」を排除できるのかといった点で批判があります。

アメリカではPCAOBという組織ができて、そこが会計事務所の監査をチェックする仕組みです。金融庁の「公認会計士・監査審査会」もPCAOBと同等の組織のはずですが、公認会計士協会のピアレビューをチェックすることにとどまっているのは、やはり担当者の質と量の確保ができないからです。

その意味では、公認会計士試験のほどんどが監査法人や(税理士登録後に)税理士法人に勤務するという実態から変わらないといけないんでしょう。

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ニッポン放送買収合戦

一昨日から大変な騒ぎになっているようですが、このニュースを見た私の第一印象は、以下の2つです。

(1)どうやって公開買付でなくて35%も集めたんだ?
(2)フジテレビがニッポン放送株式を25%集めたらどうするつもりだ?

(1)については、取得者を2社に分散させた上でTOSTNET-1を使って、時間外に取得したようです。以下のBLOGでは、その正当性について議論されています。個人的には、是非ニッポン放送には証券取引法違反の取得という理由で名義書換を拒否して頂きたいと考えています。それをうけてライブドアがニッポン放送を訴えることでしか、本件が早期に法廷の場に持ち込まれることはないと思います。

 磯崎哲也事務所さん「ライブドア、「ニッポン放送戦」に参戦」
              「ライブドアのニッポン放送株1/3超取得は違法か?」
              「ライブドアのニッポン放送株1/3超取得は違法か?(続き)」
              「ライブドアのニッポン放送株1/3超取得は違法か?(その3)」

 grandeさん「ライブドアの動き とりあえずまとめ」
 はぐれバンカーさん「ニッポン放送TOB ライブドア参戦!!」
             「ニッポン放送TOB (続き)」
             「ニッポン放送TOB (完結編)」
 47thさん「ライブドア参戦」のM&A業界へのインパクト」
       「ライブドアのニッポン放送株式は「違法」・・・だなんて、滅相もありません(1)」
        「ライブドアのニッポン放送株式は「違法」・・・だなんて、滅相もありません(2)」 

(2)フジテレビがニッポン放送株式の25%を保有すると、ニッポン放送が保有するフジテレビ株式の議決権は消滅します。そうなるとライブドアは少なくともフジテレビに影響を与えることはできません。フジテレビ側としては公開買付条件の変更で、予定数に満たない場合でも買い付けを行う旨公告が必要になる(買い付け価格の上方修正も必要かもしれません)訳ですが、対抗策としてはありえますね。この場合、ライブドアはどうするのでしょうか。株主総会の特別決議がとれそうなまで議決権をコントロールできれば、株主提案による臨時株主総会を開催して有利発行の第3者割当増資でフジテレビの持ち株比率を薄めることを狙えますが、時間がかかりそうです。その間に、フジテレビ側が防御を固めることも可能でしょう。

この考えから発展すると、ニッポン放送がライブドア株式の25%を取得するなんていう対抗策もありえるかもしれません。ある種のパックマンディフェンスですが、ライブドアは浮動株比率がそんなに高くないようですから、実現可能性は少ないでしょうね。

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日本のパススルー税制

Bewaad Instituteさんの「続々・バカには正しくバカと言おう」から。

LPSやLLCその他これらに類似する組織体は、基本的に法人税法上の「人格のない社団等」として法人課税対象となるようです。ただし、根拠法によってはその定義に該当しない組織体もあり得ますが、それらは法人課税を免れます。

今回の外国投資家に関する税制改正に関するblogを読んでいたら、磯崎哲也さんのblogがコメントされており、そこからこちらに行き着いたのですが、なんとinfoseek時代のポストにリンクを貼って頂いているのでびっくりいたしました。infoseekの方は、PCをいじるまとまった時間がない為、トップページが酷いことになっていますので、何か対応します。

今回の外国投資家に対する税制改正については、「ファンドが20%の利回りを上げるのは至難なのに、20%源泉徴収とは理解できない」という発言がどこかにあったのをみて、完全に興味を失いました。利回りが下がるということは、GPの取り分への影響が大きいですから、ファンドを組成するGPが一番困るんだ、という思い込みというかやっかみがあることも原因かもしれません。

そもそも、米国のパートナーシップ税制においても、パートナーシップが米国であげた収益の米国非居住者宛配分額については、パートナーシップが源泉徴収する規定になっている筈です。加えていえば、日米租税条約により、日本の居住者については、源泉徴収されないことになっています。これは、今回の税制改正についてもしかりで、組合員が米国居住者である場合は、組合は源泉徴収しません。組合員がバミューダとかバージン諸島とかケイマンの居住者だったりすると源泉徴収されます。オランダについては日蘭租税条約が今後改正されれば、そちらによることになるでしょう。これはトリーティーショッピングに悩む各国の徴税当局に共通するスタンスだというのが私の認識であり、日本だけが突出しているようには思いません、という事情もあります。

前置きはさておき、日本の非居住者である組合員が日本国内であげた収益に対して法人課税をかけているということと、その組合員が居住国においてパススルーエンティティであることとは別のことです。まずその点は明確にしなければなりません。

次に、日本におけるパススルー税制に関する最近の動きについて整理したいと思います。

日本で法人税がかからない組織は、Bewaad Instituteさんがまさにひいておられる法人税法基本通達にあるように、商法上の匿名組合と民法上の任意組合が代表です。ほかにも公共団体や公益法人(これが人格のない社団等の典型であります)の非営利事業とかSPC法によるSPCもあります。LLCやLPSがそれに該当するのでしょうか。

Bewaad Instituteさんがひいておられる通り、LLCについては徴税当局は「法人」であるという立場です。 会社法現代化で導入される日本版LLC「合同会社」も、「会社」である以上は「法人」課税、という徴税当局の姿勢を崩すことはできていないようです。かわって取り入れられるのが、日本版LLPである有限責任組合です。

そして、今回の税制改正では、匿名組合と任意組合に関する税制も変更されます。事業に積極的に参画していない組合員については、法人組合員の場合は出資額を超える分(利回り保証がある場合はまったく)、個人組合員の場合はまったく、損失のパススルーは認められない、という規定になります。これは事業に参画していない組合員は、あたかも金融商品に投資しているようなものだという徴税当局の思いを反映したものです。税制改正大綱では、「同様の組織」についての言及もありますので、居住者が海外のLLPの組合員である場合にも適用されます。現在準備中の有限責任組合法では、組合員の事業参画を判断する要件が定められ、その要件に該当した場合のみ、損益ともにパススルーになるような制度設計で、経済産業省と徴税当局の合意がなされたようです。

このような税務上の扱いから考えるに、LPSやLLPがパススルーエンティティであることは、日本の徴税当局もある程度認めていくのではないかと思われます。従って、日本の徴税当局がパススルーを認めていないというのはいいすぎではないかと思います。

もちろん、配賦損失の他の所得との通算が極めて限定されたり、配賦収益を配当所得だと言ってみたり(個人については、今回の税制改正で不動産所得に落ち着くことを期待しますが)と、まだまだ徴税当局との溝や深いことも事実だと思います。なにせ合同会社について、頑としてパススルーを認めなかったようですから。

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2005/02/08

走れ!レッドアロー号

村上ファンドの西武鉄道買収提案は、色々なBlogでも取り上げられているようで、拙文にもトラックバックを頂いております。ファイナンス関連で実績のあるまたは興味のある方がblogをお始めになられるケースが増えたことを反映しており、勉強になるばかりです。

村上ファンドの提案に対する分析は、以下のBLOGをご覧頂ければ、尽くされていると思います。

 grandeさん「西武鉄道の完全買収案の意味を考えてみる」
 小林雅さん「西武とコクド」西武鉄道とコクド(続)
 diwaseさん「鉄道会社買収の皮算用」
 47thさん「西武鉄道株TOB提案の謎」「西武鉄道株TOB次の一手~本当の狙いは?」
 はぐれバンカーさん「勝算なきTOB?」

西武鉄道グループの再編はみずほコーポレート銀行主導で進められていくのでしょうが、西武鉄道グループを悪くする方向にいかないことを願うのみです。

もう1点だけ付け加えるとすると、西武鉄道株式を保有する個人株主の税務というマイナーな論点があります。個人の証券税制は磯崎哲也さんいわく「ディープ」な世界であり、また今回の西武鉄道グループの再編に関連しては余りにマイナーなのですが、一応ということで。

現在、西武鉄道株式は非上場株式です。従って、村上ファンドが仮にコクドと取引銀行を説得して公開買付をすることになったとした場合、応じる西武鉄道株主(個人)には非上場株式の譲渡損益が生じます。

譲渡益が生じる場合は、税率20%の申告分離課税です。上場株式であれば10%(平成19年12月末までの時限措置)ですから、仮に新生西武鉄道が上場して、村上ファンドが提案する株価(1000円/株)以上で取引されると思えば、上場まで待つ方が得です。

譲渡損が生じる場合、上場株式の場合は譲渡損の繰越制度がありますが、非上場株式にはありません。つまり、今年の非上場株式の譲渡損は、今年の株式譲渡益と通算できるだけですが、今年の上場株式の譲渡損は来年以降3年間は繰り越して、各年度の株式譲渡益と通算できます。そうであれば、上場まで待つ方が得であります。

実際には、こういうことを考えている西武鉄道株主(個人)って...いないんでしょうねぇ(汗)

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銭湯を健康拠点に 健康教室や実践指導、新年度から - asahi.com : 社会

7日付朝日新聞夕刊「銭湯を健康拠点に 健康教室や実践指導、新年度から」から。

健康の秘訣(ひけつ)、銭湯で教えます――。厚生労働省は05年度から、銭湯を健康づくりの拠点にし、保健師らが健康教室を開いたり、入浴の実践指導をしたりする事業を全国で始める。大きな湯船に入ると、ストレス解消やアルツハイマーの改善に効果があるとの研究をもとに、高齢者の介護予防などに役立てる。廃業が続く銭湯業界への応援の意味もある。

個人的に近くの銭湯でお湯につかるのが好きなので、銭湯がなくなるのは困ります。しかし、今回の施策は銭湯経営者も高齢化しているということを考えていない気がします。

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2005/02/04

西武鉄道は誰のものか

4日付日経新聞「村上ファンド、西武鉄道買収を提案・1株1000円でTOB」から。

投資ファンドのM&Aコンサルティング(東京・港)がコクドなどの西武グループに対し、西武鉄道の完全買収を提案していることが3日、明らかになった。西武グループ企業の了解を条件に、M&A社が欧州の大手金融機関クレディ・スイス・グループと共同で一株1000円で株式公開買い付け(TOB)を実施し、発行済み株式の100%を4300億円で買い取る。

村上氏の言動については毀誉褒貶があるようですが、私の印象として、多くの場合は「正論」を語っておられる気がします。この場合の「正論」とは、株式会社の経営者は株主の利益を最優先に行動するべきだ、という観点を指します。村上氏はファンドマネージャーですから、投資家の意向がトッププライオリティで、短期的な利益を主張されて、中長期ベースの投資家の賛同を得られない株主提案をしてしまったことも止むを得ない訳ですが、東京スタイルでもニッポン放送でも、その主張は傾聴に値するものでした。

前にも書きましたが、銀行による債権者の論理での再建計画が結局は株主の利益を損なってしまうことはあるものです。銀行借り入れによる財務レバレッジがあるからこそ、事業がうまくいっている間は、株主は投下資本以上のリターンが期待できるのも事実であり、常に利害が反する訳ではありません。銀行は貸し手としての利益を最優先しますから、事業がうまくいかなかった場合には株主とは利害が反することを忘れないようにするしかないでしょう。

西武グループの事業再編はメーンバンク主導で進んでいるが、株主の立場から対抗案を出す。提案では西武鉄道を鉄道専業部門、ホテル・レジャー部門、不採算部門の三つに分割。鉄道部門は2年内に株式上場させ、ホテル・レジャー部門は長期保有する。買い取り価格1000円は昨年12月の上場廃止日の終値485円の倍以上。買収資金のうち3000億円超をクレディ・スイスなどが融資する。M&A社は西武株を500万株超(1.4%程度)保有。昨年末に西武鉄道、コクド、プリンスホテルの首脳に買収案を提示。年明け以降も西武グループ経営改革委員会などに買収を働きかけている。

中間報告にあるような西武グループ再編案では、現在の西武鉄道の株主が割をくうのは明らかですから、このような「声」が登場して、より確かな再建計画が策定されるようになればと思います。

ベンチャーキャピタリストの小林雅さんは「村上ファンド、西武鉄道買収を提案・1株1000円でTOB」で以下のように述べておられます。

所有者は株主であり、西武鉄道の場合はコクド、そしてコクドは堤氏である。 堤氏の判断で決めるべきだろうと思う。

組織再編は株主総会の特別決議がなければできないですから、株主総会で堤氏が株主として議決権を行使するのにあたっての判断材料が提供されるべきだというご主張かと思います。しかし、コクドもプリンスホテルも西武鉄道もみずほコーポレート銀行を中心とする銀行団からの借り入れに企業の存続が拘束されているのも事実です(堤義明氏があまり自身の保身に拘ると債権者側も民事再生法の申し立てという手段を持っています)から、堤氏サイドと銀行側で西武鉄道にとって最善の再建策を練り上げるべきだ、というのが私の考えです。

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2005/02/03

新規事業の一般公募

2日付日経新聞「ワークスAP「新規事業」を一般公募」から。

業務用ソフトのワークスアプリケーションズは4月末まで新規事業を一般公募する。リスク分散のため、ベンチャーキャピタル(VC)と共同で、アイデアを審査し最大1億円程度の投資を実行する。発案者による事業化が順調に進めば3年後をメドに買い取りを検討する。新しい事業に集中して取り組む若手の経営者を養成する狙いもある。

ワークスアプリケーションズはERPパッケージソフトの会社ですから、競争上取り扱い商品を増やさないといけないので、なんとしても事業拡大をしたい、ということなのでしょう。当然、投資銀行等からM&A案件も持ち込まれていますが、それが思うようにディール・ダンできないことがきっかけという報道もありますね。今回のスキームではVCを使うことで投資資金を抑えることもできて、なかなか会社側としては良いアイデアに思えます。

応募する側も自己資金は最低限で事業を立ち上げられるというメリットはありますが、その分アップサイドは限定されます。新会社のストックオプションを付与するようですが、結局はワークスアプリケーションが子会社化しますので、ワークスアプリケーションの株もしくは現金が、会社全体のバリューのごく一部貰えるということです。アップサイドリターンを求めるのなら自らリスクをとって起業して、VC等の外部株主の持ち株比率をコントロールすれば良いのでしょう。

事業アイデアがある人に選択肢を与えたという意味では評価できるかなと思います。どれだけの応募があるか楽しみですね。

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2005/02/02

会計上、税務上の観点

1日付日経新聞「武富士、OMCカード株の売却とりやめ」から。

武富士は31日、売却方針を公表していた同社が保有するオーエムシーカード株について、当面は売却を見合わせると発表した。武富士は1月19日にOMCカード株約2884万株(発行済みの13.5%)を市場外の相対取引ですべて売ると発表していた。武富士は売却見合わせの理由を「会計上、税務上の観点からも再検討を加えた結果」と説明している。

「会計上、税務上の観点」ってなんなんでしょうね。なんか気になる表現ですね。

武富士はOMCカードの売却により約250億円の利益を得る見通しだった。これに合わせ、不動産の売却損などを計上する計画だったが、会計や税務面で計画通りにいかない点が出てきた。武富士は売却方針の発表後すぐに、保有株をすべて売却する方針だったが、投資家需要が集まらず、一括売却ができなかったことで当面の売却を断念した側面もあるようだ。

財務会計上の有価証券売却損益も、税務上の譲渡損益も、現在は「約定日」に計上できる筈ですから、3月末までに約定できれば良いと思うのですが。3月決算の日系機関投資家は3月に新規投資は余りしないという話は聞いたことがあります(本当かどうかは知りませんが)が、まだ1月ですからねぇ。

一方で、税務上の不動産の譲渡損益の計上日は、原則引渡しがあった日ですね(法人税基本通達2-1-14)。約定日でも認められるのは、通達文を読む限りでは「益金」だけのようです。引渡し日が何かというのは、法人税基本通達2-1-2によるとされていますから、相手方の使用収益開始の日等ですね。分割払等で代金未決済でも相手方が使用を開始していれば、損益を計上できるわけです。財務会計上は明確ではなかったとので、昨年来基準が検討されていたと思います。

つまり、有価証券譲渡益と不動産の譲渡損を2005年3月期に財務会計および税務会計で計上するには、3月末までにOMCカード株式売却の約定ができ、かつ相手方が不動産の使用収益を開始していないといけないことになります。そのどちらかが崩れたので、今回の発表になったと考えられます。日経の書き方は、3月末までに有価証券売却益が予定通り計上できそうにない(4月以降の約定を望む投資家が多かった?)ことが理由であることを示唆しているようです。

2-1-14 固定資産の譲渡による収益の額は、別に定めるものを除き、その引渡しがあった日の属する事業年度の益金の額に算入する。ただし、その固定資産が土地、建物その他これらに類する資産である場合において、法人が当該固定資産の譲渡に関する契約の効力発生の日の属する事業年度の益金の額に算入しているときは、これを認める。(昭55年直法2-8「六」により改正)
(注) 本文の取扱いによる場合において、固定資産の引渡しの日がいつであるかについては、2-1-2の例による。
2-1-2 2-1-1の場合において、棚卸資産の引渡しの日がいつであるかについては、例えば出荷した日、相手方が検収した日、相手方において使用収益ができることとなった日、検針等により販売数量を確認した日等当該棚卸資産の種類及び性質、その販売に係る契約の内容等に応じその引渡しの日として合理的であると認められる日のうち法人が継続してその収益計上を行うこととしている日によるものとする。この場合において、当該棚卸資産が土地又は土地の上に存する権利であり、その引渡しの日がいつであるかが明らかでないときは、次に掲げる日のうちいずれか早い日にその引渡しがあったものとすることができる。(昭55年直法2-8「六」により追加)
(1)  代金の相当部分(おおむね50%以上)を収受するに至った日
(2)  所有権移転登記の申請(その登記の申請に必要な書類の相手方への交付を含む。)をした日

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2005/02/01

コングロマリット解体

1日付日経新聞「米シティ、生保・年金部門を1兆1900億円で売却」から。

世界最大の金融コングロマリットであるシティグループは31日、傘下の生命保険・年金部門トラベラーズ・ライフ&アニュイティを米生保大手のメットライフに115億ドル(約1兆1900億円)で売却すると発表した。競争力のある事業に経営資源を集中投入するのが狙い。国際的な金融再編をリードしたシティが主要部門の売却に動いたことで、世界的に広がる「メガ金融」志向に影響を与える可能性がある。

金融庁がこんなもの(pdfファイルです)を発表して「金融コングロマリット法(仮称)を整備」とかいっている一方で、お手本にした米国ではコングロマリットが解体の方向で動いている、という構図です。滑稽ですね。

金融商品のワンストップショップというのは極めて判りやすくて魅力的な話です。縦割り行政で業種横断的な商品がなかなか出てこないのも問題です。しかし、金融コングロマリットが登場することで、本当に利用者の利便性を考えた商品体系になるのかどうかは疑問です。企業としてみれば共倒れリスクだってありえます。

シティグループは1998年に保険と証券を中核とするトラベラーズ・グループと米最大の銀行であるシティバンクを傘下に保有するシティコープが合併して誕生した。今回、売却する保険部門はトラベラーズの母体となった部門。保険部門を手放すことで、シティグループは証券と銀行を中心とした金融グループに再編される。シティはこれまでの積極的な企業の合併・買収(M&A)による拡大路線の修正に動いており、損保部門を米損保大手セント・ポールに売却したほか、リース部門なども手放したばかり。

日本で一番コングロマリット化が進んでいるのは三菱東京FGだと思いますが、生保部門売却後のシティグループの構成とMTFGの構成はよく似ている気がします。ここらへんがちょうど良いのかもしれませんね。

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