« 西武グループの構造(2) | トップページ | 源泉徴収には携わりたくない »

2005/01/20

東証の「親会社等」の上場開示ルールについて補足

ヘラクレスの上場基準に関するポストに対して、Tomさんからコメントを頂戴しました。

マスダ社はあくまで財産保全会社であり、さらにベンチャー企業投資を業としてるから、開示対象から外れるという扱いではないのでしょうか? 東証では財産保全会社や投資育成を目的とするファンドには、開示を要求していませんよね?

私の理解では、東証は財産保全会社であっても、「親会社等」に該当する限り、開示対象にしています。それは親会社等が特殊会社(石油公団とか)であろうが、原則同じとだと理解しています(例外については後述)。以下、東証の規則に関する私見を述べますが、上場審査は申請を受けた市場(および市場によっては主幹事証券会社)が行うものであり、判断については個別に当該関係者にご確認頂かなければならない旨申し添えます。ましてや、私はマスダアンドパートナーズの開示を避けるためにデジタルスケープがヘラクレスに上場したということを主張している訳では全くないことを明記しておきます。

「マザーズ上場の手引き」の32ページ以降に子会社上場に関する記述があります。そこには、親会社等が株式会社である場合、特殊法人である場合、投資ファンドである場合について、それぞれ開示すべき情報の内容が説明されています。特殊法人や投資ファンドも原則株式会社と同様である旨も明記されています。ちなみに、こう変わったのは、平成15年6月のルール改正以降だと思います。

財産保全会社については、34ページの(注3)に、

「ただし、親会社等が申請会社の役員等の資産を管理すること目的とする会社(いわゆる財産保全会社)であると認められる場合は、公認会計士又は監査法人による監査については、最近1年間のみとすることができます。」

とあります。財産保全会社に関しても、「親会社等」である以上は開示対象ではあるが、公認会計士又は監査法人による監査については、上場前1年間のみで良いよ、と読めます。私の理解では、それ以外の読み方はできないと思います。

「親会社等」に該当するかどうかの判断は、連結基準を準用していますので、会計監査人である公認会計士の判断が尊重されることが実務上多いと聞きます。

「親会社等」に該当しない会社の例は、日本公認会計士協会監査委員会が発表している「連結財務諸表における子会社等の範囲の決定に関するQ&A」Q10(2)に記載されています。そこにあるのは、「実体のないいわば役員Xの(役員X及びその配偶者等が議決権を所有している場合を含む。)の個人的な持株会社であるような場合」です。私の理解では、当該上場申請会社の株式保有以外の事業実体を有していない会社である場合のみが、「親会社等」ではないと判断されるということです。

財産保全会社には、不動産賃貸業を営む会社(なかには上場会社の本社ビルを保有して、賃貸借関係がある場合もあるようです)もあります。上記Q&Aによれば、その場合には、「親会社等」に該当し、その結果東証は開示を求めてくることになると思います。

「親会社等」に該当するにもかかわらず、開示を求めない例外は、上場会社が「親会社等」の内容を把握できないケースです。例えば、海外の投資ファンドに50%超保有された場合で、上場会社が要求しても財務内容等の開示に応じない場合でしょう。

東証マザーズ限定の開示の例外は、「手引き」36ページにあるとおり、

「親会社等による株式の所有が投資育成を目的としたものであり、申請会社の事業活動を実質的に支配することを目的とするものではないことが明らかな場合は、例外として認めています。
例えば、親会社等が申請会社の投資育成を目的としたベンチャーキャピタルであり、特に申請会社との取引関係がない場合などは、この例外に当たるケースと思われます。また、出資が投資育成目的であり、明らかに申請会社を支配することを目的としたものではないことが確認された場合には、例外として認めることができるケースと考えられます。」

Tomさんご指摘の投資育成ファンドの例外はこれですね。「東証1・2部上場の手引」に同様の記述がないことから、これはマザーズ限定の例外で、東証1・2部にはないという理解です。

役員の財産保全会社である場合には、役員による企業支配目的があることは明らかですから、この例外には該当しないでしょう。投資ファンドにしても、過半数近くの株式を保有している場合には、単なる投資育成目的とはいいづらいものを感じます。従来の日本のベンチャーキャピタルは数%の出資比率が多いですから、そもそも親会社等には該当しないできたものと思いますが、企業再生ファンドのようなPEファンドはベンチャーキャピタルとは一緒にできないと思います。また、投資先同士のアライアンス(取引関係)を促進するような投資ファンドも、投資育成目的のみとはいい難いのではないでしょうか。

従って、東証の情報開示ルールに従う限り、財産保全会社や投資ファンドであっても、「親会社等」に該当する場合には、情報開示対象であると私は考えます。至らぬ点があれば、ご指摘頂ければ幸甚です。

|

« 西武グループの構造(2) | トップページ | 源泉徴収には携わりたくない »

「Business Law (Japan)」カテゴリの記事

「Financial Management」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/40094/2637188

この記事へのトラックバック一覧です: 東証の「親会社等」の上場開示ルールについて補足:

« 西武グループの構造(2) | トップページ | 源泉徴収には携わりたくない »