顔を変えると
箭内昇氏のNikkei Net Biz Plus連載コラム「店舗は銀行の顔」(から。
「もっとも、この営業店改革にも残された課題は多い。機械化は画期的に進んだが、それでも各種変更届などはまだ多く、ペーパーレスは実現していない。大口の現金顧客に対するキャッシュレス化も未完成だ。商品の整理や事務手続きの見直しも不十分で、このままではいずれ現場は混乱するおそれがある。
行員の労働問題もある。行員は立ち時間が増えるので、交代制度や人間工学を活用したオフィス設計などの対策が必要だ。
だが、それ以上の課題はこの営業店改革に時間がかかりすぎたことだ。花王チームの提言直後から銀行全体が全力で取り組んでいれば、千住・竹ノ塚支店プロジェクトはもっと早く実現したはずだ。」
どんな企業においても、「このままではいずれ現場は混乱するおそれがある」と予想される改革を実施することは並大抵のことではできません。官僚主義がいきわたった組織の場合、混乱を避ける傾向があります。特に、事実はともなく「ミスが皆無に近い」ことを金科玉条にしてきた銀行の事務管理担当部署は、窓口の混乱を嫌うようです。「走りながら直していく」という慣習がないようです。そこに一理あることも確かです。窓口の混乱が、結果として顧客に迷惑をかけ、顧客満足度を損なってしまう可能性があるからです。
製造業でラインに手を加えた結果、一時的に効率が落ちても、納期に支障がなければ顧客に迷惑はかかりません。銀行で納期に近いものというと、振り込み時限でしょうか。営業日の14時30分頃に、受付や窓口の混乱で当日付の振込客の前に長蛇の列ができてしまい、銀行間接続システムの接続時限までに振込事務できない事態です。それが起きないようにする備えが必要でしょう。
箭内氏が指摘される社内の抵抗勢力がつけこむのも、このような事態です。改革の意義を常にトップが説かない限り、改革の機運や現場の意欲が挫けてしまいます。銀行による証券仲介業が12月1日に開始されていますが、窓口に多少の混乱があったようなことも聞いています。それでも対応できているのは、銀行全体が「やらなければならない」という義務感のようなものを持っているからだと思います。
新生銀行は銀行業界に一石を投じました。りそなもそうなる可能性があると思います。りそなグループの業務改革チームと経営陣(箭内氏の属する取締役会も含めてです)には、改革意識の醸成にも奔走していただきたいと思います。
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