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2004年12月

2004/12/30

仕事納め

今日で本年最後の当BLOG更新とさせて頂きます。

今年は2006年4月1日に向けて、商法・税法・財務会計の各分野で動きが表面化した1年でした。来年はそれらが大きな動きとなって、企業経営に及ぼす影響を議論する年となるでしょう。

また、今年はインターネット普及の牽引役であった世代に加えて、普及後に社会人となった世代が主要なプレーヤーとして登場した年ともいえます。

個人的には長女が誕生した年であり、忘れようのない1年となりました。おかげさまで順調に育っております。彼女の成長は大きな喜びであると共に大きな責任を感じます。

今の心境としては、平凡に「来年がすべての生きとし生けるものにとって幸せな1年でありますように」と祈るのみであります。

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2004/12/29

書評『「敵対的M&A」防衛マニュアル』

野村證券株式会社IBコンサルティング部編『「敵対的M&A」防衛マニュアル 平時の予防策 緊急時の対応策』(amazonでご購入される場合はこちら)。

敵対的買収防衛策については、経済産業省の研究会が来春のとりまとめを目指して、ESOP制度やポイズンピル制度について、法的な正当性をどのようにして付与できるかを議論中らしいです。2006年4月に施行と言われる会社法現代化により、企業買収の手法の選択肢が増えることを受けて、企業経営者サイドからの注目もアップしているよです。

本書は証券会社の方が書かれた本なので、歴史についても、具体的な手法についても、事例についても、実務的な説明が中心になっています。企業の経営サイドの方向けの実務的な入門書としては良いかなと思います。

面白いのは、架空の事例を2つ取り上げていることです。1つは敵対的買収をしかけられた側からの防衛策作り、もう1つは敵対的買収をしかける側の戦略についてのものです。面白い試みですし、小さな説明コラムがあったりして親切ですが、短い読み物ですので、物語としての面白さも、実務への示唆も、ちょっと中途半端な印象なのが残念です。

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2004/12/28

個人投資を集めたVB基金

28日付日経新聞「ジャフコ、個人投資集めVB基金」から。

ベンチャーキャピタル最大手、ジャフコは個人投資家から集めた資金でベンチャーに投資するファンド(基金)を設立した。これまでのベンチャーファンドは法人の資金が中心だが、ジャフコは新ファンドをきっかけに個人の資金を若い企業の育成に生かす考えだ。基金名はジャフコ・グレートエンジェルファンド1号投資事業有限責任組合。ファンド総額22億円(うちジャフコが1億円)で出資者はジャフコ以外に17人。

記事の趣旨としては、こういうのは日本では珍しいということのようです。自分もしくは自社で投資事業組合を立ち上げて、そこにキャッシュを突っ込んでいる方はいらっしゃるのかもしれませんが、他人が立ち上げたファンドに投資するケースは少なかったのかもしれません。

投資額は法人向けファンドと同様に1人1億円以上で、資産家の経営者や元経営者などが出資した。ベンチャー育成という社会貢献と、運用益の両方を狙っているようだ。投資家はベンチャー投資を支援するための税制優遇措置を受けられる。

新聞の記事には野村證券が投資家を紹介したことが書かれています。ヘッジファンドと同じ感覚で投資する資産家もいらっしゃったのかなと思いましたが、エンジェル税制を狙うとなると、今年ある程度株式譲渡益を計上した上場企業の経営者の方が投資されたのかもしれませんね。

現役もしくは元経営者である出資者の方々が、ファンドの利回りを上げる為にと称して、ファンドが投資した企業の経営に介入したくなったらどうなるのでしょうか。普通に考えればそんなことはない訳ですが、ありえる話だと思うのですが...。

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2004/12/27

金融庁の情報開示ルール

25日付日経新聞「非上場の親会社にも情報開示義務・金融庁」から。

金融庁は24日、企業開示に絡む不正が相次いでいることを受け、規制の強化策を発表した。企業グループの全体像を投資家がつかみやすいように、親会社が非上場でもその業績を開示することを公開企業に義務付ける。財務報告にかかわる内部管理に問題がないか経営者に確認を義務付けるルールも導入する。有価証券報告書の点検要請に回答がなかった145社に対しては、立ち入り検査に踏み切ることを検討する。

金融庁の発表資料はこちらです。親会社情報に関する部分を引用しますと、以下の通りです。

(4)親会社が継続開示会社でない場合の親会社情報の開示の充実
 関係府令の改正を行い、平成17年3月期から、継続開示会社である子会社の有価証券報告書において、親会社に係る以下の事項の開示を義務づける。
①株式の所有者別状況及び大株主の状況
②役員の状況
③商法に基づく貸借対照表、損益計算書、営業報告書及び附属明細書(会計監査人の監査を受けている場合には、監査報告書を添付)

有価証券報告書は上場企業以外でも提出しています。過去上場していた会社は基本的に継続開示会社として有価証券報告書を提出する義務がありますし、子会社を上場させる為に親会社が有価証券報告書を提出している場合もあります。あと、有名処ではサントリーが非上場会社で、子会社の上場もありませんが、有価証券報告書を提出しています。

サントリーの有価証券報告書を見ると、寿不動産株式会社という会社が親会社となっています。推測するに、鳥井家と佐治家という創業者一族の財産を管理する会社でしょう。今回、金融庁が開示府令を改正すると、これまで非公開であった寿不動産株式会社の株主構成や財務内容が、単独ベースではありますが、判明することになります。

ところで、金融庁の定義する「親会社」とは何でしょうか?東証のルールでは、財務諸表等規則第8条第3項に定める「親会社」および財務諸表等規則第8条第5項に定める「関連会社」を含めた「親会社等」について開示を求めています。金融庁の資料は「親会社」ですから、財務諸表等規則第8条第3項に定める「親会社」だけということなのでしょうか。

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会計監査人の解任

25日付日経新聞「中央青山監査法人を解任」から。

「顧客管理システム構築のイーシステムは24日、監査法人だった中央青山監査法人を解任し、ASG監査法人(東京・千代田)に変更すると発表した。中央青山が取引先の取引内容を確認しようとしたことについて、「守秘義務違反に当たる」(管理本部)と判断したため。

「監査法人を解任」ではなくて、「会計監査人を解任」だという、突っ込みはさておき、会社のプレスリリースはこちらです。「守秘義務違反」云々は日経新聞の記者による取材らしく、プレスリリースでは「監査手法に対して認識の相違」があることのみを述べています。

さて、会計監査人の解任に関する商法特例法の規定は以下の通りです。

(会計監査人の解任)
第六条 会計監査人は、何時でも、株主総会の決議をもつて解任することができる。
2 前項の規定により解任された会計監査人は、その解任について正当な理由がある場合を除き、会社に対しこれ<によつて生じた損害の賠償を請求することができる。
3 第三条第二項及び第三項前段の規定は、会計監査人の解任を株主総会の会議の目的とする場合について準用する。
第六条の二 会計監査人は、次の各号の一に該当するときは、監査役会の決議をもつて解任することができる。
 一 職務上の義務に違反し、又は職務を怠つたとき。
 二 会計監査人たるにふさわしくない非行があつたとき。
 三 心身の故障のため、職務の遂行に支障があり、又はこれに堪えないとき。
2 前項の規定により会計監査人を解任したときは、監査役会が選任した監査役は、その旨及び解任の理由を解任後最初に招集される株主総会に報告しなければならない。
3 第一項の規定により解任された会計監査人は、前項の株主総会に出席して意見を述べることができる。
(会計監査人の選任等についての意見陳述)
第六条の三 会計監査人は、会計監査人の選任、不再任又は解任について、株主総会に出席して意見を述べることができる。
(会計監査人の欠けた場合等の処置)
第六条の四 会計監査人が欠けた場合又は定款で定めた会計監査人の員数が欠けた場合において、遅滞なく会計監査人が選任されないときは、監査役会は、その決議をもつて一時会計監査人の職務を行うべき者を選任しなければならない。
2 第四条、第五条及び第六条の二の規定は、前項の職務を行うべき者について準用する。

今回の解任は監査役会の決議による解任ですから、6条の2第1項に列挙された3つのどれかに該当すると、監査役会が判断したことになります。「監査手法に対する認識の相違」では、そのいずれにも該当しない可能性が高いと思われます。

「取引先の取引内容の確認しようとしたことは守秘義務違反」という会社側の説明が、1の「職務上の義務に違反」もしくは、2の「非行」に該当するのかどうか。中央青山の言い分も聞きたいところですが、監査法人は個別の件のディスクロージャーはしてくれないようです(正午現在WEBサイトに記載はありません)。

そもそも、「取引先の取引内容の確認」というのが、どのような行為なのでしょうか。監査実務経験のない私には判りませんが、「取引先「と」の取引内容の確認」であれば、普通に行われている行為だと思います。「取引先の取引内容」という表現は、そこらへんとあえて違う表現ですですから、何なのでしょうか。

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2004/12/24

有価証券報告書の点検、無回答企業に立ち入り検査も

23日付日経新聞「有価証券報告書の点検、無回答企業に立ち入り検査も」から。

金融庁は、企業の情報開示を充実させるため有価証券報告書のチェックを強化する方針だ。同庁は先月、西武鉄道グループの虚偽記載などを受け公開企業約4500社に有価証券報告書の再点検を求めたが、回答を寄せていない200数十社に関しては悪質な場合などに立ち入り検査も検討する。報告書の信頼性を向上するのが狙いだ。

金融庁の要請に答えない公開企業(これは有価証券報告書提出会社すべてを指すのでしょうか?)があるというのは驚きです。督促をうけて「訂正の必要がない場合も回答しなければならないとは思わなかった」などという企業もありそうな気がしますが。

それとも、「対処すべきは課題ばかり」でご指摘あるように、

回答しない200数十社の会社の関係者、「提出しない」勇気に1票!といいたいところですが、 多分、、、★忙しくて忘れている、★問題が見つかって提出できず社内でもめてる、、、というところなのでしょうか。

という可能性もありますね。後者の場合、特に西武鉄道同様の相続対策の名義株問題を抱えている場合には、問題の性質上、関係者全員が覚悟を決める必要がありますが、それでも金融庁に期限どおりに回答しないのは得策とはいえない気がします。

前回の対策で金融庁は有価証券報告書の提出義務がある上場企業や公募社債の発行企業など4547社に対し、1カ月以内に自社の報告書に誤りがないか点検するように文書で要請した。その結果、21日時点で約500社が報告書の内容を訂正、約3800社が「訂正の必要がない」と報告を寄せた。一方、残りの200数十社については金融庁に対して何ら報告をしていない。このため、金融庁は無回答企業を対象に、各財務局を通じて個別に再度回答を求める。それでも回答がない場合は、立ち入り検査に入るか検討する。

さすがにこれでも対応しない公開企業はないと思いますが、もしあったらどうなるんでしょうか。上場廃止の決定は上場市場が行うものですし、課徴金制度はまだないんでしょうし、文書で「厳重注意」する位でしょうか。社名を所属市場に通知して対応を求める手もありますが、上場企業の場合は株価に影響を与える(市場としては開示に不備がある銘柄は監理ポストに入れる旨発表することになります)ので、そういう措置をとることを事前に警告するなどして企業側に対応を求めておく努力が必要と思われます。

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節税と脱税の隙間には今日も冷たい視線がふる

西武鉄道等に関するエントリ(これこれこれ)について、BigBanさんからトラックバックを頂戴致しました。ありがとうございます。堤義明氏(あるいはその父である堤康次郎氏)の言動を擁護するつもりは全くありません。また、渡辺恒雄氏についても、有価証券報告書虚偽記載を放置した点では同断だと思います。

ただし、

相続税についても非上場会社のコクドを使って自らが支配する数多くの企業の法人税を払わないようにするばかりか、巧みに相続税対策を駆使し、「自分の資産を遺産として残し、それが目減りする事なく、代々受け継がれるようにする事」を実現させている。

というのは、ある種の人たちにとっては、本能のようなものだとも思います。会社の株式が相続財産の大半の場合、相続が会社の経営にネガティブな影響を与えることは、多くの利害関係人にとってネガティブです。例えば、上場企業の社長が急死して、相続税納税の為に遺族が上場株式を大量に処分すると、株価は下落し、上場企業が事業拡大の為のエクィティファイナンスを実施することは困難になります。非上場会社の場合、相続税負担を嫌う子息が事業継続を断念する事態もあります。

今回明らかになった名義株は、法令違反の脱税行為ですから、それを擁護するつもりはありません。しかし、法令の範囲内で、税額を少なくする節税(タックスプラニング)は認められてしかるべきでしょう。節税も度を過ぎると脱税になるでしょうから、その境目は「常識」で判断すべきものであります。その意味で堤義明氏には「常識」が欠けていたのでしょう。「そういう風に育てられた」という解説を聞いたこともありますが、その点は当事者にしか分からないことであります(義明氏の異母兄弟の著作であるこの小説にでも書いてあるのでしょうか)。

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日本のアルファブロガー

面白い企画なので、「FPN - ニュースコミュニティ- 日本のアルファーブロガーを探せ2004」に参加させて頂きます。

(1)「会社のオフィスでは『3つだけ』しかブログを読んではいけない」と言われたら、どれを読みますか
 ・ブログ名1:isologue by 磯崎哲也事務所
 (簡単な理由)テーマ、切り口、表現力(センス)、どれもとっても参考になります。興味のあるテーマが被っていることもあり、手放せない一品です。
 ・ブログ名2:ある米国公認会計士の鎌倉からロンドンへの道
 (簡単な理由)同じ資格を持っていて、実務経験が豊富な方が著者なので、勉強になります。
 ・ブログ名3:Law Maniac
 (簡単な理由)住友信託とUFJHDの法廷闘争や会社法現代化などの大きなテーマが目白押しの商事法務関連のブログを読ませて頂く契機となったblogです。

 (感想)会社のオフィスとなると、やはり会社で読んでも言い訳がたつ、blogを選んでしまいますね。

 (2)上記の3つのブログを除いて、2004年にあなたが最も影響されたブロガーの記事を教えてください。
 ・URL:http://blog.japan.cnet.com/umeda/archives/001671.html
  梅田望夫さん「アマチュア革命がもたらす世界」
 ・簡単な理由
  私がブログというものに興味を持つきっかけとなったのがCNETでの梅田さんの連載です。今の仕事がIT系でもVC系でもないので、「会社で読む3つだけ」には入りませんが、この「アマチュア革命」は自分の仕事にも関連させることができる記事であり、いまだに反芻している記事であります。

(追記 2004年12月28日)磯崎哲也さんとKOHさんには大変喜んで頂いたようで、うれしいです。
が、日本語のブログでなくてはいないというルールの根本を忘れていたことに今ごろ気づいたので、ブログ3を変更しました。主催者のFPN様、ご迷惑でしょうが、ご容赦頂ければ幸甚です<(.__)>

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2004/12/22

オンラインのM&A/ベンチャー投資仲介サービス

nikkeibp「ライブドア、オンラインのM&A/ベンチャー投資仲介サービス開始」から。

ライブドアファイナンスは、オンラインM&A仲介サービス「livedoor ファイナンス ビジネスアミーゴ」と、オンラインベンチャー企業投資仲介サービス「livedoor 出資com」の提供を開始した。同社とライブドア、ライブドア証券の3社が12月20日に明らかにしたもの。

すでにサイト(ここここ)は数日前から閲覧できるようです。

livedoor ファイナンス ビジネスアミーゴは、サイト上で企業買収ニーズと企業売却ニーズを募り、両者をマッチングさせるサービス。買収/売却希望者がそれぞれの希望情報や自社情報を登録すると、匿名で登録情報が公開される。「公開情報を参照しながら適した案件を検索できるので、幅広い相手に対する買収/売却提案が可能となる」(3社)

こういうサイトは既にいくつか(こことかこことか)あります。しかし、上手くいっているとは聞きません。上手くいっていても、そうはいわない風習があるのかもしれませんが、普通は上手くいかないだろうなと思います。

M&A案件は相対で守秘義務契約書ベースで進められるのが普通である、という意識が関連当事者にあることが上手くいかない理由だと思います。中小のM&A仲介業者が会員組織を作ってディール情報を会員業者に流しているケースは昔もあって、よく持ってくる業者がいました。彼らはファインダーズフィー狙いです。しかし、その手のある意味でオープンになっているディールを真剣に検討する会社は、私の経験では皆無でした。

もちろん、仲介業者が自らの価値を演出する為に、「ここだけの話ですが」というやり方に固執しているという指摘も否定できませんので、ライブドアがその概念を変えるべく挑戦していることを無意味だとは思いません。ま、Good Luck! です。

livedoor 出資comは、出資を受けたい起業家/ベンチャー企業と投資家のニーズをマッチングさせるサービス。ベンチャー企業や投資家が登録した情報は、匿名で公開される。「広く投資先や投資家を検索でき、限られた情報だけに頼ることなく、幅広いニーズのマッチングが行える」(3社)
起業家/ベンチャー企業がマッチングにより出資を受けた場合、ライブドアファイナンスに仲介料を支払う。金額は、最初の出資から1年間に実施された合計出資額の3%とする。

こちらについても、エイパックス・グロービス・パートナーズの小林雅さんが「弊社のようなベンチャーキャピタルファンドはまず使わない。」と断言しておられます。

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2004/12/21

証券代行業も規模か

21日付日経新聞「中央三井信託、東京証券代行を買収」から。

中央三井信託銀行は20日、証券代行専業の東京証券代行(東京・千代田)を買収すると発表した。日立製作所が保有していた全株式(発行済み株式の73%)を今年度中に取得、子会社化する。取得金額は公表していないが、市場推計で100億円を超える見込み。

東京証券代行が日立製作所の子会社だった初めて知りました。1962年に別会社化したんですから、40年を超える歴史を持っているんですね。

証券代行は株券の名義書き換えや株主名簿の管理などの事務を請け負う業務。2009年に予定される株券のペーパーレス化などをにらみ、信託銀行のシェア争いが激化している。中央三井信託と東京証券代行はシステム投資の共通化などを通じ競争力強化を目指す。
中央三井信託は証券代行業務では業界2位だが、東京証券代行を合算したシェア(管理株主数ベース)は約29%と3ポイント上昇し、UFJ信託銀行(約27%)を上回ってトップとなる。

UFJと三菱の統合も影響しているのでしょうね。3%程度のシェアでは先行き不安なので、日立としてもなんとかしたかったのでしょう。中央三井といえば、旧中央信託時代から、商事法務関係の情報提供に定評がある会社という認識です。商業銀行側の都合で住友信託との統合などといったことも噂されていますが、代行業務の規模を追うのであれば、今回の東京証券代行の買収を契機に、そこだけでも統合する手はあるのかもしれませんね。あくまで憶測の世界ですが。

証券代行専業といえば、日本証券代行もありますが、こちらは独立路線でいくのでしょうね。

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2004/12/17

IBMとLenovoの事業統合スキーム

「日本IBMのPC事業部もLenovoへ転籍」の段階で良く判らなかった、IBMとLenovoのPC事業の統合ですが、その後のフォローアップ記事(これとかこれとか)で少し見えてきました。

まず、訂正を1つ。香港市場に上場している Lenovo Group 社は、持ち株会社(holding companyですが、Lenovo Holdings とは別会社です。Lenovo Holdings 社は中国にある Lenovo Group 社の親会社です。)でした。その傘下の会社群でPC事業をしているようです。今回IBMのPC事業を買収する契約を締結するのは、その持ち株会社である Lenovo Group 社です(IBMはその会社の株を代金の1部として取得する)。

次に、Lenovo Group 社は新しい会社を設立(reincorporate)するようです。設立登記をする場所は、オランダかニューヨークか候補のようですが、まだ未定のようです。その新会社(新 Lenovo と呼ばれていますが、会社名は Lenovo という名前になるようです)が、IBMのPC事業と Lenovo Group 傘下各社のPC事業を統合する形態のようです。

IBMはグローバルな企業であり、PC事業はその1つの事業です。それを買収するというのは一筋縄ではいきません。各国のIBMのPC事業を吸収する為には、Lenovoの子会社が必要ですが、それをどのように行うかは、その国の商法や税法により異なるでしょう。もちろん、中国(香港)と米国の会社法と税法も絡んできます。国よってはPC事業は許認可の対象かもしれません。

それをスムーズに行う為に、新 Lenovo を設立した方が良かったのでしょう。設立登記する場所としてオランダをあげるあたりは、税制が絡んでいるのかもしれないと思わせるものがあります。そこらへんの経済合理性が解説できるだけの知識は、残念ながら私にはありません。しかし、このようなメガディールのスキームというのは、専門家の方々との議論の良いネタになりそうなので、興味を持っています。

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2004/12/16

モンテカルロシミュレーション的意志決定

磯崎哲也事務所さんの「日本の企業にも「モンテカルロシミュレーション的意志決定」が求められるようになるのか?」から。

「日本でもこうしたシミュレーションで意志決定しているケースはあるのでしょうが、まだまだ少数派ではないでしょうか。
もし、上述のように「Fortune 500社の85%の企業が購入」してるとしたら、もしかすると、米国における「経営判断の原則」なり「訴訟に耐えうる意志決定のエビデンス」というのは、こうしたモンテカルロシミュレーションのような、より網羅的でツッコミようのないものが要求されるようになってきているのかも知れませんね。」

国際大学のMBAコースにいた時に、オプションプライシングの授業でモンテカルロシミュレーションについて簡単に習ったことを思い出しました。マックのエクセル(当時まだwindowsは普及していませんでした)でグラフが作成されるを見て感心したのを覚えています。ただし、ヨーロピアンオプションであっても、(当時の私の感覚では)膨大な回数のシミュレーションをしないと、ブラックショールズモデルの数値に近づかなかったことも覚えています。コンピュータの進歩でその膨大な回数のシミュレーションも短い時間でできるようになったことで、実用化したのでしょう。

また、わざと悪いシナリオが発生する確率を高めてシミュレーションすることで、想定損失額を多めに見積もり、より慎重な意志決定を行うということも可能でしょう。とんでもない損失が出ることもある市場リスク管理ではすでに実用化されて使われていると思いますが。

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平成17年度税制改正

自民党の平成17年度税制改正大綱が昨日公表されました。世間では定率減税廃止と来年度に先送りになった増税テーマの多さが話題ですが、それ以外にも暗い話題はあります。

1.公開株特例の廃止

これは上場前3年以上保有している株式を上場後1年以内に市場で売却した場合に、譲渡所得を半分とみなすという特例です。新聞報道では、上場株式を市場売却した際の税率が10%になっていることに伴い一時適用が停止されている為、影響はないとされています。しかし、上場株式の譲渡益の税率は原則20%で、10%は時限措置(期限平成19年12月31日)になっている点を忘れてはいけません。

経済産業省は起業の促進に必死なのに、企業家へのインセンティブであるこの特例を易々と廃止させるというのはどういうことなのでしょうか。言い訳は平成19年12月31日の期限は延長させるから、ということでしょうか。しかし、金融所得一元化の流れの中で、その税率をそろえるのが課税当局の考え方でしょうから、それが簡単に通るとは思えません。

2.匿名組合出資

いわゆるレバレッジドリースで、償却費用を損金として認識して、個人の場合はほかの不動産所得と、法人の場合は他の益金と通算することを封じています。個人の場合は、平成18年から匿名組合出資に伴う損失はなかったものとなりますし、法人の場合は、平成17年4月以降の契約から、損金算入は出資金を限度とする(利回り保証があるような場合は、損金算入を認めない)こととなります。

課税当局はレバレッジドリースは課税逃れとみているようですが、課税逃れではなく、課税の繰り延べであるという、私には合理的に聞こえる主張は省みられなかったようです。航空機会社はレバレッジドリースの仕組みを利用して機体を調達していますので、航空機会社の経営にもインパクトを与える税制の変更といえます。

加えていえば、匿名組合出資に関するこのような課税当局の姿勢は、経済産業省が音頭をとっている日本版LLCや日本版LLPのパススルー税制の議論でも出てくるものと思われます。

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2004/12/15

コクドの責任のとり方

15日付日経新聞「コクド、西武株の売買契約白紙に・70社に代金返還へ」から。

「西武鉄道グループの中核企業コクド(東京・渋谷)は有価証券報告書の過少記載問題に絡み、西武株を売却した企業約70社との売買契約を白紙に戻す方針を固めた。近く株購入企業に、購入代金の返還と西武株の譲り受けを申し入れる。これで購入企業には損失が生じないことになるが、過少記載による株価下落の影響は個人投資家も被っており、特定株主に返金することに不満が出る可能性もある。」

コクドと相対で購入した企業だけを優遇する訳ですから、一般株主の中にも訴訟を提起する動きもあるんでしょうが...。

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安田社長の責任のとり方

nikkei.netドン・キホーテ社長、辞任を表明から。

「ドン・キホーテの安田隆夫社長は14日夜、さいたま市内の2店舗の連続放火事件で3人が死亡したことについて日本経済新聞に対し「責任は私にある。(引責)辞任することは決めている」と述べ、社長辞任を表明した。さらに、店内に高く商品を積み上げる「圧縮陳列」を見直す可能性も示した。創業社長の強い指導力と独特のビジネスモデルが成長の源泉だっただけに、同社は経営面で大きな節目を迎える。」

出店政策にしても、品揃えにしても、店舗レイアウトにしても、既存のルールに挑戦して、それに打ち勝つことを成長の源泉にしてきた会社がドン・キホーテだったと思います。

その勢いの前に、店舗の安全対策等がおろそかになった可能性はあろうかと思います。今回の火災をきっかけに、ドン・キホーテにどの程度のロスが生じるのかはわかりませんが、経営トップとして、結果として死者を出すような店舗構成および運営になっていたことの責任をとるというのは、自然な発想かと思います。自分が経営トップにいる限り、これまでのやり方を変えられないのであれば、辞任も選択肢であります。

通常は、会社を自分の分身(もしくは財布代わり)としてそこから身を引くことは考えない創業のオーナー経営者に、そこまでの発言をさせるだけの事態ではあったわけです。

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2004/12/14

日本IBMのPC事業部もLenovoへ転籍

PCWatch「日本IBMのPC事業部もLenovoへ転籍」にIBMとLenovoのPC事業統合のスキームが紹介されています。これでは Lenovo の情報開示とちょっと違う気がします。

「PC事業のLenovoへの売却は、2005年第2四半期をめどに行なわれる。IBMは、6億5千万ドルの現金と、6億ドル相当のLenovoの株式を受け取る。この株式は3年間のロックアップ期間が設けられており、期間中は保有し続ける義務がある。また、PC事業を精査した結果、確認された5億ドルの負債についてもLenovoが引き継ぐ。
Lenovoは、PC事業を行なう新会社(以下、新Lenovoと略称)を設立する。新LenovoはLenovoホールディングスの100%子会社であり、IBMの資本は入らない。
新Lenovoの本社はニューヨークに、拠点はLenovoがある北京と、IBMのPC事業の拠点であるノースカロライナ州ラーレイに置かれる。研究開発拠点は、中国、米国、日本に置かれる。
新Lenovoには、IBM PC事業の経営、製造、研究開発、営業、マーケティングなどがすべて移管される。向井理事によれば「一部の切り売りではなく、PCに関するすべてのファンクションを異動する」と解説された。

まず整理しなければいけないのが、Lenovoのグループ構成です。LenovoのWEBによると、Lenovo Group という香港市場に上場している会社がPC事業を行っています。Lenovo Group の筆頭の株主で、IBMのPC事業買収前に過半数をコントロールしていたのが、Lenovo Holdings です。非上場の中国本土の会社のようです。

Lenovoの情報開示では、IBMは Lenovo Group にPC事業を売却し、キャッシュ(と同社株式を受け取ることになっています。また、IBMと各種提携契約を締結するのも、Lenovo Group となっていたはずです。これはこれで資本業務提携ということですから、納得感があります。

Lenovo Holdings の100%子会社として新 Lenovo が設立されるという開示は今までなかったと思います。仮に、PCWatchの報道が正しいストラクチャーだとすると、IBMのPC事業を移管する会社に、IBMは出資しないで、その兄弟会社である Lenovo Group の株式を保有し、提携関係を有することになります。このようなストラクチャーを選択した理由は何なのでしょうか。

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2004/12/13

証券仲介業

12月1日から銀行に開放された証券仲介行制度の状況ですが、asahi.comに第1報が「三井住友銀、当初発売の債券完売 証券仲介業制度解禁で」とありました。

「銀行などの金融機関が株式や債券を販売できる証券仲介業制度が1日に解禁され、大手銀行は証券口座の開設数を徐々に積み上げている。各行の数字には開きがあるが、約400店のほぼすべてで債券を扱う三井住友銀行は、1日に売り出した外貨建て債券を締め切り前に完売した。」

各社各様ですから、どうこういうのはないのですが、投資信託といい、投資型年金といい、マス商品のスタートダッシュ時点での取り組みは、なぜかSMBCが実績をアピールしてきますね。バブル期に不動産融資を積み上げたのと同じ発想でないことを祈ります。

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持分プーリング法適用厳格に

11日付日経新聞「企業合併のプーリング法適用 会計基準委、ルール厳格化」から。

「企業会計基準委員会(斎藤静樹委員長)は、2006年4月から導入する企業結合会計基準について、持ち分プーリング法を一段と厳格適用するルールを盛り込む。合併後の企業の議決権比率がほぼ対等であっても、その企業が別の企業の子会社に該当する場合は、合併時にパーチェス法を適用させる。企業の裁量余地を減らし財務の透明性を確保する。」

具体例として、住友製薬と大日本製薬の合併があがっています。

「2005年10月に合併する住友製薬と大日本製薬の場合、合併新会社は住友製薬の親会社である住友化学の連結子会社となる予定。仮に新ルールを当てはめると、住友化学側が大日薬を買収したとみなせるので、プーリング法は使えない。存続会社は大日薬だが、会計上は住友製薬が大日薬を取得したとみなしてパーチェス法を適用することになる。」

ここでわざわざ上げられているということは、持分プーリング法を適用するような話が基準委員会でも議論になったのでしょうか?

許認可の関係なのか、上場維持目的か、理由はわかりませんが、上場会社である大日本製薬を登記上の存続会社とした場合でも、会計上は住友製薬を親会社とする決算書を作成することになる訳です。これは合併なので、実務上は問題が生じないかもしれません。

これが大日本製薬が株式交換で住友製薬を100%子会社にするというスキームだったらどうなるのでしょう。単体決算では大日本製薬の財務諸表が作成されますが、連結財務諸表は住友製薬を親会社としてパーチェス法で作成しなければなりません。大日本製薬を存続会社とする合併と、大日本製薬が株式交換で住友製薬を100%子会社化するので、結果が変わるとは思えませんから。その結果、財務実務上は、単体決算用と連結決算用のそれぞれの財務諸表作成の為の各種データをずっと取り揃えておくことになりそうです。

企業結合会計の強制適用は2006年4月以降に開始する決算期からですが、早期適用可能ですので、来年度以降のM&Aは、持分プーリング法パーチェス法(kohさんのご指摘により訂正)で処理されるべきでしょう。

ところで、これで気になるのは、西武鉄道グループです。確か、コクドを西武鉄道の子会社にするような話も出ていたと思いますが、その場合、持分プーリング法とパーチェス法のどちらを使うことになるでしょうか。なんとなく、パーチェス法のような気がするのですが...。

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2004/12/10

決算公告

10日付日経新聞「プリンスホテル、発足から30年以上決算公告義務怠る」から。

「西武鉄道グループの中核会社コクド(東京・渋谷)の100%出資子会社で、ホテル運営会社のプリンスホテル(東京・渋谷)が商法で定められている決算公告義務を30年以上にわたって怠っていたことが9日、明らかになった。」

有限会社は決算公告不要なのはさておいて、実態として、守って公告している株式会社が少ないのは、法務省の担当者の方もどこぞの対談で認めておられた事実であります。今更なんでそんな、と思いますが、きっと、西武鉄道グループ全体のコンプライアンス遵守の姿勢を示したということなのでしょう。

していない会社が多いとは申し上げましたが決算公告ですが、最近はしている株式会社も出ているようです。商法では、決算確定後に速やかに定款で規定した場所に決算公告しなければならない訳ですが、商法改正の流れの中で、平成15年からだったと思いますが、債権者保護手続にあたっての官報公告と知れたる債権者への通知には、直近期の決算公告した場所(官報なら日付、日刊紙なら新聞名と日付とページ、WEBサイトならurlアドレス)が記載されていなければなりません。

債権者保護は、減資や合併や会社分割等で必要になる訳ですが、手続に瑕疵があると、減資や分割の登記をして貰えませんから、それらの行為を行う予定のある株式会社が、ようやく決算公告をしています。私の知っている非上場の株式会社も企業組織再編の可能性があるので決算公告したと言っていました。

そもそも、債権者保護手続を明確化した商法改正には、株式会社の決算公告を促したいという、法務省の意向があるのでしょう。今回の会社法現代化の中でも、すべての株式会社に決算公告を義務付けている規定を変える予定はないようです。でも、そこまでして、取締役1名でも許される譲渡制限付株式会社にまで決算を公告させる意義って何なんでしょうね。

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2004/12/08

ジャスダック取引所上場審査基準

ジャスダックが取引所免許を取得したことをうけて、こちらに各種規則類が公表されています。取引所化と同時に、url変えるみたいですが。

取引所でない頃は、日本証券業協会の公正慣習規則に審査基準に該当するものが定められていました。取引所になったからといって変わらないんだろうと思っていましたが、証券会社の方から、第3条第1項第5号bは新たに追加された文言だと教えて頂きました。

「b 最近2事業年度に係る財務諸表等及びに直前事業年度に係る中間財務諸表等に「虚偽記載」を行っていないこと」(原文ママ)

同じく公表された上場審査基準の取り扱い2.(5)dでは、「虚偽記載」について以下のように規定しています。

「第5号bに規定する「虚偽記載」とは、有価証券届出書、発行登録書、または発行登録追補書類若しくはこれらの書類の添付書類若しくはこれらの書類に係る参照書類、有価証券報告書若しくは添付書類又は半期報告書について、内閣総理大臣等から訂正命令(原則として、法第10条(法第24条の2および第24条の5において準用する場合を含む。)又は第23条の10に係る訂正命令)を受けた場合又は内閣総理大臣等又は証券取引等監視委n員会により方第197条若しくは第207条に係る告発が行われた場合、又はこれらの訂正届出書、訂正発行登録書又は訂正報告書を提出した場合であって、その訂正した内容が訂正命令を受ける場合と同等とみなされるものである場合をいうものとする」

同じ文言は東証等の取引所の上場審査基準にはあるのだそうですが、公正慣習規則にはなかったということです。これに該当する会社といえば、やはり例の鉄道会社を考えない訳にはいきません。同社は早期のジャスダック取引所上場を目指しているそうですが、2004年3月期以前の有価証券報告書を訂正していますから、2005年3月期と2005年3月期について「虚偽記載」のない書類を作成しなければ、上場できないことになります。

取引所化にあわせての変更だと思いますが、結果として件の鉄道会社のジャスダック上場は、最短で2006年3月期決算を直前期としてのものになると格好であります。諸井委員会の答申と野村證券・中央青山監査法人の指導を受けて来年度1年かかえて体制を整えて、新体制でさ来年度を見事に運営してみせて再上場申請というのは、綺麗なシナリオに見えます。

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2004/12/06

日本版毒薬

6日付日経新聞スクープ欄「敵対的買収 水面下の防衛戦」から。

「100%子会社などに株式を発行できる新株予約権を与え、その権利の管理を信託銀行に委託する手法。信託契約には「持ち株比率2割超の株主が新たに登場したら買収者を除く株主に大量の株式を付与する」といった内容を盛り込む。こうした方式にすれば、新株付与が機動的にできるという。」

子会社を利用するのは、UFJホールディングの子会社であるUFJ銀行に種類株を発行させたケースと同じ発想ですね。問題はUFJのように経営統合で基本合意している相手がいない会社は誰に引き受けさせるかでした。日経新聞で紹介されている信託を使用するというのは1つの方法ですが、経営陣の自己保身ではないか、という懸念の解消にはならないのではないでしょうか。

「防衛策の推進論者は、「毒薬は企業の価値を守り、買収されるにしてもより高い値段で買ってもらえるから株主の利益になる」と主張している。」

公開買付という方法で攻めてこられると、時間的な問題もあり、取締役会が「株主の利益」を十分に検討することができないのではないか、という懸念は理解できます。毒薬条項により取締役会にまず最初のアプローチがあるように仕向ける効果が期待できる訳です。

しかし、経営者の判断に寛容な日本の市場風土(並びに司法判断)や発祥の地である米国でも廃止するケースが出ていることを考慮すると、日本でポイズンピルをやるのはどうかな、というのが正直な感想であります。

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顔を変えると

箭内昇氏のNikkei Net Biz Plus連載コラム「店舗は銀行の顔」(から。

「もっとも、この営業店改革にも残された課題は多い。機械化は画期的に進んだが、それでも各種変更届などはまだ多く、ペーパーレスは実現していない。大口の現金顧客に対するキャッシュレス化も未完成だ。商品の整理や事務手続きの見直しも不十分で、このままではいずれ現場は混乱するおそれがある。
行員の労働問題もある。行員は立ち時間が増えるので、交代制度や人間工学を活用したオフィス設計などの対策が必要だ。
だが、それ以上の課題はこの営業店改革に時間がかかりすぎたことだ。花王チームの提言直後から銀行全体が全力で取り組んでいれば、千住・竹ノ塚支店プロジェクトはもっと早く実現したはずだ。」

どんな企業においても、「このままではいずれ現場は混乱するおそれがある」と予想される改革を実施することは並大抵のことではできません。官僚主義がいきわたった組織の場合、混乱を避ける傾向があります。特に、事実はともなく「ミスが皆無に近い」ことを金科玉条にしてきた銀行の事務管理担当部署は、窓口の混乱を嫌うようです。「走りながら直していく」という慣習がないようです。そこに一理あることも確かです。窓口の混乱が、結果として顧客に迷惑をかけ、顧客満足度を損なってしまう可能性があるからです。

製造業でラインに手を加えた結果、一時的に効率が落ちても、納期に支障がなければ顧客に迷惑はかかりません。銀行で納期に近いものというと、振り込み時限でしょうか。営業日の14時30分頃に、受付や窓口の混乱で当日付の振込客の前に長蛇の列ができてしまい、銀行間接続システムの接続時限までに振込事務できない事態です。それが起きないようにする備えが必要でしょう。

箭内氏が指摘される社内の抵抗勢力がつけこむのも、このような事態です。改革の意義を常にトップが説かない限り、改革の機運や現場の意欲が挫けてしまいます。銀行による証券仲介業が12月1日に開始されていますが、窓口に多少の混乱があったようなことも聞いています。それでも対応できているのは、銀行全体が「やらなければならない」という義務感のようなものを持っているからだと思います。

新生銀行は銀行業界に一石を投じました。りそなもそうなる可能性があると思います。りそなグループの業務改革チームと経営陣(箭内氏の属する取締役会も含めてです)には、改革意識の醸成にも奔走していただきたいと思います。

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自己新株予約権取得の税務

「インボイスの新株予約権の税務」で、以下のように書きました。

「新株予約権を行使して株式になると、市場経由もしくは公開買付によらない限りはみなし配当所得を計算しなければいけないのですが、新株予約権証券はどんな格好でも良いということなんですね。法令が追いついていないのか、それとも何かロジックがあるのでしょうか。」

ロジックありますよね。ぼけてました。

新株予約権の前身の1つである新株引受権は、新株引受権付社債の分離表示ルールにおいては、負債に表示されますので、発行会社が取得したとしても、それは社債の買取と同じことになります。新株予約権も同様に考えれば、配当が入ってくる余地はないというのがロジックですね。

たとえ、ストックオプション会計を設定する過程で新株予約権が資本の部に表示される(米国ではそうだったと思います)ことになったとしても、新株予約権を保有しているだけでは、配当を受領する権利はありませんから、やはり税務上みなし配当とするのは too much に思われます。

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2004/12/03

これだから子会社上場は

3日付日経新聞「NEC、ソフト・サービスの上場2社を完全子会社化」から。

「NECは2日、ソフトウエアや情報システムを開発するソフト・サービス事業のグループ体制を見直すと発表した。東証一部上場のNECソフトとNECシステムテクノロジーの2社を2005年6月までに完全子会社化したうえで、同年10月以降にソフト開発とシステム開発を専門とする2社に統合・再編する。通信や家電などコンピューター以外の分野でソフト需要が高まっていることを受け、グループで分散した開発力を結集する。

NECはNECソフト株を37.13%、NECシステム株を66.67%保有する筆頭株主。12月6日から05年1月20日まで他の株主が持つ両社の株式の公開買い付け(TOB)を実施する。ソフト株は一株3200円、システム株は同4200円で買い取る。買い付け総額は約835億円。全発行済み株式を取得できなかった場合、残りをNEC株と05年6月1日に交換する。」

NECソフトは2000年7月、NECシステムは2003年9月の上場です。東証1部銘柄ですから、TOPIXに上場1ヶ月後には採用されることもあり、TOPIX連動のパッシブ運用ファンドがやむなく買っているケースもあろうかと思います。

日経新聞には金杉社長のインタビューも掲載されていて、「経営者の不明と言われても仕方ないが、2晩考えたうえで決断した。」とあります。グループ戦略の失敗ともいえるでしょう。

東証の上場審査基準には「親会社の1事業部門ではないこと」がありますが、結局は1事業部門同様の扱いをした訳です。今回のNECは、結果的には、親会社が苦しい時には、業績良好な子会社を上場させてリストラ資金の調達をし、一息ついたら完全子会社化しています。そういう事態を防止することは不可能なのかもしれません。

やはり完全分離しない子会社上場を認めない方が市場として健全だと思うんですが。

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インボイスの新株予約権の税務

Louts21「インボイスの新株予約権は権利付与時及び権利行使時も課税関係生じず」から。

「東京国税局は11用11日付けで「譲渡制限のない新株予約権を株主等へ一律に付与する場合の所得税法の取扱いについて」を公表した。これは株式会社インボイスからの事前照会に回答するもの。」

国税庁の回答はこちらにあります。

「税務上の取扱いだが、まず、新株予約権の権利付与時については、全株主に一律に付与するものであり、同社からの資産移転や既存株主間における経済的価値はない。したがって、所得税法第36条に規定する「収入」はないことから課税関係は生じないとしている。また、権利行使時においても、当該新株予約権は株主に対して一律に付与するものであり、所得税法施行令第84条各号に掲げる権利には該当しないことなどの理由から課税関係は生じないとしている。」

株主割当ですから、これはそうなるだろうなと思っていましたが、インボイスさん(およびインボイスさんに付いている専門家の方々)は国税庁にちゃんと照会までされていたんですね。ストックオプションではない新株予約権や種類株の実務は判らないことがありますので、ここまでやってくれていると、後に続こうとしている者(いるかどうかは存じ上げませんが)にとっては、ありがたいです。

「新株予約権の譲渡時については、租税特別措置法第37条の10第3項に規定する「株式等」に該当することから、譲渡した場合の所得金額は「株式等に係る譲渡所得等の金額」として取り扱うとした。」

これもその通りだと思います。新株予約権証券は証取法上の有価証券ですから、株式等以外には考えられないでしょう。

「また、株主の請求により新株予約権を会社が買い取る場合の金銭についても、同様の取扱いとしている。これは、新株予約権の買取時の公正な価額による対価であり、かつ所得税法第25条第1項各号に掲げる事由により交付する金銭にも該当しないため、配当所得として取り扱うことはない旨を明らかにしている。」

所得税法25条第1項各号は、ちなみに文末の通りです。第5号にばっちり、「自己の株式」と限定して書いてありますので、新株予約権証券の場合は適用できない、という見解が追認されています。新株予約権を行使して株式になると、市場経由もしくは公開買付によらない限りはみなし配当所得を計算しなければいけないのですが、新株予約権証券はどんな格好でも良いということなんですね。法令が追いついていないのか、それとも何かロジックがあるのでしょうか。

1.当該法人の合併(法人税法第2条第12号の8に規定する適格合併を除く。)
2.当該法人の法人税法第2条第12号の9に規定する分割型分割(同条第12号の12に規定する適格分割型分割を除く。)
3.当該法人の資本若しくは出資の減少(株式が消却されたものを除く。)又は当該法人の解散による残余財産の分配
4.当該法人の株式の消却(取得した株式について行うものを除く。)
5.当該法人の自己の株式の取得(証券取引法第2条第16項(定義)に規定する証券取引所の開設する市場における購入による取得その他の政令で定める取得を除く。)
6.当該法人からの社員の退社又は脱退による持分の払戻し

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2004/12/02

オーナー一族の会社を連結子会社に

2日付日経新聞「シダックス、シダックスC&Vを連結子会社に」から。

「シダックスは1日、病院や企業の売店などを受託運営するシダックスシーアンドブイ(東京、志太正次郎社長)の株式を7億9500万円で22%取得し、連結子会社にすると発表した。役員も派遣する。シーアンドブイはシダックスの創業者一族が株式を保有し、経営していたが、これまでシダックスの連結対象会社ではなかった。シーアンドブイの2004年3月期は売上高が123億円、経常損益は700万円の赤字。」

プレスリリースはこちら(pdfファイルです)です。それによると、過去に株式交換によりシダックスが100%子会社化する予定であったのですが、取りやめとなった経緯があるようです。

ここで注目なのは、シダックスC&Vはシダックスの株式を保有している(0.3%)こと、同社の主要株主(24.0%)にシダックスの主要株主(13.4%)でもあるエスアンドエイ株式会社が登場していることです。シダックスはジャスダック銘柄ですから、エスアンドエイはシダックスの親会社等には該当していないかもしれません。

ただし、東証上場時には、親会社等に該当すると判断される可能性があります。平成15年6月以降は、親会社等に該当する場合、財産保全会社であっても、財務内容や重要事実の開示が求められています。財産保全会社の特例は、会計監査が上場直前期1期のみで良いことであり、開示義務は免れません(東証『新規上場の手引き(第1部・第2部編)』P100参照)。

ジャスダックも取引所化する訳ですし、西武鉄道グループ・コクドや日本テレビ・読売新聞の件もあり、ルールが厳格化する可能性はあります。それらのルールへの対応とみるのは、シダックスの100%子会社とする訳ではないこともあり、うがちすぎだと思いますが、こういう動きがオーナー企業と呼ばれる上場会社に起きてくるのかもしれません。

ちなみにですが、なんでシダックスの100%子会社にしないのでしょうね?それが一番すっきりすると思うのですが。

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Bloglinesが多言語対応

bloglinesが多言語対応し、トップページやMyFeeds等の画面を日本語表示させることが可能になりました。早速日本語表示をやってみましたが、なかなか笑えます。きっと日本人が関与していないんでしょうね。ほとんどは微笑ましいのですが、MyFeeds(日本語だとMyフィード)とかのタブが縦書きで表示されるのは、個人的な趣味にあわないので、英語に戻してしまいました。

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2004/12/01

株式信託つづき

昨日の「自社株信託による寄付」について。もう少し。

受託者である Orient Trader International Limited でググると、プレスリリースが2つ(これこれです)ヒットしました。ここから想像するに、Orient Trader International 社は投資会社のようですね。とすると、Orient Trader International 社としては、一度に星野前社長保有の株式を取得するのではなく、信託勘定にあるペイントハウス株式は株価動向をみながら、自社投資勘定に移動させるのかもしれません。その後、株価回復を待って転売して、キャピタルゲインを狙う戦略ではと。

ただし、一度に星野前社長から株式を譲り受けるとなると、発行済株式の70.8%ですから、問題が生じます。

まず、現行証券取引法ではたとえ当事者間合意の上であっても、発行済株式の3分の1超を取得するには、株式公開買付を実施する必要があります。株式公開買付を実施するには、公告費用や証券会社への手数料を払わなければなりませんし、星野前社長以外の株主が応じる可能性もあります。

第2に、一度に1つの価格で株式を取得すると株価変動リスクが大きくなります。ペイントハウスの11月30日の終値は21600円と、それまでの株価を上回って引けています。今後も株価が上昇基調であれば良いのですが、そうとは限りません。それよりも、何回かに分割して移動させるドルコスト平均法もどきをやる方がリスク軽減効果があるとふんでもおかしくはないでしょう。

それらを避けながら、議決権は受託者として信託開始時点で保有することでペイントハウスの筆頭株主としての発言権を確保できるというOrient Traders International 社に都合の良いスキームにも見えます。

実際のところはわかりませんので、結果としてどうなるかに注目したいと思います。

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