2012/01/18

平成23年度税制改正の結末

平成24年度税制改正のセミナーが花盛りで、聴講させて頂いた際に、平成23年度税制改正についてのご説明があったので、そういえば、ということで、備忘メモです。

当初政府案は6月に2分割され、所謂期限切れ事項対応を中心にした第一次改正が6月末に成立しました。そこに含まれた主なものは、

  • 証券税制の2年延長(配当所得に係る小口株主の基準の引下げ(5%→3%))
    未だに「今回が本当に最後」といい続ける神経には感服しますが、いい加減に恒久化してはいかがかと思います。
  • 公益法人税制(特定寄附金の税額控除(所得税)の創設、認定NPO法人制度の見直し)
    認定NPO法人制度の見直しは面白いかもしれません。

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2011/12/14

平成24年度税制改正大綱

平成24年度税制改正大綱が10日未明に閣議決定されました。ようやく読み終わりましたので、簡単に感想を。

23年度税制改正法案が難儀したあげくに、「積み残し」項目まで作ってしまった経緯を踏まえて、自民・公明両党の理解の得られやすい項目に絞った内容です(政府税調の議事録をおいかけていくと、そういう旨の発言もあるようです)。

結果として、相続税・贈与税の見直し等を含めて平成25年度税制改正以降に先送りされました。財務省的には目玉である消費税率引上げ、民主党が俄かに持ち出した自動車減税(一部は24年度に盛り込まれました)も先送りです。

しかし、今回もしっかりとネタは仕込まれています。分野としては、国際課税ということになります。

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2011/08/31

夏季休暇が終わってしまいました

毎年なぜかしら寂しい気持ちになる訳ですが、今年の夏も終わろうとしています。幸運なことに、職場の体感温度が高すぎる以外は震災の影響も殆どなく過ごせていることに感謝するのみであります。この夏に行ったことをいくつか。

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2011/07/20

頭が痛くなりました

先日あるセミナーを聴講したのですが、その際に以下の質問がありました。聞いていて頭痛を覚えたので、早々に退席しました。

  1. 日本では銀行が個人保証を求められるから問題
    そんなことはありません。こちらのレポートにもある通り、米国においても中小企業向け融資には株主の個人保証が求められることがほとんどです。何せ中小企業庁(SBA)が銀行に保証を出す要件として、20%以上を保有している株主の個人保証を求めるのですから。株式公開を目指す企業がはじめからVCからの出資のみで資金調達した場合や、非公開でもジョンソンの様な大企業(日本ならサントリーでしょうか?)なら個人保証はなくても資金調達できるでしょうが、まぁ多くの中小企業はそうではないですよね。
    短期プライムレートベースでの借入を求めるのであれば、オーナー経営者が自らの財産を投げ打つ覚悟を示していただかなければ貸倒リスクと釣り合わないのです。多くの中小企業経営者が会社と個人の区別を余り厳密に付けていない現実も無視するべきではありません。また、保証人に資産がなければ保証は債権保全という観点では無意味で、精神論でしかありません。
    確かに、包括根保証はやりすぎだと思います。最近は原則として期間と金額を明確にした保証しか取れないはずですし、第三者担保についての規制という声も出ている様ですから、もはや的外れの議論と思います。
  2. 一度会社をつぶせば再起の目はない
    そんなことはありません。そんな後ろ向きな人はそもそも経営者に向いていないのではないでしょうか。例えば、この本の著者の方はは4代目として事業承継を受けた会社を潰していますが、それを逆手にとってコンサルタントとしてご活躍です。要は本人が思いつめないことです。反社会的勢力やその関係者でもない限り、命まではとられません。
  3. 投資ファンドも長期的視野で対応することが理解されていない
    ファミリービジネスの経営者の考える短期・中期・長期とは何年か、ある研究者の方に聞いたことがあります。答えは「短期は10年、中期は30年、長期は100年超」でした。ファンドの方の持っているホライズンは恐らく最長で10年、多くの場合5年ではないでしょうか?100年ファンドと称した投資ファンドもありましたが、今や跡形もありません。オーナーの短期とファンドの超長期が漸く合うことをお互いが理解して、互いの良い面が出るような関係にならないと、投資家も経営者も不幸です。投資ファンドは数年で別れる運命にあるパートナーであることを理解しなければなりませんし、ファンド側もそこを曖昧にしてはいけません。昨今はファンドの数も多いのできちんと説明しているのか不安です。ファンド側は経営計画の月次フォロー(管理会計でいうところの差異分析ですね)を徹底的に行うことの意義を経営者に理解させなければなりません。そこの緊張感から成長できる会社でなければ投資ファンドを迎え入れてはいけません。

こんな簡単なことは専門家なら知っているのかと思っていましたが、知られていない現実(講師も含めて皆うなずいていました)、憂鬱な思いで会場を後にしました。

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2011/06/24

事業承継学会研究会に出席しました

ある方からのご紹介で入会し、最初のオープンフォーラム以来ご無沙汰であった事業承継学会の月例研究会に出席して参りました。講師は東京経済大学の後藤俊夫先生で、テーマは「ファミリービジネス論と事業承継」。後藤先生は「三代、100年潰れない会社のルール」という著作もある、日本におけるファミリービジネス研究の先駆者のお一人でいらっしゃいます。先生は東日本大震災で東北地方のファミリービジネスが大きな被害を被ったことを懸念されており、シンポジウムも主催されています。

先生のご発言で印象に残ったことをいくつか。

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2011/01/07

あけましておめでとうございます

遅くなりましたが、新年明けましておめでとうございます。

最近にしたことをいくつか。

  • もう1月前ですが、Galaxy Tabを買いました。
    サイズは絶妙(もう少し軽ければと思いますが、私的には許容範囲内です)ですし、電池も数日は持ちますし、Google のサービスとの連携もばっちりで満足しているのですが、タッチパネルと私の指の相性が悪いのか、思ったのと違った場所をタッチしているように認識されることが多く、困惑しています。
  • 家族でスキーに行きました
    子供が段々上達している姿はやはり嬉しいです。
  • 家族で七福神めぐりをしました
    毎年恒例で、最初のお寺から2時間弱の行程ではありますが、子供もよく歩いてくれました。その後に、ショーロンポウを7個ぺろりと食べる等、健康な様で、一安心です。
  • 税制改正大綱を読みました。
    別に今年に限った話ではありませんし、増税そのものには反対しませんが、徴税側の論理が全面に出ている内容に、更に暗い気持ちになりました。行政や実務についてはド素人である民主党政権のマイナス面がここに集約されている感があります。

今年を良い年にできる様に、ささやかな努力を続けたいと考えています。

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2010/12/24

Season's Greetings

今年は思い切って本日をもちまして仕事納めとさせて頂くことに致しました。税制改正対応や来年の計画の詰めや年賀状等は全く終わっていませんが、来年に回すことに致しました(汗)。

年末・年始は家族で国内に旅行をして、心身共にリフレッシュをして来年に備えたいと思います。

皆様どうぞ良いお年をお迎え下さい。

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2010/12/21

平成23年度税制改正

平成23年度税制改正大綱が12月16日に閣議決定の上で発表されました。しかし、来年1月の通常国会で成立する見通しは立っておらず(与党が下手を打つと廃案も?)、私が知る限りで一番成立見込みの低い法案が1月の通常国会に上程されることになります。それでも一応ざっと目を通すと、「こんなんだったら何もしなければよいのに」という思いが...。

  1. 上場株式等の譲渡及び配当に係る優遇税率は2年延長も、配当に係る大口株主の定義が「5%以上」から「3%以上」に引き下げ。
    上場企業の創業者一族を狙い撃ちです。
  2. 相続税の基礎控除の大幅引き下げ。
    バブル期に引き上げたのをそれ以前に戻したいという徴税側の論理。都内に不動産を持つ層に不動産を売らせて、不動産会社を助けたいということ?
    その一方で相続時精算課税制度による贈与に係る控除(25百万円)は据え置いていますので、相続時の精算額は想定以上に増えることになります。現行控除は現行基礎控除を前提に設定されたので、引き下げなければ整合性が取れない筈なのに手をつけないのはこれいかに?
  3. 相続税・贈与税の最高税率を50%から55%に引上げ。
    なんで相続時に半分以上持っていかれなければならないのか。そこまで私的所有権を否定する国民的合意はない。
  4. 会社役員に係る給与所得控除を従業員のそれの半分に(段階をおって)引き下げ。
    役員報酬を正当なレベルにもっていかせないインセンティブを与える意味はどこにある?
  5. 在任期間4年以内の退職所得については、退職所得の特例の対象外。
    唯一正しい方向性にある。でも本当は所得税率が高すぎ。

私が個人的に望むのは、所得税・法人税・相続税・消費税を全部税率20%にする位の施策(低所得層や障害者・援助が必要な高齢者への配慮は当然必要)とそれを裏付けるビジョンなんですが...。

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2010/11/12

ブックレビュー『同族経営はなぜ3代でつぶれるのか』

@FamilyBiz_Takei こと武井一喜さん著「同族経営はなぜ3代でつぶれるのか?」読了。自らが4代目社長であったファミリービジネスを整理した経験をお持ちで、現在はファミリービジネスに係るコンサルタントをしておられる筆者が、ファミリービジネスが3代で潰れない為にファミリーメンバーが考えるべきことを網羅的に解説された書籍です。

日本においては、ファミリービジネスは同族企業と訳され、余り良いイメージはありませんでした。ダイエー、三洋電機、赤福等の世間の耳目を集める事件は、「同族経営故の」と評されます。法人税法においても、「特殊同族会社の留保金課税」や「同族会社の行為計算否認」という具合に、同族会社は税逃れをするものと捕らえられています。実務の世界でも、同族会社向けのコンサルといえば、まずは相続税対策が提供されてきた経緯があります。

しかし、一方で戦後の日本の税制は同族会社が事業を継続するには酷過ぎたのも事実であり、相続税率の引き下げ(それでも高すぎる最高税率50%)や基礎控除の拡充によって整備された基盤の上に、平成21年度税制改正において事業承継税制が(使えないという批判はありながらも)導入されています。民主党政権が主税局の尻馬に乗って相続税の増税に向かうのは時代錯誤であり、自らもビジネスオーナーファミリーご出身である岡田幹事長が体を張って阻止して頂きたいと、個人的に勝手に希望しています。

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2010/11/11

ブックレビュー:Wise Growth Strategies in Leading Family Business

Joachim Schwass, Wise Growth Strategies in Leading Family Businesses, palgrave macmillan 読了。会社の同僚の推薦です。著者はIMDで Family Business の教授で、IMDが1996年から2004年にかけて Distinguished Family Award で表彰した会社について、どの様に経営者の世代交代、つまり事業承継に成功裏に取り組んできたかを研究した成果物です。

海外の事例にもとづいていますから、日本に直接当てはまる保証はないとはいえ、理論的な説明には説得力があります。この本で著者が提唱しているのは、次のマトリックスです。

phase / interests Family Ownership Management Individual
Do Child-parent relationship Control dependent Professional assertion Personal leadership
Lead-to-do Adult-adult relationship Control struggle Leadership assertion Organizational leadership
Let do Parent-child relationship Control versus vision Governance assertion Institutional leadership

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2010/11/10

ブックレビュー『起業のファイナンス ベンチャーにとって一番大切なこと』

@isologue こと磯崎哲也先生の『起業のファイナンス ベンチャーにとって一番大切なこと 』を拝読致しました。いや、発売早々に買ったし、先生のご講演を拝聴もしていたんですが、諸事情により本を読み終わったのが今になってしまいました。内容は既にレビューがたくさん出ているので、詳しくは紹介しませんが、感想をいくつか。

  • エンジェルやVCからの資金調達が必要な事業を考えている起業家が、ファイナンスで落とし穴に落ちない為には必読であることは間違いないと思います。むしろ、起業家がそれを今まで知らなかったことについては、関係者の一端にいる人間としては反省しなければいけないと思います。最近は上場前のVBに関与する例は殆どないのですが、考えなければいけないなと。
  • この本、増刷を続けている様ですが、それだけ注目を集めているのは、著者の人徳もさることながら、日本においてもVB周辺の温度が沸点に近づいているのではないかと感じます。過去数度のベンチャーブームを経て、漸く定着するかもしれないと期待しております。
  • しかし、問題なのは日本の株式市場の低迷です。筆者もIPO市場の低迷は認識されていて、バイアウトが増えないといけないと考えておられるようです。ただし、株式市場が低迷している状況では、株式交換等でバイアウトした場合の起業家側のリターンが期待できませんし、キャッシュでやろうにも市場がネガティブにしか反応しないのではいかんともしがたいかと。Googleに見初められるようなビジネスモデルでもない限り、バイアウトもしんどくないかなと。著者の昨年来の主張である預金税(個人的には、預金者から見ると預金保険料との2重負担になってしまう気がしますが、そういうことはマイナーイシューとしておいておくぐらいの思い切りが必要な時期かも)の導入により、資本市場にニューマネーが入ると違うのかもしれません。

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2010/08/12

非上場親会社等が絡んだ再編事例

いつか落ち着いて考えようと思っている内に、3か月近く経過してしまいましたが、黒川木徳フィナンシャンルホールディングス(以下KKFG)から組織再編に係るリリースが5月20日付けで出ています。大まかにいうと、同社の70%超を保有する非上場のクレゾー社と合併した後に、同社が60%超を保有する黒川木徳証券(以下KKSEC)を完全子会社化する株式交換を実施するというものです。しかし、関係者はこれだけではなく、理解する為には、KKFGの沿革を紐解く必要があります。

同社は複数の商品先物取引取扱会社が経営統合して出来上がった大洸フューチャーズ社がKKSECを傘下に納めた独立系企業でしたが、平成19年にアエリアという携帯コンテンツ会社がファイナンス事業に参入するとして、同社の株式を取得し、先物取引取扱い事業から撤退する過程で社名もKKFGと改められています。平成20年8月段階では、KKFG株式の60%超を保有する親会社であります。

しかし、KKFGの業績は余りアエリアに貢献せず、平成20年8月にはアエリアはKKFG株を同社の100%子会社であるクレゾー社に譲渡することを含む、ファイナンス事業の再編計画を発表します。ちなみに、この株式譲渡に伴い、単体で1.3億円の株式譲渡損を計上したそうです。クレゾー社は株式購入資金をアエリアからの借入金により調達しています。金額的に減損するまでの損失額ではないということで、連結では変化なしとしています。

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2010/07/07

年金保険に関する最高裁判決

昨日の最高裁判決はWEBで判決文が公開されています。それを読まれた立教大学の浅妻先生(@asatsuma)がtwitterで「国の全面敗訴ではなく、5割程度は国が勝っている」と分析されています。早速読んでみました。

なお、本ブログは読者の方に法務・税務・会計・財務等に関するアドバイスを提供することを意図したものではありません。内容の無謬性について一切責任を負うものでもありません。法務・税務・会計・財務等に係る事項は、常に読者の方がご自身のアドバイザーとご相談の上で、ご自身の責任においてご判断下さい。

要約すると、相続税法24条により評価され、相続財産に含まれた金額までは所得税は非課税とするべき、という判示ですね。相続財産に含まれた金額については、所得税を課さないというのは、(現在の税理論上は色々とあるのでしょうが)合理的に聞こえます。新聞紙上で言われている通り、預金の経過利子等を相続財産に含めている実務も理論上は否定していますので、厳しい判決であることは間違いありません。

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2010/07/06

保険金年金の二重課税認定=処分取り消し命令―国の逆転敗訴確定・最高裁

取り急ぎ: 保険金年金の二重課税認定=処分取り消し命令―国の逆転敗訴確定・最高裁(時事通信) - Yahoo!ニュース. から。

夫の死亡で支払われた生命保険の特約年金に、所得税を課すのは二重課税に当たるとして、長崎市の無職女性(49)が国に課税取り消しを求めた訴訟の上告審判決で、最高裁第3小法廷(那須弘平裁判長)は6日、二重課税を禁じた所得税法に違反するとして、国が勝訴した二審判決を破棄し、課税処分の取り消しを命じた。国の敗訴が確定した。

今年の税制改正で手当てする項目として、主税局の皆様の頭にインプットされたことでしょう。民主党政権との蜜月が続けば、無理筋な法改正も全然スルーだし(昨年の小規模宅地特例の後退が良い例)。

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2010/07/05

有価証券報告書虚偽記載に係るオーナー経営者の責任

金融庁の課徴金処分を争った数少ない事例の1つである、ビックカメラの有価証券報告書虚偽記載に係る新井同社元代表取締役会長に関する結論が6月25日に出ています。色々な意味で注目されていた訳ですが、「元会長は有価証券届出書および目論見書虚偽記載であると認識していたとは認められないので課徴金処分は課さない」という結論になりました。

  • 虚偽記載か否か、目論見書作成における代表取締役会長の関与について踏み込んだ判断を示さなかったことは残念であります。会社が虚偽記載を認めているのにも拘わらず、虚偽ではないという結論はあり得ない訳ですが、折角の審査なのですから、実際にどの様に判断するべきだったのかについての判断も欲しかったと思います。
  • 元会長が虚偽記載を認識していたかについて、虚偽記載であることを前提として判断したと留保しつつも、ニュアンスとしては虚偽記載があったと判断している様には見えます。というのも、元財務担当役員氏は、独断で、東京計画の実態上の株主やビックカメラが北陸銀行に提出した「経営指導念書」の存在を、会計監査人や主幹事証券会社、証券市場に隠していたという事実を認定しており、これらは虚偽記載を少なくとも当該元役員は認識していたと読めるからです(あくまで、私の主観です)。
  • 元会長としては、「細かい会計処理については知らなかったので、担当役員、会計監査人、金融機関、ストラクチャー提案者の言うとおりにした」というのは本音だと思いますので、これで名誉回復できたということかと思います。当時は非上場ですから、別に元会長のプライベートカンパニーが資金提供してもしなくても、みずほからの借入金が減らせればよいという程度の判断でも決して不穏当ではない気がします。
  • その後、上場し、株式の売出しも行っているので、色々と問題になる訳ですが、これも元会長としては「上場審査時に主幹事証券もジャスダックも東証も何も言わなかったのに、それを今になって自分の責任問われても」ということでしょう。そういう意味では、今回の結論は代表取締役かつ筆頭株主が責任を問われる範囲がある程度はっきりできたので、意味は大きいかなと思います。
  • 一方で、ビックカメラの内部統制は、平成14年当時から一貫して効いていなかったという認定に読めます(財務担当役員が「独断で」虚偽記載工作を行い、それは金融庁調査が入るまで社内では「誰も」知らなかった)。上場前提にも拘わらず、この程度の内部統制の仕組みしか構築しなかった経営責任が、元会長にはあるとは言えるだろうと思います。
  • 効かない内部統制を見逃した会計監査人、主幹事および証券取引所が何か対応するのでしょうか(多分正式に発表するようなものないと思いますが、各法人としてこの件をどう考えているのかということです)。

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2010/07/02

財産評価基本通達変更

6月19日付「財産評価基本通達の一部改正について(法令解釈通達)」(課評2-18 課資2-8 課審6-11)により、財産評価基本通達が変更されています。趣旨は「所得税法等の一部を改正する法律の施行等に伴い、所要の整備を行うものである。」とされています。課税時期に市場価格がない上場株式の評価に使用する株価に関する細かい変更や、相続税法24条抜本見直しに係る変更に加えて、純資産価額方式による非上場株式の評価に際して使用する法人税等相当額が変更されています。

具体的には、これまで長く評価益の42%であった控除額が、評価益の45%に引き上げられています。どうやら、清算所得の課税が通常方式に変更になった影響と読めます。たかが3%、されど3%です。変更は平成22年10月1日以降の相続・贈与ですから、小会社や中会社に該当する非上場株式の贈与は10月1日以降にした方が良いかもしれませんね。

しかし、国税庁はここまで律儀に変更かけてくるんですね。というか、誰かが強行にねじ込んだんでしょうかねぇ。

(変更前)185((純資産価額))の「評価差額に対する法人税額等に相当する金額」は、次の⑴ の金額から⑵ の金額を控除した残額がある場合におけるその残額に42%( 清算所得に対する法人税、事業税、道府県民税及び市町村民税の税率の合計に相当する割
合) を乗じて計算した金額とする。

(変更後)185((純資産価額))の「評価差額に対する法人税額等に相当する金額」は、次の⑴ の金額から⑵ の金額を控除した残額がある場合におけるその残額に45%( 法人税、事業税、道府県民税及び市町村民税の税率の合計に相当する割合) を乗じて計算した金額とする。

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2010/06/22

asahi.com(朝日新聞社):所得・相続増税の必要性明記 政府税調が報告書 - 政治

asahi.com 「所得・相続増税の必要性明記 政府税調が報告書」から。

政府税制調査会(首相の諮問機関)は22日、税制改革のあり方をまとめた報告書を正式発表した。日本の財政が危機的な状況にあることを踏まえて、「相当程度の増収に結びつくよう税制の抜本的な改革を考える必要がある」として、菅直人首相が表明した消費増税に加え、所得税や相続税の増税方針も明記した。

前提となる、「超大きな政府」の必要性を感じている人はいないのではないだろうでしょうか。昨年の総選挙で民主党に期待したのは「既得権益の排除+その再分配」であって、「既得権時の大半を温存したバラマキ」ではなかった筈。税制調査会の議論であるから止むを得ない面はありますが、ただ税収増加策だけ並べられても違和感が残るだけではないでしょうか?

所得税の実効税率は、申告分離課税の税率を20%に揃えることで十分ではないでしょうか。単年度の高額所得者の所得の源泉は、株式や不動産の譲渡所得であって、給与等の総合課税所得ではないという統計が財務省にありませんでしたでしょうか。

相続税は所得税を支払って貯めた財産に対する課税であり、2重課税といえます。従って、高い税率は正当化されないと思います。現行税率を高すぎないといえるのは「妬み」の類の感情以外には考え難いです。税収効果だけを考えれば、基礎控除の縮小も検討されなければならない筈です。また、処分可能性を全く考慮しない資産評価方法にも問題があると思います。

個人の所得や資産保有に係る負担が増えると、法人保有が増えることになりますが、それは正常な姿だというコンセンサスはあるのでしょうか?

どう考えても賛成できない...orz

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2010/05/12

資産管理会社と事業会社の合併事例

ゴールデンウィーク明けに興味深い開示がありました(会社のプレスリリースはこちらから)。枕のメーカーであり、ジャスダック市場上場会社であるモリシタさんが同社オーナーである森本一族の資産管理会社と思われる森茂興産と合併する旨の開示です。

自ら認めておられます様に、4月24日付取締役会決議で決議しているのに、5月6日になって「失念しておりました」という開示ができる会社であります。同日付の取締役会では、定款変更を株主総会に諮る旨の決議をしていたようで、これもまた開示していない上に、決欲取り消すというどたばたぶりです(この件に関するリリースはこちら)。上場廃止予定(決算短信にその旨記載があります)であるとはいえ、今はまだ上場会社ですからしっかりして頂きたいものです。

さて、被合併会社である森茂興産です。リリースによりますと、モリシタの森下会長、森下社長ご一族で発行済株式の100%を保有し、かつ同社はモリシタの発行済株式の19%を保有しているとのことですから、森下家の資産管理会社であると考えられます。事業内容は不動産業ですが、これもオーナー一族の資産管理会社にはよくある話です。設立は昭和62年ですから、モリシタの店頭登録(平成4年)前ということになります。普通このような会社は保有上場株式について含み益があり、当該非上場株式を財産評価基本通達にある純資産価額方式で評価する際の所謂「42%控除」が使える筈ですが、リリースの「算定の根拠」には「純資産707,034千円より不動産減損280,346千円および有価証券減損81,312千円を差し引いて、改定純資産345,375千円となり」との記載がありますので、あらまあということであります。

以下について、念の為ご注意です。筆者は法務・税務・財務会計上の、あるいは投資に関するアドバイスを意図して本ブログを書いておらず、またその様な立場にはありません。内容については出来る限り正確にと思っていはいますが、それを保証するものではありません。読者の方が本ブログの記載にもとづいて行った行為の結果については、ご自身が自己の責任(あるいはご自身のアドバイザーのアドバイスに基づき)行うものであり、筆者は一切責任を負いません。また、以下は一定の仮定

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2010/03/31

期末

今の勤務先は会計年度とカレンダーが一致しているので実感はわきませんが、世の中の多くの会社は今日が期末ですね。予算達成の為にギリギリまで頑張っていらっしゃる方々に敬意を表します。でも、明日から新しい期が始まります。新しい気持ちで前向きに頑張りましょう!

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2010/02/08

つくろって済むことなのか

nikkei.net KDDI、JCOMへの出資比率3分の1以下に 金融庁指摘でから。

取得予定だった株式のうち、3分の1を超える部分(約4.5%分)の引受先について、取引金融機関などと協議を始めた。リバティが保有株をすべて手放し、KDDIが筆頭株主になる枠組みは維持する方針。4.5%分のJCOM株は単純計算で400億円を超えるため、引受先の確保が当面の焦点となる。

そこまで相対に拘る理由は何なんでしょうかね。売り手である米国LLC側の事情としか思えませんが。

ところで、今回は金融庁と調整済みなんだとは思いますが、疑問が1つ。共同保有者にならない株主を選ばなければなりませんよね?実質論が続くと、たとえ明文の合意がなくても、議決行使について暗黙の同意や同意せざるを得ない実態ががあった場合は、やっぱり法の精神には抵触するという論点もあり得る思うのですが、いかがでしょうか。

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